当社の創業者は、もともとは自転車部品、とくにパンクを修理する糊の製造で成功しましてね。その糊を入れるチューブ容器も、金属板から打ち抜いてつくる良い技術を持ってました。それで戦後、欧米には使いやすい練り歯磨があるけれど、日本はまだ粉の歯磨だということで、自社製の金属チューブに入った練り歯磨を発売しました。これが“健康産業のサンスター”の出発点です。それからも独立独歩の精神で、“歯周病菌とたたかう「G・U・M」ブランド”などを育てながら、事業を広げてきました。
私はこの会社で社長になるまで43年間、営業以外やっておりません。新入社員としての初出社はウグイス色のジャケットにチェックのパンツというアイビールックで、地元の神戸から大阪本社にハコスカで通ってました。生意気でね。ただ、今はこんな扇子持って関西弁で、落語家やったほうがええんちゃうか(笑)なんて感じですけれど、しゃべるのが苦にならなくなったのは、会社入ってからですよ。
入社してわりとすぐに、一人で高知県に赴任しましたら、言葉がわからないんです。7年居たらすっかり現地言葉で渡り合えるようになりましたけどね。人と話すって本当は難しいでしょ。営業は、口先だけじゃすぐばれるんです。やっぱり、相手様からみて安心していただける、ということを掴むまでは時間がかかります。自分で思うようにやりながら“場”をつくっていって、そこで相手とやりとりができれば幸せかなと思います。こればっかりはコツなんてないし、若い人にも教えようがないけれど、勉強方法はいろいろありますんでね。たとえば新入社員には、「東京ではタクシーに乗って運転手さんと話しなさい」と言うんです。黙ってる人が多いから、口を開かせるような会話をしなさいとね。けどこれ、間違っても大阪ではやっちゃだめ(笑)。
仕事でもなんでも、本当に好きだったらどんどんいく、それが一番ですよ。私はいっとき、女房と高尾山に登ってからトレッキングにはまって、北アルプスも結構行きました。忙しくて山歩きはもうやめて、今は近所で犬と散歩する程度ですけど。…それでね、うちの犬の名前は、ボストンテリアですけど「こてつ」。虎徹と書くんです。私の趣味といったらもう、あの阪神タイガースひとすじですから。
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