この春に当工業会の会長に就任し、日油(株)でも6月から会長の役に就いています。日油は、油脂や洗剤原料のほか、「バイオから宇宙まで」幅広い分野の中間製品を生産しています。そしてサステナビリティを念頭に、新たな仕組みを作って環境対応や素材開発を進めていますので、このごろは私も机にマイボトルを置いて仕事をするようになりました。ただ、サステナビリティの基本は、以前からあったごく普通のことだと思っています。私は愛媛の海の近くで育ち、浜でよく釣りをしました。釣ったからにはすべて家に持ち帰って、ちゃんと食べたんですね。明治生まれの厳しい祖母から「物を大切に」と教えられていて、「無駄な殺生はしちゃいけない」と肝に銘じていました。そうした生活上の実感が、やはり基本かなと思います。
1980年に入社した私は、初めの12年間は工場にいて、経理や人事、総務、物流、工場管理など一通りの事務職を経験しました。工場ではいろいろなセクションが連動し、異なる職種や立場の人たちが共に汗水を流しています。 それぞれが自分の役割を果たしてはじめて、物の生産ができるのだと、そのときに実感しました。以来、「分を知り、分を尽くす」という言葉を大事にしています。
分というのは、その人の持っている能力とも解釈できますが、立場が変われば人の役割も変わりますから、私は「その時々で、何を求められているのか」を知って、仕事をすることが大事だと考えてきました。「私だから今この立場にあるんだ」と思って、精一杯、自分の仕事に取り組んでみると、結果もまったく違ってくると思うのです。
工場での経験は、私の企業人としての原点になりました。新たな仕事やさまざまな人と出会って、生き方を考え、「人を育てていきたい」と思うようになりました。大切なのは、会社の中でも人は育っていくということです。その機会を提供できるように、一生懸命やっている社員一人ひとりを、ちゃんと見つめることが必要ですね。できるだけ対面で話をして、お互いの思いを知る時間を持ちたいと心がけてきました。これは、会長になっても変わりません。私自身がそのように一人ひとりと接することで、結果的にその人がまた、人を育てていってくれるのだろうと考えています。
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