1937年創立の日油は、油脂やそこから作られる脂肪酸やグリセリンなどを元に、「食用油脂」、「洗剤原料」、「塗料」、「火薬」を始め、「有機過酸化物」などの事業を確立しました。やがて石油化学の分野も手掛けるようになり、たとえば、ポリエチレングリコールの純度を高めてさらに工夫を加え、医薬原料用の素材なども開発しています。また、かつて糸川英夫博士のペンシルロケットに火薬を提供したご縁もあって、現在の事業領域は「バイオから宇宙まで」に及びます。自社の技術へのこだわりと、求められる素材を生み出そうとする発想力も手伝って、今の姿があるのかもしれません。
私は大学では農芸化学を専攻しました。1990年にドイツ・デュッセルドルフに駐在した際は、「火薬以外は何でも売ってくる」のがミッションで、イギリスのウェールズの農家をまわって、家畜に栄養源となる脂肪酸カルシウムを与えて飼育する現場訪問も行ないました。日曜日には、息子が喜ぶので、ライン川河川敷の羊の放牧を見に行っていたことを思い出します。ベルリンの壁が崩壊した直後に家族を連れて赴任し、その後も世界的な混乱が続いたため、当時のことはとくに記憶に残っています。
趣味の旅なら、ここ数年はアジアが面白くなりました。カンボジアのアンコールワットは数回訪れたことがあり、家内と現地の乗り物に乗って隅々まで旅行しました。
普段は、時間を見つけて同郷の友人に会うのが楽しみです。私は山梨県韮崎市の生まれで、高校までずっと地元で過ごしました。山梨県人会の幹事も中学時代の友人ですし、声がかかると懐かしい気持ちが湧いてきて、地元に帰りたくなるんです。山梨県人会では、高校の先輩でノーベル生理学・医学賞を受賞された大村智先生にも度々お会いし、先生ご自身が建てられた温泉や美術館に行ったりしています。
大村先生の座右の銘は、「一期一会」です。…私の座右の銘ですか? いつも口にするのは 「一隅を照らす」です。「どんなところでも、努力する人は立派になれる。いま居る場所で信頼されて、周りも照らせる人になって欲しい」という意味を込め、春に新入社員を激励するときもこの言葉を贈っています。
|