●化粧石鹸は年々衰退しているか? |
1970年代後半から、固形の化粧石鹸は、毎年10万トンを超える量が国内で生産されていました。ところが、1993年に初めて10万トンを切って以来、生産量は下がる一方で、固形の化粧石鹸は液体石鹸などに押されて、その市場を縮小する一方…という印象がありました。 事実、毎号『クリーンエイジ』に掲載してきた経済産業省の出荷統計では、2007には若干持ち直したものの、ここ10年もの間、一貫して下がっていました。 化粧石鹸は、そんなに使われなくなったの? しかし、その割には市中の販売店の店頭には、多彩な石鹸が出回っています。 これはどういうわけでしょうか? |
●生産量より販売量のほうが多い |
よくよく調べてみると、経済産業省の生産販売統計の販売量は、国内製造分にメーカーが輸入して販売した分を加算した量です。したがって、輸入が増えてくると、販売量のほうが多くなってきます。 これは製造業の統計なので、数値を提出しなければならないのは国内の製造メーカーです。メーカーは自社がつくった分とともに、販売した分も届けることになっています。 ということは、国内メーカーが自分で輸入した分については、生産量に輸入量を加算するので、生産量よりも販売量の方が多くなる場合があるのです。 国内生産量は減っていて、その割には販売量はそれほど減っていないという場合、タイムラグも考えられます。すなわち、前の年に生産していた分を翌年に販売するケースです。その場合は、傾向線が凸凹するはずなのに、固形の化粧石鹸の場合、それもありません。 統計でも、化粧石鹸では生産量よりも出荷量(販売量)のほうが大きいという結果が、ここ10年コンスタントに続いていたのです。 |
●輸入マイナス輸出の純増が |
実際に市場に出回っている量を知るには、生産量に輸入量を加算し、輸出量を減算して見なければなりません。その純増分を上乗せしたグラフ(下図)をつくってみました。 背景に販売量のグラフも重ね合わせてみると、販売量が生産量を上回り、輸出入の純増分がこれをカバーして、なお15%程度のオーバーになっているということが、はっきりとわかります。 輸出入の純増分が増えはじめたのは、1995年を境としてでした。この年には、1月に阪神淡路大震災が起こり、やせる石鹸ブームで中国からの輸入が急増しました。国内メーカーでも海外で生産する量が徐々に増え、それも輸入増加の要因になっていきます。翌96年にはO-157が大流行し、手洗いが励行されて液体ハンドソープを中心に、石鹸全体の需要が伸びました。 |
●輸出入純増2万トン時代へ |
その後、国内の製造メーカー以外の量販店やネット販売業者、個人輸入などから入ってくる量も増え、ここ4年連続で、輸入から輸出を差し引いた純増で、2万トンベースになっています。 経済産業省の統計に財務省の関税統計を合わせると、こうした事情がが見えてきます。 生産が減ったと言われるわりに、店頭をにぎわしている理由の一端が、ここにあります。 |