日本石鹸洗剤工業会(JSDA)
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2007年3月15日更新
01.*お茶の間の目線(2) *目次へ 
参照カテゴリ> #03.洗濯 #03.CLEAN AGE 209号 

*お茶の間の目線から「お洗濯」を科学してみよう

< 第8回 >

お洗濯を考える
伯母* 伯母さんと
姪* 姪の会話


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浴比バランスに注意して上手なお洗濯を
低浴比化と低機械力ではきれいに洗えない

*いよいよ最終回

姪* “お洗濯ソムリエ”というのがあるらしいですね。伯母さんなんか研究所でそういうお仕事されているんだから、ぴったりかもね。
伯母* さあ、どうでしょうね。たまたまそういう立場にいただけだから。でも、お洗濯に限らず家事に関しても、そういう特別の人だけでなく一般の主婦にもお茶の間の目線からみた科学的な知識は、これからはある程度は必要でしょうね。
姪* お洗濯については、洗剤もさることながら洗濯機の進歩というか、変化も大きな要素になるんでしょうね。
伯母* その通りだわね。
姪* 「全自動」なんて、こっちはなんにもしなくてもお洗濯ができるみたいでいかにも頼もしそう…。
伯母* 洗濯機も各メーカーが競争で、新製品がでるたびにさまざまな訴求ポイントをあげて宣伝してきたからね。
姪* 「節水機能」とか「省エネタイプ」とかいう、あれですね。
伯母* そうそう。いろいろ機能が増えて使いやすく便利になるのは大いに歓迎でいいんだけれど、ちょっと問題になる部分もあるわね。
姪* たとえば?
伯母* たとえば、水を少ししか使わないで済むとか、洗剤も少なくて済むとか、一度にたくさん洗えるとか、生地を傷めないようやさしく洗うとか、確かに耳触りのよい訴求効果を謳う傾向が行き過ぎると、本来の洗濯に必要な基本条件まで損なってしまう、ということも起こり得るでしょうね。
姪* 実際にそんなことがあるんですか。
伯母*  “洗濯物に洗剤が溶け残ったまま付着している” といった苦情が、洗剤メーカーに寄せられることがあるのよ。
姪* えっ。そうなの?
伯母* 洗濯機の機械力(攪拌作用) は、洗剤を溶かしかき混ぜるためにも必要なんだけど、水が少ないと攪拌する力が全体に伝わりにくくなるの。そのため、洗濯槽内の洗濯液が均一にならなければならないのに、その前に洗濯が終了してしまうのね。
姪* どうしてそんなことになるのかしら。
伯母* 最近の全自動洗濯機は、洗濯物の衣類を入れてスイッチを押すと、重量を自動的に量って、それとそれに見合う洗剤の使用量をパネルに表示してくれるタイプが主流でしょう。
姪* あれも、親切ですよね。
伯母* ところがね。洗濯機の指示通りに洗剤を投入するでしょう、普通…。
姪* 普通この頃ではそうですね。自動的に入るから。
伯母* そうすると、最近の節水機能付きの洗濯機では、衣類の量に対して水が少な目になってしまうので、洗剤が溶ける前に衣類に巻き込まれてしまって、溶け残るのね。
姪* じゃ、それを防ぐには、どうすればいいんですか。
伯母* 洗濯物の量は、洗濯機が自己申告している洗濯容量(最大洗濯物重量kg) に対して、表示量より少な目に入れ、余裕をもたせることね。
姪* ぎりぎりまで入れ過ぎないように、ってことですね。
伯母* そう。ほら、人間でも“腹八分目” っていうじゃない。だからね、洗濯機も6〜8分目程度を目安にしてね。節水だけではなくて、洗濯機の大容量化で、みんなが“一度にたくさん洗えるんだ”と過信するようになったことも背景にあるかもしれないわね。
姪* いっぺんに洗濯を終わらせたいと思ったりすると、つい詰め込んでしまうことあるからね。
伯母* それにね、洗濯物を詰め込み過ぎると、もっと基本的な問題があるのね。
姪*  ええっ! なんですか、それは。
伯母* それは低浴比になってしまうことね。
姪* 低浴比…?
伯母* そう。まずその前に「浴比」というのはね、1kg の衣類を洗うのに使う水の量(L)で表されるものなのね。それで、大量の水の中に衣類が少量しか入っていない場合は、浴比は大きいということになるわけ。それとは逆に、衣類がいっぱい詰め込んであるのにそれに比して水が少ない場合は、浴比が小さい低浴比ということになるの。
姪* なるほど。
伯母* 低浴比の状態は“衣類を詰め込み過ぎた”ことになるので、洗濯中の衣類の動きは悪くなる。そうなれば、当然に洗剤や洗濯機の働きで汚れを落とすという効果を発揮しにくくなってしまう。低浴比化というのは汚れ落ちの低下、洗いムラの発生、ひいては洗剤の溶け残り=不十分なすすぎにつながることになりやすい。つまりは、きれいに洗えないのよ。
姪* じゃあ、“高浴比”とはいわないのかもしれないけど、逆に浴比が大きい場合の不都合は?
伯母* その場合は、洗濯物に対して必要以上に水や洗剤が多く使われる状態で、きれいには洗えるかもしれないけど、ムダ。
 それとね。最近流行のドラム式だけれど、これは基本的に低浴比を前提にして洗うよう設計されているのよ。これにも水が少なくいったん落ちたはずの汚れがくっついてしまう再汚染の問題が生じることもあるので、注意が必要ね。
姪* 全自動で洗濯機任せで、手なんか濡らさずにお洗濯ができてしまうので、そんなこと気にしない場合も多いですね。
伯母* 渦巻き式でも、洗濯物の上から水を注いだりするので、低浴比の状態でお洗濯していても、衣類全体はまんべんなく濡れているように見えるので、洗えたものと誤解されてしまうこともあるのよ。トレーナーとか、ジーンズとか、ごわごわして嵩張る洗濯物のときには、浴比の数字以上に水に浸かりにくくなってしまうので、この傾向が顕著になります。
photo
姪* あっ、この写真ね。こんな感じなのね。(写真上)
伯母* それはね、実際の洗濯機でテストしたときの様子なのよ。実際の洗濯機でそのメーカー指定の洗濯物量と水量に設定して洗ったのが写真左のほうよ。このように衣類が水面から飛び出してしまうでしょう。これでは、実際には衣類の回転も悪く、機械力が十分に働いていないことになってしまう。
姪* こっちの右のほうは、上まで水に浸かっている…。
伯母* こっちは、それより洗濯物を2割減らしてみたときの状態。これでだいたい浴比は14程度なの。これで衣類は水面下に浸り、機械力も加わるようになる。洗濯機に表示の洗濯容量は、特定の試験衣料を用いて求めた最大洗濯容量なので、それがそのまま実衣料を洗える容量ではない、ということは理解しておいたほうがいいわね。
姪* わかりました。が、ちゃんと洗えているかどうかを見分ける方法かなんかないのでしょうかね。
伯母* 衣類が洗濯時に適度に動いているかどうか、それを確認してみること。それがポイント。
 どう、この連載も終わりになったけど、少しは“花嫁修業”の足しになったかな。
姪* いやだ、伯母さま、“花嫁修業”だなんて。そういうのはもう死語らしいですよ。でも、ほんとに家事のいろいろについて、基本は学んでおかないと…。おかげさまでとても勉強になりました。ありがとうございました。
伯母* これからもがんばって。よく考える主婦になるようにね。

(おわり)

この連載は日本石鹸洗剤工業会 洗たく科学専門
委員会技術資料「洗たくの科学」により構成した



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