『入浴と健康』医師が教える最高の入浴法
当工業会の技術委員会(2023年3月6日)に先立って実施した
講演内容の一部を編集し紹介します。
講師 早坂 信哉さん
東京都市大学 人間科学部学部長・教授、博士(医学)・温泉療法専門医。現役の医師でありお風呂の医学研究者として入浴、温泉、サウナなどの温浴について調査・研究を行なう。
●お風呂は健康寿命の延伸、介護予防に役立ちます
私は現役の医師で、大学で研究をしています。かつて在宅医療に携わっていた経験から、自宅でできる健康に役立つ入浴法について調べはじめ、約20年にわたり3万人以上の入浴を医学的に研究してきました。
これまでの私たちの研究結果から、お風呂は健康寿命を伸ばすことがわかっています[A]。お風呂は、「ただなんとなく気持ちがよい」だけではありません。「7大健康作用」[B]があり、健康によいことは医学的に証明されています。
●毎日40℃10分の全身浴で、血流改善により疲労が回復
そこで「できれば毎日、40℃10分の全身浴」[C]を、ぜひ実践していただきたいと考えています。40℃のお湯に肩まで浸かると効果的に温熱作用が得られ、約10分で血流がよくなります。この温熱作用による血流改善が重要で、老廃物の排出が促され、デトックス効果により疲労の回復が見込めます。
浸かる時間は長くても15分間、汗をかいたら上がり、体の水滴を素早くふき取り、温熱効果を逃さないようにしてください。
●ストレスにはぬるめのお湯、良い睡眠には90分前の入浴を
最近行なった調査で、コロナ禍で働き方や生活が変化した人は、精神的なストレスや疲れの増加を感じているという結果が出ています。1日中会議で座っていたのに非常に疲れたと感じるときがありますが、これは身体よりも脳の疲れで、自律神経のうち交感神経が優位になっている状態です。このような時は38〜40℃のぬるめのお湯に浸かり、交感神経の過剰興奮を抑え、副交感神経によるリラックス効果を高めるとよいでしょう。
また、質の良い睡眠をとるためには、寝る90分前に入浴を済ませます。40℃のお湯で10〜15分全身浴し、一度上がった体温が下がってくるタイミングでベッドに入ることが大切です。
入浴の健康作用はシャワー浴だけでは得られにくく、半身浴では効果が少なめです。お風呂は単に体を洗う場所ではなく、ストレス緩和やリフレッシュなどの心身のお悩み解消に役立ちます。健康増進ツールとして活用してみてはいかがでしょうか。
□入浴の健康作用や入浴方法の工夫の仕方など、早坂氏の書籍で紹介されています。
『おうち時間を快適に過ごす 入浴は究極の疲労回復術』(山と溪谷社)、『最高の入浴法〜お風呂研究20年、3万⼈を調査した医師が考案〜』(大和書房)