荒川に近く、アシがそよぐ旧中川のそばにあった工場敷地に、研究棟が新設されたのは2009年の春でした。その建設に当たっては、当社の三大経営ビジョンのひとつである「環境への対応」も重要なテーマとなりました。
環境への配慮を意識し、敷地内の緑化や、地熱利用のクール/ヒートチューブ、4人家族一日分くらいの発電が可能な太陽光発電、雨水の再利用(トイレ、散水)など、その考え方と姿勢をわかりやすく示すさまざまな設備設計上の工夫もされています。なかでも、研究棟に付属するコミュニケーションセンターの屋上に設けられたビオトープは、そのシンボル的存在ともいえます。
屋上緑化は、東京都の指針もあって、本社などでも実施していますが、ここでは周辺の自然の風が吹き抜ける、近隣の川の環境にもあわせその生態系を意識しました。(A)
クロメダカなどの小さな水棲生物を、雨水を利用した屋上庭園に流れる川と池に棲息させ、その周りには50種類におよぶ自然の植生を定着させました。(B)(C)

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なにしろ、屋上なので、全体に下には防水シートと保水層を敷き、その上に厚さ15センチに盛土をして芝生を植えました。ビオトープの周りは、さらに山をつくっていて、ちょっとした雑木林になり、設置から1年も経っていないながら、小さな自然が着実に育っています。
鳥がやってきてまた種を蒔いていくので、新たな芽が出てきたり、メダカが大増殖をしたり、トンボがたくさん飛んできたり、こんな小さな自然でも季節によって印象も違うことに、改めて驚かされています。
川の流れをテーマにし、荒川の上流域・中流域・下流域をそれぞれ意識して設置されたこの屋上ビオトープと庭園は、社員食堂から眺められ、食後の散策もでき、ひとときの安らぎも与えてくれます。
中庭の雨水循環による三角池の水面に映るのは、創業以来の歴史を物語る、明治時代に石けん原料の製造に使われた、日本で最初の高圧油脂分解塔(D)です。(研究開発本部企画管理部 伊藤弘雄さん・土岐育子さん 談)
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