日本石鹸洗剤工業会(JSDA)
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2003年12月15日更新
01.*セミナー:もっと良く知ってほしい洗剤 *目次へ 
参照カテゴリ> #03.化学,洗濯 #02.安全 

*意外と知られていない洗剤の大切さと水環境への影響

A. 洗剤に関する技術内容と有用性

洗たく科学専門委員会
鈴木 哲

(2003/7/28開催)

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1)世界の洗濯文化と合成洗剤技術の比較
2)洗浄・洗剤技術の歴史と合成洗剤の市場動向
3)汚れの性質と洗剤(界面活性剤)の働き
4)家庭洗濯における有用性について
5)洗剤を正しく使うための石けん洗剤業界の取組み

 1)世界の洗濯文化と合成洗剤技術の比較
日米欧における洗濯習慣・洗濯条件の比較
日・米の洗濯機は、衣類を揉み洗い・擦り洗いするしくみですが、欧州では衣類を叩きつけて洗う原理を利用しています。水の硬度成分は石けんと結合し水に溶けないスカムという物質になり、衣類に付着してしまいます。高度の高い欧米では、耐硬水性に優れる合成洗剤が主に使われています。


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世界の粉末洗剤の組成と界面活性剤消費量の比較
洗濯習慣や洗濯条件の違いにより、組成の比率は地域差がありますが、主成分は日・米・欧とも、同じ成分が使われています。現在使われている成分は、環境安全性に対する意識の高い欧州でも広く受け入れられています。洗濯による環境への排出負荷を、衣類を1kg洗うのに必要な界面活性剤の量で比較すると、日本は環境への負荷が最も低くなっています。


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 2)洗浄・洗剤技術の歴史と合成洗剤の市場動向
洗剤成分の進化
以前は石けんが使用されていましたが、第一次世界大戦後には石けんの原料となる油脂が欠乏したことから、石けんに代わり新たに開発された石油を原料とする合成界面活性剤が使用されるようになりました。洗剤の性能向上剤として添加されるものにアルカリ剤やカルシウムイオンを捕まえる成分、汚れを水中に分散させて再び衣類に付着するのを防ぐ成分などがあります。その他に酵素や漂白剤などの添加剤もあります。


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日本における洗剤に関する環境・安全の歴史
当初、生分解性が悪い分岐型のアルキルベンゼンスルホン酸ソーダ(ABS)が使われていましたが、河川等で泡が消えないという社会問題を起こし、洗剤メーカーは生分解性の良い直鎖型アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ(LAS)に切り替え対応し、この問題は速やかに解決されました。湖沼や湾・内海など閉鎖水系でプランクトンが異常発生する赤潮という現象が発生し、原因としてリンの関与が指摘されていました。洗剤メーカーは、洗剤を無リン化する自主規制を行い、世界に先駆けて洗剤の完全無リン化を達成しました。洗剤の人に対する安全性についても疑問視する声がありましたが、当時の厚生省が様々な試験データの報告結果をレビューし、合成洗剤が安全であることを再確認しています(1983年)


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 3)汚れの性質と洗剤(界面活性剤)の働き
主な汚れ成分の由来と性質による分類
汚れの由来で分類すると、日常的に発生し、頻繁に洗濯の対象となる汚れ成分として、汗、皮脂、表皮角質といった身体由来の汚れと、空気中に浮遊している土埃やスス・排ガスといった外部由来の粉塵汚れがあります。食べこぼし汚れなどは、汚れの組成が千差万別で共通性が低いといった面で、特殊な汚れといえます。汚れを落とす技術的な視点から分類すると、水溶性の汚れ、水不溶性の汚れがあり、水に溶けない汚れでも、親水性か、疎水性かといった水に対するなじみやすさの違いが重要となります。


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肌着に付着する(複合化した)汚れの分類
毎日洗濯する代表的な衣類である肌着には、体から出る汚れが特に多く付着します。主成分は、皮脂という脂と、表皮角質という不溶性のたんぱく質であり、水だけでは落とせないので、洗剤の働きが必要となります。


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界面活性剤分子のかたち
界面活性剤の構造はマッチ棒の形で表されることが多く、マッチの軸にあたる部分が親油基(油になじむ部分)であり、マッチの先が親水基(水になじむ部分)で説明されます。
洗剤に使われる界面活性剤は全て化学合成により製造されているといってよく、石けんも化学合成で作られる界面活性剤です。
天然界面活性剤のレシチンは、卵の黄身の主成分で、マヨネーズに利用されています。


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界面活性剤の4つの働き
洗濯における界面活性剤の代表的な働きとして以下の4つがあります。
浸透作用;洗濯液が繊維内部のすみずみまで浸透していく働きがあります。
乳化作用;界面活性剤が油を取り囲み細かな油滴にして繊維から引き剥がして落とします。油滴が細かくなると光を乱反射して白濁して見えるようになり、これを乳化作用といいます。
分散作用;固体粒子汚れは粒子を一粒一粒ばらばらにして水中に分散させます。
再付着防止作用;汚れや繊維の表面に吸着して繊維と汚れの間の親和性を下げ、再付着するのを防ぎます。


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 4)家庭洗濯における有用性について
汚れの残留により懸念されること
衣服を保管中に、残留した皮脂汚れはしだいに空気酸化を受け黄ばんできます。皮脂やタンパク汚れは、酸化されたり微生物により分解され、悪臭成分が発生してきます。人の体には常在菌とよばれる細菌がおり、この細菌が衣服に移行し、汚れを栄養源として繁殖する際に、ニオイ成分の発生を伴います。皮脂が残留した衣服では汗を吸いにくくなり、通気性も悪くなります。


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着用洗濯の繰返しによる皮脂の残留と黄変
残留皮脂汚れが酸化し黄ばんだ事例。
左側;1日着用後に市販の合成洗剤で洗濯し、乾燥してから再着用するという試験を5回繰り返し、洗濯後のものを半年間保管したもの。特に黄ばみや悪臭の発生はありません。
右側;“超音波と電解水”の効果で、1日着用の肌着などは洗剤を使わなくとも洗えるという洗濯機のコースを使用し、1日着用後に洗濯乾燥してから再着用するという試験を5回繰り返し、洗濯後のものを半年間保管したもの。激しく黄変し、また強い悪臭を放つようになりました。


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衣類の吸水性低下に及ぼす残留皮脂の影響
実際に着用した各種衣料を用い、吸水性と皮脂汚れの量を測定しました。繊維素材の違いにより個々の吸水性に差はありますが、同一素材の中では、吸水性と皮脂量の間には相関性があり、皮脂汚れの量が多くなると吸水性が低下します。皮脂汚れの残留は着心地を低下させることになります。


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 5)洗剤を正しく使うための石けん洗剤業界の取組み
界面活性剤水溶液のミセル形成とその諸性質
洗剤の主成分である界面活性剤は、洗剤を水に溶かしたときの濃度によって溶けている状態が変わります。ごく薄い濃度では、界面活性剤分子は一つ一つがばらばらになっています、ある濃度以上では沢山の分子が規則性を持って集合した状態をとり、これをミセルといいます。
界面活性剤ミセルは、親油基を内側に向けているので、ミセルの中に油汚れを溶かし込むことができます。すなわち、ミセル濃度以上になるような量の洗剤を溶かしたときに洗剤は優れた洗浄力を発揮します。洗剤は、ミセル濃度の少し上になるよう、水の量に対し洗剤使用量を設定するのが一般的です。


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実際の洗濯での洗剤量の調節の必要性
界面活性剤分子は衣類にも吸着します。洗濯衣類量が多くなると、界面活性剤が衣類に多く吸着され、洗濯水中でミセルを形成するのに必要な界面活性剤量が不足し、汚れの再汚染につながります。
最近の大容量洗濯機では洗濯物量が多くなり、洗剤量不足になりがちです。表示の目安量よりやや増やすなどの調整が必要です。


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洗剤の計量使用の定着に向けた取組み
1987年に登場した
コンパクト洗剤の特徴の一つに計量用スプーンの添付があります。
コンパクト洗剤は、その使用量が従来の粉末洗剤の1/4の容量と少ないことから、使い過ぎないよう、適正な使用量を守ってもらうための工夫でした。その結果、洗剤を計量スプーンで計って使う習慣が定着し、適正使用量の推進に役立っています。
最近では、粉石けんにも計量スプーンが添付され、適正使用量も以前の量に比べ少なくなってきています。


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