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2011年3月15日更新
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化粧石けん市場に変化のきざし

もらうものから買うものへ、店頭も“選べる楽しさ”広げる



 化粧石けんの国内流通量は、1980年代をピークに、減少の一途をたどってきました。しかし、近年は減少ペースも一時期に比べてゆるやかになり、市場の縮小傾向もそろそろ底を打ったとみられます。2010年は、国内メーカー出荷量が前年比106%と上向きになり、これを契機として、新たな“石けんブーム”到来への期待も高まりはじめています。
 そこで、会員会社のなかでも、特に石けん市場で長年奮闘されてきた牛乳石鹸共進社株式会社、株式会社ペリカン石鹸、そして、業界全般に詳しい株式会社石鹸新報社からそれぞれお集まりいただき、石けん市場の近況についてお話を伺いました。

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写真右から 牛乳石鹸共進社(株) 東京支社 支社長 兼 営業統括部 東日本担当部長 松元 英明さん、(株)ペリカン石鹸 専務取締役 営業本部長 渋井 伸和さん、(株)石鹸新報社 東京支社 次長 早川 浩史さん、編集記者 杉田 信隆さん

◆ 好調の裏には家庭内在庫の減少

 化粧石けんで高いシェアを持つ牛乳石鹸では、近年、1個あたり100円以下の低価格品がよく売れているといいます。好調の理由として、「当用買いの増加」が挙げられるとのことでした。さかのぼってみれば、1990年代以降、景気の下降や価値観の変化とともに儀礼的なギフトの習慣が薄れ、石けんをギフトに選ぶことも、もらう機会も減ったため、だんだんと、家庭で使う石けんをそのつど購入する必要が出てきたと考えられるのです。
 一方、以前はギフト市場向けの製品を主力としていたものの、近年は若い世代向けのバラエティ豊かな製品作りに特化しているペリカン石鹸では、「石けんが見直され、選ばれる機会が増えている」との実感があるといいます。量販店やバラエティストアなどの小売店では、石けん売場が広がりつつあり、より多くの品揃えを要望するようになってきたとのこと。そこに、少量多品種で展開していた、単価300円程度の石けんが、うまく応えているかたちです。さらに「自分で選ぶから商品の価値も認められやすく、多少単価が高くても購買につながる」と、店頭の幅広い品揃えや、楽しげな演出が、購買客の気持ちを捉えているようです。

◆ 洗顔石けん、中価格帯の石けんも伸びている

 牛乳石鹸では、洗顔石けんの動きも良いとのことで、お茶成分を配合した単価約700円の商品は、2年前から売上が急増しているそうです。しかも、単価が500円から1,000円程度の中価格帯の石けんは、市場全体でみても、今一番伸びている価格帯だといいます。洗顔石けんには、美容成分を配合するなどの付加価値を付けたものが多く、もともと女性の人気が高い商品です。しかし、これまでもあった「お茶石けん」が、ここ数年で好調に転じたのはなぜでしょう。
 そこには、通販会社が販売している、60gで2,000円弱という高価格帯のお茶石けんの存在があるようです。TVコマーシャルも功を奏し、全国的に人気となったこの通販のお茶石けんが、「“石けん”という商品そのものに、消費者の目を向かせるきっかけとなった」と、石鹸新報社ではみています。

◆ インターネットで口コミ

 「石けんが見直されてきた」との各社に共通する実感の裏付けはなにか、それを解くキーワードのひとつがインターネットです。芸能人のブログや情報サイトなど、ネット上の話題から、お茶石けんに続く新たなブームに火がつく可能性もある、という見方もあるようです。
 牛乳石鹸、ペリカン石鹸も、インターネットの少なからぬ影響を、日々感じているといいます。
 牛乳石鹸では、ここ1、2年のあいだに、口コミサイトのランキング上位に自社の石けんが頻出するようになったとのこと。多くの消費者が、「お茶石けん」や「無添加」などのキーワードで検索を行ない、口コミ情報を見て店頭購入のきっかけとしているのでは、と捉えています。
 ペリカン石鹸は、「ネット全盛の時代となり、石けん販売に新規参入がしやすくなった」という点を挙げています。中小企業が、企画した独自商品や輸入石けんを販売することで、石けんの種類も、消費者側の選択の幅も格段に広がってきています。そうしたなか、石けんの新たな楽しみ方を見つけ、自分の個性の表現とする消費者が増えてきているとも考えられます。これについては石鹸新報社でも、トイレタリー製品は、比較的少ない金額で自分だけの楽しみがもてる商品だと指摘しています。以前からあった石けんが、新時代の感覚に、再び合ってきたということなのでしょうか。

◆ 新しい化粧石けんの魅力とは

 石けんは、比較的さっぱりとした洗い上がりとなるので、特に好んで使用する人も多いとみられます。また若い消費者に限っては、幼少期からチューブ入りの洗顔料や、ボトル入りの液体のボディシャンプーに親しんできたため、石けんを目新しいものとして、新鮮に感じる傾向もあると考えられます。
 そのような動きを感じ取った小売店が、売場を拡充することで、石けんという旧知の商品の魅力を改めてアピールしているようです。また、輸入石けんの販売や、石けんの量り売りを行なう、ファッショナブルな化粧品専門店が増えてきたことが、新しい石けんのイメージの形成に一役買っているとの見方もあります。
 若い女性を中心とした「香りを楽しむ」ブームも続いています。石けんは、バスルームを自分好みの香りで満たし、楽しむためのアイテムと捉えることもできます。ペリカン石鹸では、こうした細かなニーズを汲み取り、チョコやフルーツなど本物そっくりの香りがする「見て楽しい、香って楽しい」雑貨としての魅力も提供できる商品を多数企画。10代から30代までの比較的若い女性購買層を獲得しているようです。
 「“マイソープ”志向は、若い世代に定着してきています。今後さらに、香りの異なる石けんを季節ごとに、場合によっては日ごとに使い分けるニーズも出てくるのでは」とは、「石鹸ブーム到来」と大見出しを掲げた石鹸新報社の分析。商品を提供する側も、新たな訴求点はまだ考えられるといいます。長引く不況下では、コストパフォーマンスが良い低価格品に根強い人気があること、店頭で泡立ち実演をして販売する方法など、売り方にも工夫をする余地がある、との見方にはさらなる可能性が込められています。

◆ 近年の統計データでも

 化粧石けんの2010年の国内流通量(生産量+輸入量−輸出量)は、約56,000トン台と推計されます。ここ2年続けての増加は、近年にないきざしです。また、メーカー出荷金額は298億円で、2004年の305億円に迫る数字となりました。

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 とはいえ、数値の上ではまだ大幅な増進とはいえません。しかし、皮肉にも「石けんといえばギフトでもらうもの」という時代が終わったことで、消費者は逆に、石けんに新たな魅力を見い出しつつあるようです。この機会に、消費者の潜在的ニーズにも対応し、石けんの魅力をより高めることができれば、そのときこそ“石けん新時代”といえるのかもしれません。


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