見えない光を取り除く顔料とは?
テイカ株式会社(本社:大阪市中央区、東京支店:中央区日本橋)
〔右〕出井 俊治さん(テイカ株式会社 東京支店 支店長)、〔左〕安原 宏さん(同社 東京支店 第二機能化学品課長)。日本橋高島屋の隣にある東京支店のラボ前で。
当社は化学工業薬品のメーカーで、界面活性剤や酸化チタンなどを製造しています。なかでも微粒子酸化チタンは紫外線散乱剤として重宝され、日焼け止めなどの化粧品にかかせない材料です。私達は、原料の鉱石の状態から、微粒子状に加工し表面をコーティングするところまで、一貫して手掛けている数少ないメーカーです。
紫外線が肌に悪影響を与えることは、1990年前後のオゾン層破壊のニュースで知られるようになりました。そのずっと前から当社が研究していたのが白い顔料用の酸化チタンです。ところでみなさん、ガードレールに腰掛けて、白い色が服に付いた経験はありませんか? あれは、本来は変化しない塗膜が、強い活性を持つ酸化チタンの影響で損なわれ、酸化チタンがむき出しになることで起こります。当社は1951年に酸化チタンの製造を開始しましたが、当初は酸化チタンの扱いが難しく、苦心しました。その後、耐久性と安定性に優れた「ルチル型酸化チタン」の製品化に成功し、建築用やカーボディ用の顔料として採用されるようになりました。
この自社技術が30年後、高い日焼け止め効果を持つ微粒子酸化チタンの開発につながりました。先輩方によると、岡山の研究所で、ルチル型酸化チタンを化学反応させて小さく加工していくにつれ、白色から透明になってくることに気づき、微細な粒子が紫外線を取り除くことを発見したようです。既存の「白くするための顔料」が、化学と技術の力で「見えない光を取り除く顔料」へと転換され、まったく新しい材料が生まれたわけです。ただ、1980年代の発売当初は、紫外線防止化粧品の重要性があまり認知されていなかったため、社外では「何に使うの?」という反応がほとんど。しかし現社長の名木田を筆頭に、開発も営業も技術系出身者が多いので諦めませんでした。粒形や表面処理を変え、お客様が用途をイメージしやすいようにいろいろな形態を試して提案を続けたところ、やがて微粒子酸化チタンの価値を認めていただけるようになりました。
現在は、東京支店にもラボを併設し、製剤の試作をメインに行なっています。紫外線防止効果を表すSPF値やPA値の測定から、使用感のテストまで、営業がヒアリングしたお客様の求めるイメージを的確に具体化していける体制を整えています。酸化チタンの分野はまだ可能性があり、独特な発色をする最新の塗料や、赤外線を散乱する遮熱塗料など、他の用途でも研究開発が活発です。当社は2019年で100周年を迎えますが、これからも物づくりへの情熱を持ち続け、技術にこだわる当社の文化を体現していきたいですね。