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2007年12月15日更新
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第2回JSDAクリーンセミナーを開催
「安全はどうやって確かめるの?」毒性試験を考える

財団法人 残留農薬研究所
毒性部副部長 兼 生殖毒性研究室室長
青山博昭氏が講演
asdac

 『クリーンセミナー』2007年度のシリーズテーマは『化学物質と安全』ですが、その第2回セミナーが10月24日に開催されました。講師・青山先生の主題は「安全はどうやって確かめるの?」というもので、毒性試験やリスク管理についてのお話をされました。
……食品や環境中に存在するさまざまな有害物質のリスクは、それらの物質の有害性(ハザードまたは毒性)と、暴露(摂取)量との掛算で推定される。この場合、リスク評価に用いる有害性や暴露量の評価が科学的に信頼できるものでなければならず、そうした科学的なリスク評価の結果に基づいて、合理的なリスク管理が重要であることも、一般に認識されていることだろう。
 しかし、わが国における現実をみると、残念ながら、科学的であるとの誤解の下に、非科学的な対応がなされている事例や、誤解や失敗も少なくない……。
 そのような意見を表明しておられる青山先生の、お話の終わりのほうで、『「学究の科学」と「規制の科学」の隙間に「賢い市民となる道」がある』との、大変興味深いご指摘がありました。
 講演の概要は、こちらに掲載していますが、この部分についてのみ、その要旨を別記事として、ここにご紹介させていただきます。(なお、要旨のまとめについては、編集部の文責によります。)

賢い市民となるために

●「化学物質」に関する誤解
 考えてみれば「化学物質」とは変な言葉で、個人的にはあまり好きではないので、なるべく使わないようにしている。
 リンゴもミカンもコンピュータも物質であり、あらゆる物質は化合物である。そこに「化学」をつけることで、それらがいかにも“無理やり人が作った悪者” という印象を植えつけているようにみえる。なんとなく、「化学物質=人工物=悪者」という認識が、一般に浸透してきたが、これは大きな誤解があるのではないだろうか。
 世の中には、何十万という物質があふれていて、われわれはそれらに依存して生きている。それらのすべてについてリスクを評価するのは実質上不可能である。不幸にして何らかの被害が現れたり、トラブルが生じたりしたら、すぐさま対応するが、原則的にはこれまでの経験を基に優先順位をつけ、たとえば生産量の多いものから優先的に対応していこうというのが、現在の考え方といえる。
●「専門家の話」をどう聞くか
 専門家の話には、(わたしの話もそうだが)聞いたその場ではなんとなく理解したような気分になるけれども、家に帰って「じゃ自分で考えましょう」という段になると、「なんだったけなあ」、となってしまうことが多い。
 たとえば物質の安全性にしても、消費者は何がどこまで安全なのか、よくわからない。国や役所のホームページを見ると、最後には「自分の責任でよく考えましょう」なんて書いてあって、結局どうしていいのかわからない。
 毒性学の分野でも、なかなかおもしろい分野だ、学問的には興味がある、という言い方をする研究者は多い(わたしもその一人です)。そういう研究者の中には、リスク評価もなにもまったく知らない人がたくさんいる。
 そのような人たちは、多額の予算がついた環境ホルモン騒ぎのときなど、研究費を獲得するために、「とりあえず“これは問題がある、研究しなければならん” と言っておこう」となってしまったのではないだろうか。
 その結果、さまざまな物質の生理活性(毒性ではない)に関するデータはいっぱい出たが,市民の安全もリスク評価もどこかへいってしまった。これでは「何が安全なの?」という市民の疑問に答えられていない。
●「学究の科学」と「規制の科学」
 こういう状況を整理するには、まず、科学には「学究の科学」と「規制の科学」の二つがある(これらの用語は、唐木先生のご了解を得て、使わせてもらっている)、ということを理解しておかなければならない。
 リスク評価のために必要な毒性を調べる試験などは、最も典型的な「規制の科学」である。その目的は市民の安全を担保することにある。そこでは、一定の期限内(90日〜2ないし4年)に、できる限りのことを調べて、対応策を見出す。それであらゆることがわかるわけではないから、不確実な部分は予測で補うことになる。
 アカデミア(大学など)の研究は、問題を最後の最後までとことん極めようという「学究の科学」なので、終わりがない。わからないことがあると、それがまた次の研究テーマになる。そのため、いつまでたっても半永久的に「わからないことがある」ということになってしまい、研究は果てしなく続く。
●行政とメディアの課題
行政やメディアが、「学究の科学」に呑み込まれてしまっているようにみえる場面をしばしば目にする。
 なにか問題が生ずると、有識者を集めた検討会などを設置するのが行政のスタイルになっている。それはそれでいいとして、その検討委員の選び方に策が足りない。多くの場合、対立する意見を持つ論者をこっちから一人、あっちから一人とやってしまうので、議論はいつも平行線を辿り、大方の場合“さらなる研究が必要” という結論しか得られない。
 その問題に関する専門家集団の大勢を見極め、その後に、「比例代表」方式で委員を選ぶことが望ましい。
 メディアには、どんな問題に対しても、同じ研究者に意見を求める傾向がある。しかし、ある分野で優れた業績を持つ研究者でも、専門外の分野に関しては、われわれと同様に素人である。場合によっては、間違い科学や必ずしも科学的に正しいとは言えないコメントが、市民をミスリードすることもあると思われる。
●「科学の領域」と「心理の領域」
 リスク評価では、目安として、1日当りの許容摂取量を示す。その値は、通常、動物実験で毒性が認められなかった用量の1/100である。ここまでは、「科学」の領域である。ここに「絶対に安全でなければならない」という論理を持ちこみ、リスク評価が信じられないというなら、もはや科学ではなく心理の問題である。

■講演の概要は、こちらに掲載しています


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