ライオンは120年以上の歴史を通して人々の清潔や衛生、健康を支えることに取り組んできました。洗剤などのトイレタリー分野では従来の生活習慣をより良くする、使う人の気持ちも楽しくできるような製品の提供を目指しています。
私は1984年に入社して35年が経ちますが、そのうち約20年は研究所の所属でした。最初は1979年発売の衣料用洗濯洗剤「酵素パワーの『トップ』」の主成分にも採用された界面活性剤をベースに何か新しいものを作ろうと、探索研究に取り組みました。合成した誘導体をまだマニュアル操作だった頃のNMRという装置で分析すると、興味深い現象がいろいろ起きるので1日中楽しんでいましたね。
次に無機材料の研究所に異動し、制汗剤用のシリカパウダーを開発しました。研究成果が製品となって世の中へ出たときは「なるほど、これがメーカーの楽しさか!」と実感しました。
その頃、先輩が面白いからと勧めてくれたのが、海外の研究者が書いた「シリカと私」というエッセイ本です。そこには、大発見など1つも訪れないけれど、小さな発見と失敗を繰り返す研究生活の喜びが綴られていて、私もそんなふうにありたいと思ったものです。どんな仕事も、長期間のプロジェクトには良いときと悪いときがあります。大きな目標を達成したいときこそ、アップダウンに一喜一憂しながらそのプロセスを楽しむことが重要だと思います。私が研究所から事業部へと移ったときも、洗濯用洗剤が粉末から液体へと潮目が変わるタイミングだったのですが、不安よりも「これはチャンスが広がるな、面白いぞ」という気持ちでしたね。
私は興味の対象がかなり色々なところへ向いているんです。1つに固定せずに、その時々の興味を大切にしています。趣味にもあまり共通点がなくて、読む本も観戦するスポーツもジャンルがさまざまです。昔から好きなのは絵を見ることですね。混んでいない場所で見たいので、欧米を訪れた際は行きも帰りもできるだけ美術館に立ち寄りたいと思っています。ドイツからの帰りにフェルメールの母国、オランダのマウリッツハイス美術館まで足を伸ばしたことが2度ありますが、絵画と一対一で向き合ったまま何十分でも見て居られるようなとても素敵な場所でした。
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