“心に響く”モノづくりを続ける
株式会社コーセー
(本社:東京都中央区日本橋 研究所:東京都北区栄町ほか)
写真左:お話をうかがった尾之上 聡さん(株式会社コーセー 技術情報管理室 室長)。写真右:北区の研究所。2019年春頃に新たな建屋が完成し、国内の研究所が創業の地に集結される。
1946年の創業以来、お客さまにとって「良いもの」をつくろうと各時代で新しい技術や考え方を取り入れ、その結果、斬新な化粧品やロングセラーを生み出してきました。近年は持続可能なモノづくりやグローバル化の流れにもしっかり対応することを意識しています。「雪肌精」シリーズでは、売り上げの一部を養殖サンゴの植付けのために寄付する活動「SAVE the BLUE」を10年前から展開していますが、日本石鹸洗剤工業会は長い間、環境対応に取り組んでいるので、その知見も賛助会員として参考にしていきたいですね。
当社創業の地、東京都北区に置かれた研究所は今年55周年を迎えます。研究所には理詰め一辺倒の左脳人が多いのかな? というイメージがありますが、当社の研究員は「理系だけど右脳もしっかり使う」と言えるかもしれません。モノづくりの基本としているのは「英知」「感性」「信頼性」の3つで、中でも“心にどれだけ響くのか”を考える「感性」を大切にするのが特徴です。
新人研究員は先輩たちからこの「感性」の身に付け方や評価方法を教わりますが、これは学校ではなかなか学べないことです。シャンプーや洗顔料の泡のキメ細かさ、化粧品の肌へのつけ心地といった基本品質に加え、お客さまの心と「感性」に訴えかけるものをつくり、「ワクワクさせたい」という思いを受け継ぎます。
実際の化粧品開発では研究者の「感性」と、科学技術などの「英知」と、安心・安全といった「信頼性」の3つを同時にクリアする難しさが待っています。例えば牧場の搾りたての牛乳は濃厚で美味しく感じますが、そのままでは出荷できません。乳化粒子が約2.5μと大きく安定性が悪いからです。そのため機械で約0.5μの細かい粒子にして安定化していますが、淡白な味になってしまうと言われています。そこでお客さまに美味しいと感じていただくためにいろいろと工夫をしていると聞きました。化粧品も同じで、肌に良いだけではなく、安定性が良いものを開発することで「こんなに汚れが落ちた」「肌がこんなに良くなった」とワクワクさせたい。それが難しくも面白いところです。
1970年代にいち早く開発した「2Wayファンデーション」や、1992年に開発した美容液「モイスチュア リポソーム」など、先駆けとして社史に残る製品もあれば、その陰に数え切れないほどの失敗もあります。でも、思い切って「やってみたい」という人には「やってみれば?」と背中を押す社風です。
将来、化粧品をつくりたい人は、いろいろなことに興味を持って探求する気持ちを忘れないで欲しいですね。それが「感性」を磨く一番の近道かなと思います。
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