当社は、出版物やパッケージの印刷事業で培った技術を核に、事業領域を広げてきました。エレクトロニクスやマーケティングの分野にも進出し、印刷にとどまらない製品やサービスを提供しています。パッケージの開発では、高齢化社会や環境課題に対する提案にも注力しています。
“高齢者にとっての注ぎやすさ”を考えて開発した詰め替え用パウチは、代表的な事例です。開発過程ではユーザーに試用してもらうことが重要なので、介護サービス付き高齢者向け住宅の運営企業と連携し、生活者の視点に立つことで潜在ニーズに気づく仕組みをつくっています。
注ぎやすさを向上させたパウチは、構造から見直して口部を開けやすくしました。「風呂場で手が濡れていても楽に開封できるようになった」などの評価を幅広い年代のユーザーからいただいています。このように、お年寄りを対象に使いやすさを考えることで、製品のUD(ユニバーサルデザイン)を実現し、大多数の人が直感的に受け入れられる価値を提供できると考えています。
また、容器の印刷スペースは限られます。状況によって動画、音声などの手法を組み合わせてよりわかりやすく伝達することが重要で、これは情報のUDといえます。
パッケージにおける環境対応は、これまでは薄肉化(リデュース)が主でした。これからは、使用材料に対しても配慮が必要になります。最近は、バイオマス樹脂のほかに、メカニカルリサイクルPETという高品質な再生樹脂を80%配合したフィルムを一部に使い始めました。PETボトルを回収する流通企業や、リサイクルPETを製造する企業との協力体制を整備し、再生資源の有効活用に取り組んでいます。
UDと環境は両立しないといわれることがありますが、モノと状況を含めて捉えれば両立可能です。当社の“包装ごと電子レンジ調理ができる食品用パッケージ”は、調理器具も火もいらず、誰もが安心して使えます。パッケージはゴミになりますが、洗浄や片付けは簡素化され、その分の環境負荷は軽減します。また、独り住まいの高齢者が簡便に栄養価の高い食事がとれることも付加価値となります。
パッケージを中心に、その使用前後の状況までみていくには、他分野との連携が必須です。もともと印刷事業の原点は、媒体を通じて、情報や文化の送り手側と受け手側のニーズをつなぐことにありますので、他社への働きかけは当社の得意分野です。パッケージにおけるUDや環境、製品をとりまくサービス全体の最適化を目指して、今後も挑戦を続けます。
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