当社の技術は、地元の京都にかかわりの深い絹糸紡績用の油剤や石鹸にはじまり、1934年には国内初の合成洗剤「モノゲン」を発売するなど、石鹸・洗剤の分野に原点があります。一方私は、大学で無機の触媒を研究していたので、入社した頃は、セラミックスや金属のほうがむしろ馴染みがありました。
先輩に教わり、しばらく有機合成などをやりましたが、そのうち非鉄金属の企業と合弁会社をつくる話がもちあがりまして、これは! と立候補して出向しました。石鹸のような有機化学と、金属のような無機化学を融合させて何かできないかとの試みでしたから、複合材料の開発をやってみようと思ったのです。数人の仲間と、売上も何もゼロのところから、金属をペースト状にして電子材料にする研究をはじめました。こうした分社化戦略で新たな技術を育てることに成功し、現在は工業用の界面活性剤を中心に、電子デバイス材料、樹脂材料など複数の事業が柱となっています。
私は結局、合弁会社の立ち上げから20数年そちらにいました。新しいアイディアを試したり実行していくことが好きで、面白かったですね。
社長に就任してからは、現場、現物、現実の“3現主義”を唱えて、四日市や上越市、東近江市の工場や、京都と東京の両本社を頻繁に行き来しています。京都には大学時代から住んでいますが、出身は岡山。東京は都会すぎて建物にしても威圧感があるから、京都がほどよく落ち着きます。
会議はテレビ電話を使えば、京都に居ながらにしてできますが、出張はそうはいきません。物質瞬間移動装置があればどんなにいいかなと、本気で考えたりしますよ。そんな夢みたいなことでも、こうしたらできるかな、実現したら面白いな、儲かるしな…と、とことん考えてみるタイプです。
社内にはマラソン好きで、長距離走の得意な社員が多いけど、私はダメです。だけど、ほらスリムでしょ。月に数回のジムと家でストレッチを少しずつやって、数値をチェックしながら体重管理するのもきらいじゃありません。美食家ではないし、家ではもっぱらイワシとかメザシ…そこはほら、“メザシの土光さん”と同じ岡山ですから…。
|