ミヨシ油脂は大正10年から、一貫して「油」に携わってきた会社です。はじめは織物の生産に使われる繊維工業石鹸のメーカーとして、原料の天然油脂を精製・加工していました。その過程で得られたグリセリンや脂肪酸をさらに加工して、化粧品からタイヤまで幅広い用途に展開していきました。培った技術をもとに食用油脂の分野にも進出したほか、油化部門では重金属処理剤などの環境製品の開発にも力を入れています。
私が入社してまもない当時は、湖沼の富栄養化が社会問題となり、一時は研究所で四苦八苦しながら無リン洗剤を開発した経験があります。その後は長年、油化部門で営業を担当しました。当工業会とのおつきあいは古く、油脂製品部会の第1回海外調査団として若手だけで東南アジアに行き、現在では人の背丈ぐらいで収穫できるパームヤシも当時はとても背が高かったことなどを思い出します。
当社は25年ほど前に、工業用油脂部門の国内工場を再編し、私はその際、事業の増強をはかるために海外展開を提案しました。ちょうどマレーシア政府が脂肪酸事業に注力しはじめたタイミングで、現地の工業団地には水も電気も何もない時代でしたが、パーム油から脂肪酸を生産する工場を建設する決断をしたのです。その工場は今、順調に成長しています。自分なりの“次の一手”を見つけるために心がけているのは、「新聞の文字やTVニュースの言葉の中に隠れている真実を読み取ること」です。これは父が私によく言っていた言葉で、いつも肝に銘じています。
しかし、営業時代は朝が早く夜も外食ばかりで、平日は家で会話することがほとんどありませんでした。家族には申し訳なく、お詫びの気持ちも込めて、二日酔いでも土曜日の朝食は私が支度しています(笑)。味覚にはちょっと自信がありまして、外でプロの料理を食べたら味と材料をよく覚えておいて、家で再現してみます。また、家族にもプロの料理を食べさせてあげたいし、特に子供達には食に限らずなんでも一流のものを経験して欲しいと思っているので、週末は連れ立って出かけています。色々なことを知っているほうが人生は楽しいし、人に教えてあげることもできますから。
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