〜使用済みプラスチックからアンモニアを生産〜
昭和電工株式会社 川崎事業所
世界オンリーワンのケミカルリサイクル
昭和電工株式会社の竹田 徹さん(川崎事業所 プラスチックケミカルリサイクル推進室長)、篠原 慶信さん(基礎化学品事業部 化成品部 アンモニアグループ サブリーダー)にお話をうかがいました。
写真はプラスチックリサイクルプラント。
昭和電工では、その前身の会社も含め、88年前の1931年からアンモニアを生産してきました。現在はプラスチックリサイクルプラントも稼働させ、ケミカルリサイクルのガス化手法により、使用済みプラスチックからアンモニアを生産しています。アンモニアは、様々な用途で使用される身近な工業製品です。たとえば火力発電所等での発電時に重油や石炭等を燃焼させる際に発生する窒素酸化物を除去するための薬剤として、肥料や化学繊維の原料として、高温状態で空気中の酸素を無くしたい時に使うガスとして使用されています。
アンモニアは、水素と窒素から合成されます。以前は水素源にナフサ(精製前の石油)を用いていましたが、2003年からは自治体が回収した使用済みプラスチックを調達し、これをリサイクルプラントで分子レベルにまで熱分解して水素を取り出して利用しています。プラスチックを高温処理すると、水素と二酸化炭素に分解されます。この水素と空気中の窒素を結びつけるとアンモニアができあがります。プラスチックに含まれる金属分や硫黄分などの不純物も回収し、すべて有効活用しています。プラスチックからアンモニアを生産しているのは世界でもここだけ。2015年には製造プロセスとして初めてのエコマーク認定を受けました。
ただ、ベール
※のなかには金属などの異物が混ざっていることがあり、とくにライターや電池が入っていると、ベールを小さく破砕する作業中に出火の恐れがあり大変危険です。また、鉄アレイや金槌などの大きな金属異物が挟まって破砕機が壊れてしまったこともありました。このため、みなさんがプラスチックを分別排出するときは、このような異物を混入させないように注意していただけると助かります。
※使用済みプラスチックをまとめて圧縮・結束したもの。
生産されたアンモニアの用途は幅広く、医薬品や窒素系肥料、アクリル繊維やナイロン繊維、樹脂などの製品に用いられます。また、二酸化炭素は炭酸飲料に使われたり、ドライアイスとして食品の冷却に使われたりしています。今日もどこかで、使用済みプラスチックから生まれた製品が役立っていることでしょう。
自治体から引き取ったベール
リサイクル工程で大きな問題となる異物混入。火災事故や働いている人のケガ、機械故障やリサイクル効率の低下などの原因となります。
左:ケミカルリサイクルでできたアンモニアを運ぶためのボンベ。右:製品化された水素は燃料電池車”MIRAI”にも使われている。