●化学品の情報が一目でわかるよう |
国連がGHSについての勧告を出したのは、2003(平成15)年のことでした。その翌年から、日本石鹸洗剤工業会(JSDA)ではGHS検討ワーキンググループを立ち上げ、この課題にどう取り組むかを議論し、検討を重ねてきました。
このたび、業界自主基準としてのガイダンスが公表の運びとなり、本年10月にメルボルンで開かれたAOSDAC(アジア・オセアニア石鹸洗剤工業会議)にあわせて行なわれたAOSDAC運営委員会でも、当工業会から説明がされ、日本での先行GHS実施について基本的な了承を得ました。また、国内では11月16日に記者発表されました。
この機会に、GHSについて、若干の説明をさせていただきます。
まず、GHS(Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals)とは、「化学品の分類および表示に関する世界調和システム」です。一般に「化学品」といえば、工業用のものを指しますが、ここでは「化学物質を使用した日用品」もこれに含まれます。
その「分類および表示」とは、化学物質とその混合物に固有な危険有害性の種類と程度によって、世界的に統一されたルールに従って分類をし、その情報が一目でわかるよう、容器のラベル表示や安全データシートを作成し、製品の持つ危険有害性の情報伝達を行ないましょう…との趣旨です。
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今年10月に開催されたAOSDAC運営委員会の様子 |
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●国際的な統一表示を |
GHSが制定されたその背景・目的とは、人々の健康と環境を守るためであり、国と国の対策の格差をなくして国際的な枠組みを提供し、あわせて国ごとに同じ化学品の試験や評価を重複して行なわなくてすむようにすることです。
これによって、国籍や言語が異なっていても、世界中に流通する化学品の取り扱いにも支障がなく、事故などが起きることを未然に予防できるわけです。それがひいては、国際貿易のスムーズな発展拡大をうながすことにつながる、とも考えられています。
もともとGHSは、国連勧告に先立つこと11 年前のアジェンダ'21(国連環境開発会議)で発議され、その後各国政府ならびに関係団体が協力して、システムの開発に取り組んできました。その結果、国際的に統一されたラベル表示として、危険有害性の種類や程度に応じた、9種類の絵表示が決められました。
世界各国では、すでに工業用化学品を中心にGHS導入が始まっていますが、消費者製品へのGHS導入は、これからです。たとえば、日本では2006年の労働安全衛生法改正で物質を限定してGHSラベル表示やGHS版MSDSを義務付けていますが、一般消費者製品は対象外となっています。
また、アジア地域では韓国・台湾・中国などが、化学品や業務品に関してGHS の法制化を行なっていますが、消費者製品のGHSは、世界的にみて、まだ実施されてはいません。 |
●まず三種類の製品から |
わが国では、関係官庁の支援により、消費者製品を取り扱う関係団体ごとに自主的な対応を検討してきました。日本石鹸洗剤工業会では、石けん・洗剤等の家庭用消費者製品へのGHSの自主的導入に向けて、いち早く、技術ガイダンスの作成、説明会など業界への周知活動を、GHS検討ワーキンググループを中心に、取り組んできました。
ガイダンスは、自主基準として「家庭用消費者製品におけるGHS実施ガイダンス」と「家庭用消費者製品におけるGHSラベル表示作成ガイダンス」を、それぞれ初版として今回当工業会のホームページに公表しました。
これで完成したわけではなく、今後のさらなる検討、意見集約をふまえて、版の改訂をすることを前提にしています。
ガイダンスでは、慢性毒性についてはリスク評価に基づく表示をすべく、代表製品での分類事例を掲げて、リスク表示の考え方を示しています。これに従って、各社で製品の分類を行ない、ラベル表示が必要かどうか、必要な場合どう表示するかを検討し、その結果を製品ラベルに反映することになります。
また、今後のスケジュールとしては、当工業会は日本石鹸洗剤工業組合ならびに日本家庭用洗浄剤工業会と共同して、2011(平成23)年1月から、製品分野を絞り込んで段階的に、GHSに基づく表示を導入する方針です。
これは、消費者の皆様にGHS表示を知っていただくためのモデルとして普及をはかり、あわせてそれがどのように受け入れられるかを確認しながら、今後の情報提供のあり方を検討しようとするためです。
その手始めとして、(1)台所洗剤(自動食器洗い機用は除く)、(2)塩素系漂白剤、(3)塩素系および酸性洗浄剤((2)と(3)は『まぜるな危険』表示のある製品に限定)の三種類のカテゴリーの製品を選びました。
その理由は、(1)台所洗剤については、一般家庭での保有率、使用頻度が高く、消費者が表示に接する機会が多いからです。また、(2)塩素系漂白剤、(3)塩素系および酸性洗浄剤についていえば、かねてから消費者の皆様には、『まぜるな危険』表示等でその取り扱いに注意をお願いしてきた製品であるためです。 |
●製品の安全性などに変わりなし |
なお、念のためにつけ加えますと、GHSの導入によって、すべての製品に新しいGHS絵表示がつくわけではありません。また、「GHS表示がついている製品は危険だ」とか、「使わないほうがいい」といった意味ではないのです。
製品の安全性や取り扱い上の注意事項については、これまでとなんら変わるところはないのです。
従来から、事故や健康被害が起きることがないように、使用上の注意は文言や自主的な注意マークで、表示されていました。これに加えて、今後、GHS表示が追加されることになります。
GHS関連の情報は、このホームページでも紹介していますので、さらに詳しくはそちらを参照してください。 |