◇上手に使おう 柔軟剤
使いすぎていませんか? 柔軟剤の使用量 |
柔らかなタオルや、なめらかな肌触りの衣類も、使用するうちにごわついたり、風合いが失われてきたりするものです。これを防ぐには、洗濯の仕上げに柔軟剤を加えると効果的で、繊維の質感をよい状態に保つことができます。
また、お気に入りの香りが、タオルや衣類からほのかに香ることを期待して、柔軟剤を使っている人も多いのではないでしょうか。近ごろは特に、従来よりも香りが長続きする点に主眼をおいて、開発された製品が目立っています。
日本石鹸洗剤工業会が2010年に実施した「洗濯実態調査」では、首都圏に住む20代〜50代の主婦を対象として、柔軟剤に関してもアンケート調査を行ないました。そのなかで、柔軟剤の使用者に対し購入理由を尋ねたところ、上位には、香りに関連する回答が多く並びました。
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◇ 柔軟剤を多めの量で使う人が増えている |
柔軟剤の香りに関心が高いことは、使用量にも影響を与えているようです。「使用量の目安どおりに使っているか」という質問では、「目安どおり」との答えが約38%(2005年調査時と比べて2.4%増)みられたものの、次いで「目安より多めに入れる」との答えが29%もあり、2005年の調査時に比べて7.7%も増加していました。
今回の調査では、実際に、各家庭の洗濯で使用される柔軟剤の量を計測し記録した、日記式調査も実施しています。その結果、調査対象の約23%が、標準の2倍以上の量で使用していることがわかりました。少し多めどころか、過剰と思われる量で使う人が、少なくないようです。
また、使用量は人によってまちまちで、ばらつきが大きいこともわかりました。これは、柔軟剤の使用量を決める際に、「香り」や「柔らかさ」などの感覚的な要素が指標となってしまい、個人の好みに左右されやすいためと考えられます。さらに、計量がおろそかになったり、正確に行なわれていない可能性も、一因にあげられます。
柔軟剤は、使用量を多くすればするほど、衣類が柔らかくなるわけではありません。確かに、目安量よりも少し多く使うと、香りも強めに感じられるかもしれませんが、入れ過ぎは禁物です。柔軟剤も、多く入れ過ぎると問題が出てきます。
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◇ 柔軟剤の量が多すぎると、こんな問題が… |
柔軟剤を入れ過ぎてしまうと、タオルやTシャツなどの吸水性が低下することがあります。これは、柔軟剤の主成分である陽イオン界面活性剤が、繊維に過剰に吸着したときに起こります。
陽イオン界面活性剤は、水に溶けて解離した際に、親水基の部分がプラスの電気を帯びます。一方、繊維の表面は水にぬれるとマイナスの電気を帯びるので、親水基が引き寄せられて吸着します。すると、親油基が外側を向いて繊維の表面を覆うような状態となり、それが潤滑油のような働きをして、なめらかで柔らかな風合いが感じられるようになります。また、繊維と繊維の摩擦抵抗を弱め、毛玉ができにくくするなどの働きもあります。
しかし、柔軟剤の量が多すぎると、繊維を覆う親油基が必要以上に多くなり、繊維の表面が水をはじく度合いが強まって、吸水性の低下を招く可能性があります。
柔軟剤の効果を問題なく発揮させるには、適量で使うことが一番の近道なのです。
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◇ 上手に使うためには、洗剤との関係も大切 |
ところで、洗剤と柔軟剤とでは、洗濯機の投入口が分かれていますが、実は、洗剤と柔軟剤は同時に使うことはできません。多くの洗剤には、陰イオン界面活性剤が用いられています。柔軟剤とは反対に、界面活性の働きをする部分がマイナスイオンとなるため、洗剤と柔軟剤を混ぜたり、同時に投入すると、お互いの効果を打ち消し合うことになるので、注意が必要です。
また、洗剤の使用量が少ないなどが原因で、汚れが洗濯液中に残ってしまったと仮定します。そこにもし、柔軟剤を多く入れ過ぎると、繊維に吸着した柔軟剤の親油基の部分が、洗濯液中に残った汚れを再び引き寄せてしまい、洗濯物が黒ずむことも考えられます。
こうした問題が起こらないよう、洗剤も柔軟剤も、それぞれの製品表示にそって適量を使いましょう。 |
※「2010年 洗濯実態調査」の詳しい内容は、学会誌「繊維製品消費科学」の2011年12月号に掲載されています。 繊消誌Vol.52(12),763〜770(2011)
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