★カルシウム・マグネシウムを含む硬水
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よく知られていることですが、ヨーロッパなどに行ってみるとバスルームで石けんを使っても、ほとんど泡が立たないといったことがあります。ヨーロッパに行かなくても、国内の温泉でも同様の経験をしたという人もあるはずです。これは、カルシウム(Ca)・マグネシウム(Mg)のイオンを多く含む硬水の特徴です。
一般に欧州諸国では、Ca・Mg などのミネラル分が比較的多い硬水で、日本の水ではそれが比較的少ない軟水だといわれています。これがいわゆる「水の硬度」といわれているものですが、実際には硬度そのものがCa・Mg の含有量を示しているわけではありません。Ca・Mg を1 リットル当りに含まれる炭酸カルシウム量に換算し、その含量が1 ミリグラムを「硬度1( 度=° )」と
しています。この硬度の定義も、日本やアメリカは同じですが国によって異なります。
では、どこからどこまでが軟水でどこからが硬水か。この区切り方にもいろいろにいわれていますが、WHOの基準では右ページ図内のように示されています。
日本国内の水道の原水は、河川などの表流水か、ダムや湖沼の水か、地下水などから取水し、これを浄水しています。原水には、さまざまな成分が溶け込んでいて、それが水の味や風味などを演出しています。まったく不純物を含まない純水は、飲んでもうま味がないのです。
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★硬水と軟水どちらがいいかという問題ではない
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浄水場では、水道水として適した水質を維持するために、50 項目の検査項目にわたってチェックされています。この検査項目の一つに、「カルシウム、マグネシウム等( 硬度)」というものがあり、これを検査(水質基準は300mg/l 以下)している浄水場が、平成16 年度の統計では全国5,239 か所ありました。
いうまでもないことですが、硬水と軟水とどちらが良いとか悪いとかという問題ではありません。水道基準に適合するように浄水された結果、原水と給水栓では硬度が変わるという場合もあります。また、浄水量が多い浄水場と少ない浄水場の違いもありますし、同じ場所でも、こちらは軟水でこちらは硬水と、その線引きは地域で明確に分かれているというわけでもありません。同じ町でも、浄水場によって違ったりします。
そのことに留意していただいたうえで、たとえばどんなところで硬度が高い水が使われているのかを見てみましょう。全国の硬水分布、それをここで全部あげることはできませんが、その例示という意味で、「平成16 年度水道統計水質編」( 社団法人日本水道協会) から浄水量が多い原水をピックアップして、次の図上に示してみました。
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全国5,239か所の浄水場のうち、硬度120°未満の軟水は4,931か所を占めており、やはり日本の水はそのほとんどが軟水であるということができます。
これに対して、残りのうち「硬水」のところは190か所、さらに「極度の硬水」が118か所ありました。(この記事の地名やデータは、いずれも平成16年度の『水道統計』による) |
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★洗濯には要注意ですが
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硬水では石けんの泡立ちは悪いけれど、体を洗った後のさっぱり感がよいという人もありますが、泡立ちが悪いのは、硬水で石けんを溶かすと、Ca、Mg が石けんと結合して金属石けんを生じるからです。金属石けんは水に溶けないために、純石けん分がもっている本来の機能を失うことがあり、界面活性剤の効果を低下させることがあります。このため、硬度の高い水で洗濯をする場合には、硬水にも適した石けんや洗剤を選ぶとか、使用量を少し多めに使うといった注意も必要になります。
洗濯に限っては、硬水はあまりいいことがないようですが、料理によってはいい味を出すと重宝されることもありますし、おいしいお酒ができるということもあります。
また、ミネラルウォーターなどのように、硬水の特徴を生かした飲料もあります。おいしい水を求める人も硬水に注目しているようです。
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