日本石鹸洗剤工業会(JSDA)
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2006年12月15日更新
01.*お茶の間の目線(2) *目次へ 
参照カテゴリ> #03.洗濯 #03.CLEAN AGE 207号 

*お茶の間の目線から「お洗濯」を科学してみよう

< 第6回 >

お洗濯を考える
伯母* 伯母さんと
姪* 姪の会話


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洗濯には水+洗剤+機械力が不可欠だが
“洗浄力”はどう評価できるのか

*洗濯の三要素と洗浄度の話

伯母* お洗濯は毎日の家事のなかでも大きなウエイトを占めているけれど、この頃では洗濯機が賢くなって、なんでも洗濯機任せ、洗濯機のいいなりっていう傾向もあるようね。
姪* それじゃイケないんですか?
伯母* イケないことはありませんよ。ただね、洗濯機はしょせん機械で道具なんだから、お洗濯をする人間のほうが、なぜどうしてお洗濯できれいになるか、ちゃんとお洗濯を科学して正しい知識をもっておかないと、洗濯機だけ賢くてもね。
姪* 科学かぁ、そうねぇ。“洗濯なんか洗剤なんか使わなくても水だけでいいのよ”なんていう人もいたりしてね、それも随分科学的でないなあと思うけど…。
伯母* 少なくとも、そんなふうにものごとの一部の一面だけをみて全体をこうだと決め付けるのは、科学的とはいえないわね。前にもふれたけど、汚れには水で落ちる汚れもあれば落ちない汚れもあるし、多くの汚れはいろんな汚れが複合的にからみあっているものですからね。
姪* だから洗剤が必要なのね。
伯母* 洗剤だけじゃありませんよ。お洗濯には、どんな場合でも基本的に三つの要素が欠かせない、といったわね。
姪* えーっと、水と洗剤と洗濯機…じゃなくて機械力。
お洗濯の三要素とその関係

↑これらの働きはお互いに補完できない

伯母* そうそう。まず、水溶性の汚れだけなら、確かに水だけで落ちるものもあるけれど、汚れの大部分を占める皮脂汚れのような脂汚れは、一度繊維に付着し奥にしみ込んでしまうと、水と機械力だけではまず落ちないということね。
姪* 脂だから水ははじいてしまうのね。それは前にも聞いたしよくわかるんだけれど、洗剤が洗濯には必要であり有用だということは、科学的にいうとどうなるのでしょうね。
伯母* それもちゃんと実験で研究されていて、データがでているのよ。ちょっと専門的になるけど、このグラフ(図1)よ。
 このグラフの縦軸は、どのくらいきれいに洗えたかという洗浄度の目安を%で示していて、横軸は洗剤の濃度(wt%=重量%)を示しているのね。
図1 洗剤濃度と洗浄度の関係
出典:National Technical Report Vol.18,705-713 (1972)
   小林 晃、森 国人、岸本由信、永井真一、天野英俊

姪* すると、「濃度0.2」ってことは?
伯母* 水の比重を1と考えると、1リットル(=1kg)の水に洗剤2gを溶かした、という意味になるわけね。それで、洗浄時間別に四つのケースで比較しているグラフなの。
姪* 洗浄時間がいちばん短い3分の場合で見ると、濃度が0ってことは、つまり洗剤を使わない水だけってことね。それでも洗浄度は10%ちょっとある、というわけですか。
伯母* その通り。洗剤を使わず水だけでも30分もかけて洗っていれば、30%強は洗えるということね。
姪* 30%も洗えればそれで充分だという考え方なら、水だけでも洗えるといえないこともない…。でもそれはちょっとね。
伯母* もともとこの洗浄度は、過剰な量の汚れを付けたモデル汚染布で実験した結果なので、普通の洗濯で100%になることはありえない。いちばんよく洗えているとみられるのが、濃度0.2〜0.3で30分洗った場合ということになるけど、それでも70%を切っているわけでね。逆に過剰に汚れが付いている分、機械力だけでも汚れを引き剥がすことができるの。でも落ちた汚れは別の布に再付着しても、汚染布から汚れが落ちていれば洗浄度として数値化されてしまうので、洗剤を入れて洗った場合の30%とは意味が違うのよ。
姪* この、上下に伸びている線はなんですか。
伯母* 「95%信頼限界」ね。繰り返し同じ実験を行なってもまったく同じ結果がでるとは限らず、実験には誤差はつきものなの。でも、95%の確率で、本当の値がこの範囲内に入ってくる、ということを意味しているのよ。
姪* それに、洗剤の濃度をどんどん上げても、あまり洗浄度に変化はない、といっているみたいだわ、このグラフ。
伯母* そうなの。濃度0.2〜0.3のところからは洗浄度のラインが水平になるでしょ。それこそが “洗剤は適量を使いましょう” ということであって、適量以上に多く使ったからといって効果はないことを示しているというわけ。
姪* とすると、この線が急上昇しているところの濃度0.2くらいまでが洗剤の効果を表しているということ?
伯母* そうね、逆にいえば洗剤が少なすぎても効果がでていないということだし、洗浄時間が短すぎても洗浄度は上がらない。洗剤の物理化学的作用を充分に発揮させるためには、適量とある程度の時間が必要ね。
姪* 洗う時間は、やはり長いほうがきれいになるのかしら。
伯母* いやいや、なにごとも “過ぎたるは及ばざるがごとし”でね。今度はこっちのグラフ(図2)を見て。これは洗浄時間と洗浄度の関係を、濃度別に見たものよ。そして、この洗浄時間というのがすなわち洗濯機が回っている時間で、この機械力がなければ洗浄度は上がらないことを示しているし、同時にこれも10分を過ぎた辺りからはいくら時間が延びても洗浄度は上がりにくい、ということなの。
図 洗剤時間と洗浄度の関係
出典:National Technical Report Vol.18,705-713 (1972)
   小林 晃、森 国人、岸本由信、永井真一、天野英俊

姪* それ以上洗ってもむだ、ということか…。
伯母* むだなだけでなく、機械力を過度にかけると衣料を傷めてしまいますからね。1)汚れの分散作用、2)汚れのrolling up、3)乳化作用の促進、4)繊維間への浸透力増加などといった洗剤の物理化学作用は、機械作用との適度な組み合わせによる相乗効果によって、洗浄する力は得られるのよ。
姪* その洗浄する力というのは、いったいどんなふうにして測られ評価されているんですか。
伯母* ここで説明した「洗浄度○%」というのとはいちおう別だけど、洗剤や洗濯機の洗浄の効果を確認し洗浄力を評価する方法には、㈰人工的に汚れを付けた布で評価する方法、㈪実際に着用した結果汚れた天然汚染布で評価する方法、があるわ。㈪のなかにはさらに(a)衿に付けた布で調べるJIS衿垢布法、(b)家族を単位として着用・洗濯を繰り返すファミリーバンドルテスト法があるのよ。
姪* 洗濯機や洗剤の洗浄力を評価するには、どの方法がいちばんいい方法なのかしら。
伯母* 実はどの方法にも評価の限界があるの。たとえば㈰の人工汚染布は洗濯機の機械力評価には使えるものはあっても、実際に衣服に付いてくる汚れに対する洗剤の洗浄力を評価できるものはないの。でも、酵素や漂白剤といった、特定の洗剤成分の効果を確認するのに適した専用の汚染布はあるわね。JIS衿垢布法は2種類の洗剤間の比較はできるけど、洗剤の数が増えるとむずかしいし、洗浄力以外の総合的な洗剤の評価はできない。ファミリーバンドルテスト法の結果は洗浄力だけでなく、総合的な評価ができるということで世界的にその有効性が認められていても、時間と費用の点で一般的とはいえない…といった具合で、それぞれ目的によって使い分けるしかないのよ。
姪* なるほどね。いろいろ大変なものなのね。

(つづく)


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