『健やかな未来に向けて』は当工業会会員社の、“健康”にまつわる取り組みを紹介する連載です。
ー第3回ー
P&Gジャパン合同会社
P&Gグループは世界180カ国以上で製品を提供している、洗剤などの日用消費財メーカーです。経営戦略の一環として
『Equality
& Inclusion(平等な機会とインクルーシブな世界の実現)』を推進し、その学びを社会にも広げています。今回は、心身ともに健やかに自分らしく生きていける社会づくりを目指す、P&Gの取り組みを紹介します。
【お話をうかがった方】P&Gジャパン合同会社 広報渉外本部 星川 聡さん。
●約30年にわたる『E&I』インクルーシブの取り組みとは
P&Gグループは経営戦略の一環として、文化・制度・スキルを三本柱に、『Equality
& Inclusion (平等な機会とインクルーシブな世界の実現)』に取り組んでいます(以下、『E&I』と略記)。インクルージョンとは、一人ひとりの多様な違いを受容し活用することです。P&Gジャパンでは30年以上にわたりインクルーシブな職場環境づくりを進めてきました。最初に推進したテーマは1992年からの『女性活躍の推進』です。1998年からは『個々の多様性の尊重』、2008年以降は多様性を尊重し、受け入れる「インクルージョン」の推進に取り組んできました。
▼『E&I』推進のための三本柱「文化・制度・スキル」の考え方
長年の取り組みの成果として、女性管理職比率が2013年から毎年30%を超えています。現在は性別に関わらず全社員を対象に、ジェンダー平等の実現、性的マイノリティのLGBTQ+※1-1の社員の支援、障がいのあるPwD※2の社員の支援に力を入れています。
そして近年は、社内啓発や研修を通して学んだこと、培ってきた知見やノウハウを社外にも発信し、インクルーシブな日本社会の実現に貢献する、という目標に向かっています。
例として、P&Gが独自に開発し、社外に無償で提供している研修プログラムを2つご紹介しましょう。
●培われた学びを社外発信し、研修を750社以上に提供
一つ目は2016年から提供している「インクルージョン研修プログラム」です。もともとはP&Gの管理職向けのノウハウでしたが、現在までに750以上もの日本の企業や団体へ提供しています。『E&I』推進を “形だけで終わらせない” ためには、個人の “インクルージョン・スキル(個々の多様性を受け入れ活用する能力)” を向上させることが大切です。そこで研修は2部構成とし、『E&I』の重要性を文化・制度・スキルの文脈で理解していただいた後、実践的スキルが身につくワークショップを重点的に行なっています。受講者からは、「部下との面談で早速実践したところ、部下からも歩み寄ってもらえた」、といった嬉しい声も届きました。
●アライ(理解者・支援者)の輪を、日本社会に広げたい
二つ目は2021年に新たに提供を始めた「アライ育成研修」です。LGBTQ+に対する “アライ(ally:理解者・支援者)” の輪を日本社会に広げることを目的にしています。
P&Gでは、LGBTQ+当事者の社員とサポートするアライ社員のことを、独自にGABLE
※1-2と呼んでいます。 GABLEの使命は、LGBTQ+の社員とアライ、そして全ての社員が安心して自分らしく、最大限の能力を発揮することができるような、安全かつインクルーシブな職場環境を作っていくことです。たとえば同性パートナーシップに対する福利厚生制度の整備や、採用面接担当者への研修、内定者へのGABLE
活動の紹介など、社内啓発・採用活動・社外発信において、それぞれの取り組みを進めています。
●社外向け研修を機に、他社との共同プロジェクトも始動
2023年5月には、P&Gの「アライ育成研修」を受講されたことがきっかけで、全国展開する大手ドラッグストア・ウエルシアとの協働による『インクルーシブ・ショッピング』が本格始動しました。LGBTQ+のお客様が安心して買い物ができる環境づくりを目指し、多様な一人ひとりに寄り添った接客のヒントになる情報をまとめた「インクルーシブ・ショッピング ハンドブック」も共同で作成しました。
P&Gのホームページで一般公開していますので、ぜひ、他の業態や業界の方にもご覧いただき、一緒にインクルーシブな買い物環境の実現に向かっていければと思います。