◇繊維や製品の検査を行なう日本屈指のテスト機関 一般財団法人 カケンテストセンター |
カケンテストセンターは、官公庁などの指定検査機関として繊維製品の品質や機能性に関するテストを幅広く実施しており、企業が適正な表示をするためのアドバイスも行なっています。編集専門委員会(クリーンエイジ編集部)が同財団の技術部を訪れ、衣類の取扱い表示を決めるときはどのような試験と評価をしているのか、教えていただきました。
取材にご協力いただいた(一財)カケンテストセンター 技術部 部次長兼品質保証室室長の小野 永美子さん〔写真左〕と、同部顧問の鷲見(すみ) 繁樹さん〔写真右〕
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◇ 取扱い表示に関して依頼の多い試験とは |
取扱い表示に関連する試験は、テキスタイルやアパレルのメーカー、販売店などからさまざまな依頼があります。「取扱い表示のマークはこれでよいか確認したい」という場合もあれば、「色落ちの度合いをテストして、自社の基準に適合しているかどうかみてほしい」という場合もあります。基本的には個別の依頼内容に従って、提供された衣類や生地で試験を行ない、報告するという流れです。
とくに依頼が多いのは、どんな繊維を何%使っているかという組成の確認、洗濯でどのくらい伸び縮みや色落ちがあるかという寸法変化率や染色堅ろう度の試験です。それに加えて、製品を丸洗いしたりクリーニングしたりして、型くずれや風合いの変化などを評価するのが一般的です。
↑左:さまざまな耐洗濯性試験をしている。右:カケンテストセンターによる生地品質基準の一部。
↑寸法変化率の確認。
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◇ 表示を決める段階では製品全体での評価が大切 |
家庭用品品質表示法に基づく取扱い表示のマークを決めるための試験方法は、染色堅ろう度試験や物性試験のJIS規格にそって行ないますが、カケンテストセンターではさらに製品の素材、用途、形態などをふまえて依頼者と協議し試験を行ないます。その結果は、項目ごとに設けた細かな品質基準にそって評価し、判定しています。
衣料品というのは、製品になるまでにたくさんの段階を通ります。糸をつくる、染める、生地を織る、加工する、ボタンなどの付属品をつけるなどの工程がそれぞれあって、各段階で業者が品質試験をしています。衣類に取扱い表示がつけられるのは一番最後ですので、この段階では、製品全体で総合的に評価することが大切です。
たとえば、色とりどりの刺繍をほどこしたシャツの場合、刺繍糸自体に色落ちなどの問題がなかったとしても、洗濯したら刺繍部分が縮んで、生地がつれてしまうことがあります。また、色の違う生地を縫い合わせたようなシャツの場合、生地単体の染色堅ろう度は基準内だったとしても、洗濯して干している間に縫い合わせ部分から色移りすることがあります。このように、素材のテスト結果だけでなく、経験を駆使して製品の特徴を考慮しながら評価することが求められます。
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◇ 試験の結果から表示内容を決定するのは |
試験を依頼するアパレルメーカーや販売店も、自社で品質基準を定めており、カケンテストセンターの判定結果をふまえて、最終的にその製品の取扱い表示を決定します。衣料品の場合は、必ず「誰が、どんな場面で着るか」を設定して作られるので、実用性とファッション性のどちらを優先するか、天秤にかけて判断する場面も出てきます。
ただし、取扱い表示の目的を考えれば、「消費者の視点で、支障が出ないような表示をすること」が最も大切です。たとえば、カケンテストセンターでは水洗いできる素材の衣類をテストした結果、何も問題がないのに、水洗い不可の表示をつけようとする依頼者がいれば、「それは過保護表示ですよ」と伝えて、表示の適正化を働きかけています。消費者の方はぜひ、衣類の表示を見て服選びやお洗濯に役立てていただきたいと思います。
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