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2010年3月15日更新
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消費者庁と家庭用品品質表示法のこれから







品表法の課題は社会全体の常識の底上げにもつながっていく…

内閣府 消費者庁 消費者安全課 家庭用品品質表示法担当
みずくら たかお


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●新しい消費者庁になって

 昨2009年に発足した消費者庁は、消費者の安全と安心にかかわる問題について幅広く所管し、一般消費者の視点から消費者行政を所管する官庁です。当初から組織の肥大化を避けるという方針もありましたので、執行部門は消費者安全課のほか、取引・物価対策課、食品表示課及び表示対策課です。
 200名程の職員は、内閣府国民生活局、公正取引委員会、経済産業省、農林水産省、厚生労働省、国土交通省などからの出向組と新たに民間から採用された者たちで、因みに、私も経済産業省から来ています。
 また、移ってきたのは職員だけでなく、所管する関連法規もそれまで各省庁に分かれていた約30の法律が、消費者庁の担当として移管されてきました。そうして、消費者行政を一本化して効率をよくし、消費者により近いところにいて、消費者のためになる行政を推進するというのが基本です。
 消費者庁が所管することになった法律のうち、石鹸洗剤工業会に関係するものとしては、製造物責任法、食品衛生法、有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律、消費生活用製品安全法、不当景品類不当表示防止法、そして家庭用品品質表示法(以下「品表法」と略記)があるわけです。

●品表法対象の検討も、より「安全」の観点も必要か

 品表法については、1962(昭和37)年以来、営々としてやってきた長い歴史もあり、業界側にも、また繊維製品など一部の製品については消費者側にもかなり定着していると言ってもいいかもしれません。
 そもそも、この法律は、日常家庭で使われる商品の品質を適正でわかりやすく表示し、消費者が購入に際し適切な情報を得られ、不利益を被ることがないようにしようというもので、現時点ではその対象になっている家庭用品は90品目を指定していますが、今後、今の時代にマッチした品目の指定や表示事項の見直しなどを行う必要があるという観点から目下その準備をしています。
 そのために、各分野の専門家の方々から成る研究会などを立ち上げて諸案を練っていただき、更に消費者委員会の了承を得て改正となるわけですが、勿論、法律改正になりますから内閣法制局の審査から閣議決定に至るまで、気の遠くなるような行程が控えており、少なくとも凡そ3〜4年の期間は必要となるのではないでしょうか。
 また、表示事項の改正に際し、更に強い視点が要求されるとすれば「安全」がキーワードになるのではないかとも思っています。
 本来、「品質表示」と言えば、まず素材の規格要件だとか、原料の組成などが課題になり、次に取扱い上の注意事項がありますが、特に昨今、製品の「安心・安全」がより強く叫ばれる中、こういった視点が更に重要視されるものと考えます。
 造る側としても、これまでも消費者相談などいろいろな事例を聞きながら、誤使用がないように表示をしてきたと思いますが、更にそれをもう少し突き進めて、より使っている人の側に立った視点による注意喚起が必要になる傾向にあると思います。

●消費者に伝えなければならないことはなにか

 法に定められた品質表示は、言うまでもなく、表示する側にはその法に定められた事項を最低限遵守していただかないとなりませんが、しかし法律が全てではありません。世の中には伝えたいことはいっぱいあるはずで、それは法律が規定することだけじゃないはずです。それが多過ぎて字はどんどん小さくなっていく恐れもありますが、自分たちの会社の裁量で消費者に伝えたいことはいくらでも表示してもらって構いません。
 比較的頻繁、かつ多岐にわたる表示者側や消費者側のニーズをタイムリーに法に反映して行くのは実際なかなか困難なことですから。
 時代と共に品表法に基づく表示のあるべき姿についても時代の要請は変わってきていると思います。私個人的な意識としては、法定事項という枠が有ろうと無かろうと、それを飛び越えて、事業者が消費者に伝えたいと思うことはしっかりと伝えていただければいい、それが基本だと思うのです。何も法にとらわれることはありません(勿論、言うまでもなく法定事項はきちんと記載した上での話しですが)。

●表示の国際化にかかわって表示の常識も…

 表示の問題は、もうひとつ、国際化の流れに伴い、新たな動きが起こっています。
 みなさんの業界でも、GHSでドクロマークの危険物質を知らせる表示があります。これが将来、品表法につながるかどうかは不明ですが、そういったグローバル・スタンダードな表示の品表法への取り込みの問題も今後あるでしょう。
 繊維業界では洗濯絵表示の国際標準化が検討されています。これは現時点でもJIS規格の引用ということで品表法にも反映していますので、JIS規格が改正になれば品表法も併せて改正しなければなりません。
 このような問題は、消費者に対する事前のピーアールが一番大事で、それが十分でないとせっかく法律を改正しても定着するのに相当な期間がかかると思われます。
 品表法も決めることはキッチリ決めていますが、法違反に対しては、言ってみれば少しユルい法律です。だからと言って、罰則を強化すればいいかというと、そういう問題でもありません。一律に届出方式などの表示でない限り、一様に表示の実態を把握するのが困難だからです。地方を含む行政側の立入検査や試売テスト、消費者からの情報提供、あるいは事業者自らの違反申告だけでは全てにおいて実態を把握することはできませんから。
 品表法は排除命令が出る景表法とは大いに異なります。私個人的には、品表法は、品質表示に関する常識ライン向上のお手伝い、そんな位置付けだと思うのです。その常識もまた、世の中の動きとともに変化していきますが。

●販売まで含め消費者教育もあわせた課題に

 別業界の話ですが、よく知られている例として「カシミヤ」の問題があります。「カシミヤ」と表示してあっても実際そうでなければ(あるいは100%表示でありながら実は50%しかなかったとか)、品表法ではそうした表示をした者に対してのみ責任を問うわけなのですが、景表法ではそのような商品を売った側の責任も、どういう広告を出して店頭ではどのような表示をしたかなどを当局は追及します。
 消費者は販売店の信用力で買入する場合も多いわけで、品表法の厳正な執行という観点からは、有名デパートや有名スーパーなどの販売者に対しての注意喚起が必要ではないかと私個人的には考えています。「品質表示が適正なものでない限り仕入れません」と全てのバイヤーが言えるようになって欲しいものと最近つとに思っています。これは実際、非常に効果的な話であると思いますが。もはや、品表法の実効も、販売店のご理解とご協力をいただいて、流通の最前線から逆に川上に向けて正していくというのも一策かと思っています。
 また、取扱上の注意事項を含めた表示の問題は、これを突き詰めていこうとすると、最終的には消費者教育(学校教育も含め)と言うか、社会全体で常識の底上げを図っていくことに尽きるのではないかと思うのです。
 たとえば、強化ガラス製品の取扱注意事項の中に「破損を防ぐための注意事項」と「破損した場合に関する注意事項」を記載するようになっていますが、特に「破損を防ぐための注意事項」については、「今更か?」と思われる節(普通、ガラスは落としたり衝撃を加えたりすれば割れるものだし、急激な温度変化でも割れる恐れがあるという一般常識があります。)もありますが、でも今はまだまだ誤使用の懸念を含めて、欠かせない注意事項であるのです。
 と言ったわけで、今後、より時代にマッチした実効性のある品質表示とその法的枠組みの在り方について、消費者のみなさんとつくる側、併せて、売る側のみなさんからもお知恵を拝借させていただきながら模索して行ければと考えています。(談)



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