日本石鹸洗剤工業会(JSDA)
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2004年12月15日更新
01.*CLEAN AGE 200号 *目次へ 
参照カテゴリ> #01.委員会 

*座談会

工業会からの情報発信 
--その、これまでとこれから--
いっそうの理解を広げるために 『クリーンエイジ』200 号を迎えて
出席者
 ・国際委員会  日生下(ひうけ)卓 委員
 ・洗たく科学専門委員会 鈴木 哲 委員長
 ・環境安全専門委員会 聳城(たかぎ) 豊 委員
 ・コミュニケーション
  推進専門委員会
佐藤 孝逸 委員長
原田 房枝 委員
 ・事務局 神田 豊輝 専務理事
 ・司会:編集専門委員会 坪内 徹 委員長

左から 神田・聳城・鈴木・坪内・佐藤・日生下・原田の各氏


坪内 『クリーンエイジ』200号記念ということで、今日は日頃日本石鹸洗剤工業会の各委員会で活動されている人のうち、直接情報発信にかかわっておられる方々にお集まりいただきました。
 それぞれみなさんは、会社の仕事と業界活動という二足のわらじを履いてご活躍されているわけですが、やはり会社と業界というのでは違いがありますか。
佐藤 工業会からの情報発信と企業の広報の違いでいうと、一番大きいのは企業には情報のほかに商品というものがありますね。商品をもたない工業会としては、そこから発信される情報だけが世間に見えるものです。
 それと、一企業の問題ではないということ、会員各社に共通する問題に共同で取り組み、その結果を公表していくというところに特徴があると思います。
坪内 わたしの印象ですが、工業会という寄り合いの団体になると、どうしても情報発信そのものに慎重になり過ぎるきらいもあるのではないか、という気もします。会社だったらさっさと出して広報してしまうのに、工業会という立場ではいろいろ配慮が必要なこともあるからでしょうが...。
 工業会も会社も外から見るときは一緒に見られているのです。会社の集まりが工業会ですから。
神田 確かに企業の集まりが工業会という側面もあるのですが、今の法律の改正の方向など見ていると企業の責任を求めているような改正が多くなっているんですね。概念的には企業の広報活動の分野が広がっていて、業界としてのところは相対的に縮まっているというイメージがある。ただ、そうはいっても一企業だけでは取り上げられない課題が増えていることも事実で、その意味では業界の広報活動は重要になってくると思われます。
 確かに過去には、出してもいいのではないかというものでも、「まぁ、やめとこう」といった慎重な意見もありました。事実にもとづいた科学的に正しいといえることであれば、その理解を得るためにはどんどん情報を出していかなければならないし、そこに企業ではなく工業会の役割も大きいはずですね。
鈴木 ただ気をつけなければいけないのは、より広く情報を発信するにはメディアを経由することになるのですが、これがセンセーショナルにしないと読んでくれない、取り上げてくれない、という事情があるんですね。ことさら面白くみせたいために、どうしても対立軸をつくりたがる。○○VS□□にしないと気が済まない。正しい情報を伝えるという使命のところは、どうも二次的になっているかな、というところがありますね。
神田 その辺は要注意ですね。ただ、よく知らせようと思って話した意図とは逆にとられてしまう危険性もある。それでも、これからはいろいろな情報を工業会としても発信していくべきだろうと思います。工業会自体が業界の広告塔のようなものなので、プラスイメージになる活動を展開していく必要がある。
坪内 鈴木さんは例の「洗剤ゼロコース付き洗濯機」問題では、この場合「洗剤のいらない洗濯機対洗剤業界」の対立の構図を身をもって体験されたお一人でしたね。あのときは、記者会見にも大勢集まって、かなり大々的にメディアでは取り上げられました。洗剤ゼロコース付き洗濯機そのものは、消費者や洗濯行動に大きな影響を与えたというわけではなかったのですが、その経験から感じられたことは...。
鈴木 メディアにはメディアの論理があり、読者を引きつけることが最大のポイントで、そのために表現が誇張される、興味がわくようなところだけを伝える。そういうふうに巻き込まれてしまったかな、という反省もある。
 ゼロコースの洗浄力試験については、ほぼ同時に行なわれた公の第三者機関でも工業会の試験結果と同じ結果がいくつかのところからでたので、ちゃんと理解していただいたのは幸いでした。けれども、一般にまでその理解が浸透したか、というとそうではなかった。そこが残念でしたね。
 そういう意味では、中立の立場で有識者に理解してもらえばよかったんですけれども、メディアは初めから業界側の意見を代弁する人ととってしまうので、わかってはもらえるけれども支援はしてもらえない、なかなか自分が意見をいってやろうという人がいないんです。これからは情報の出し方や出す順番などもあわせて考えなければいけませんね。
坪内 聳城さんのところの環境安全専門委員会では、科学的な用語を用いた専門的な情報が多いと思うのですが、専門的なことをわかりやすく伝えるという点でも困難なことがあるのではないですか。
聳城 そのとおりですね。化学物質というと身の回りですぐ目に付いて一番多いのが洗剤なのです。当然われわれとしては、安全なものを問題なくお客様に提供しているわけですけれども、そういう最も基本的で当たり前のことさえも、これまでなかなか充分にうまく説明しきれていなかったのではないか、という部分があります。
 学会では認められていて、専門家はもう問題にしないけれど、こういう疑問や問題をいう人はどちらかというと科学面では素人の人が多いので、そこに向けた情報提供ということではまだ課題が残る。委員会のメンバーはみんな技術者なので、技術データは出すがそれをうまく一般の人にもわかりやすい形に翻訳して、提供していくという形は、まだうまくできていないというのが実情でしょう。
坪内 確かに工業会に来ておられる方は理科系の方が多いですね。わたしなどは文系の代表のようなもので...。
聳城 技術屋は真面目すぎるというか、ものごとをどうしても正確にとらえる習性がある。消費者からすると安全なら安全といって欲しいのですが、技術屋としては「こういう条件で安全性を確認しました」ということはいえるが、「絶対安全ですよ」とはいえないわけです。
 その辺もうまく消費者向けに翻訳していうと伝わりやすいのかなとは思います。環境モニタリングの数字を照らし合わせて、実際の環境濃度は毒性が生じない濃度よりかなり低いですよというところまでは、われわれ技術的な資料もあり説明できるんですが、それがどういう意味があるとか、だからどうなんですか、というところまでもう少し踏み込んでわかりやすく説明できてもいいですね。
 環境中の洗剤の影響についてもこういう実験をやっています、こういうデータがありますとはいえるけれど、一般の人は「じゃ私の家の前の川はどうなんですか?」と聞かれる。やはりこういう声に対しては、別な説明も必要なのでしょう。
坪内 日生下さんの国際委員会では、来年のASDACも控えて、いろいろ大変だと思いますが、情報発信ということではどうでしょうか。
日生下 これまでのところ海外向けの情報発信は、『クリーンエイジ』の記事をいくつか抜粋して英訳した「JSDA News」とホームページの英語版が媒体としてはあり、それなりに役割を果たしてきました。これからは世界の動きに対応した情報を発信するための海外向けに独自の媒体も考えていかなればならないと思います。
 化学物質の適正管理は、現在世界で最も重要な課題で、日本の取り組みを世界の中の日本から発信するという視点での媒体も欲しい、もっともまだ先の話ですけれども。
 環境とか安全性の問題や化学物質の規制の問題も、もはや一国の問題ではないどころか、すべての大枠がグローバルベースで方向が決まっていくという状況になっています。それに対して、日本の考え方をどう反映させられるのか、あるいはアジアまで広げて、米欧亜の三極の中で欧米に対しアジアとしてどういう立場がとれるのかが課題になっています。
坪内 海外の情報を日本の読者に、という点ではこれまでも充分ではなかったかもしれませんね。
日生下 そのとおりだと思います。これからは日本の消費者・行政・その他の関係者に対して外の情報をうまく伝えて理解度をあげていくことがますます重要になっていくと思います。大きなことができるとは思わないのですが、これまで双方向での情報交換ツールがなかったので考えていく必要はある。それはもちろん、媒体を作るだけの話で済むとは思わないですけれどね。
 関連していえば、日本の行政もかなり変わってきたとは思いますけれど、まだまだ「日本は別だ」という思い込みが残っているところもあります。そうではなく、アジアの中の日本であり、世界の中の日本でやっていくという視点が、ますます大切になると思うのです。実際、欧米などの動きはすぐに日本に影響を与えるので、行政にも速やかに情報発信していくことも必要です。
坪内 行政といえば、コミュニケーション推進専門委員会はいかがでしょうか。
佐藤 対行政への情報発信は、定常的には『クリーンエイジ』とホームページだけですね。これだけでもかなり豊富な情報を発信はしているはずなのですが、効率的に活用されているかどうかわからないところもあります。
 地方行政や消費者センターなどから問い合わせがあったり、間違った理解のままことが運ばれるような場合、現地へ出かけていって説明し情報提供しています。
原田 200号を迎えた『クリーンエイジ』は、書き方として消費者視点を重視していますよね。この間の連載「お茶の間の目線」などは、歴史も語られていますし、身近な話をもっと膨らませ展開していくのも興味を持って読んでいただくためのポイントでしょう。
 ホームページを通しての情報提供も徐々にですが効果を発揮しています。先だって、工業会のホームページをみたという、関東のあるコープの方から、非常にわかりやすかったのでぜひ学習会で話をしてくれ、という声がかかりました。これもwebがなかった時代では考えられなかったことです。
佐藤 生協でお話ししたときは、「われわれの工業会には石鹸メーカーは何社もあるんですよ、だから決して石鹸を否定する立場ではないんですよ、ただし石鹸にはこういう特性があって洗浄力ではこういう違いがあります」というようなことから説明しているんです。
 実にまどろっこしいけど、石鹸だけを勧める人は、洗剤の事実とは違うことをいうので、どうしてもそこから始めざるを得ない...。
聳城 いまだに、漠然と「洗剤はあぶない環境を汚している」というようなイメージをもたれている方も多いから、それらに向けて「そうじゃないんですよ」ということをしっかりとわかりやすく説明することですね。悪い情報はいくらでもネット上を駆け巡るから、そうじゃないんですよといってもそっちの方はかき消されてしまうが、やはり言い続けていかなければならないでしょう。
原田 関西地方のある市では「カイワレ大根に合成洗剤をかけると発芽しない、そこが気付きになった」というようなことが洗剤使用に反対するパンフレットに書かれている。そういった科学的にゆがめられた情報には、ひとつひとつ対応していかなければなりませんしね。
鈴木 そういうのは一部なんだろうけれど、あいかわらずなんですね。確かに「発芽しない」という事実はあるのです。それを、洗剤が毒だから発芽しないという間違った結論に意図的に誘導している。そうではなくて、それは浸透圧の問題ですよ、とそこまで踏み込んだ情報を提示していく必要がありますね。
神田 最近のことですが、経団連ではたとえば富栄養化のメカニズムをもっとちゃんと研究検証すべきであるという提言をしている。すぐリンの影響と結びつけるけれども、ほんとにそうなのかという問題提起ですね。
日生下 リン規制をやった効果についてももっと検証すべきである、ということですね。中国でも、WTO加盟の結果、別にデータがあるわけではないのですが、世の中がそうだし日本も無リン化だからということで、行政がリン規制に動き出しているということはあるのです。
鈴木 われわれの業界にとっては古い話、もうとうに解決して済んだ話のようだけれども、無リン化されているからわれわれは関係ないというんじゃなくて、環境に存在する物質の一つとしてリンとは何かどうとらえるべきか、といった基本的なところから理解してもらうことが必要で、化学物質をわかってもらうにはそういう情報もあってもいいんですね。
坪内 これからは化学物質への関心がますます高まっていくのではないかと思われます。
 化学物質のひとつとして石鹸・洗剤を有効にそして適正に使用していく意味でも、工業会の各委員会・専門委員会で協力して、今後もみなさんに役立つ情報提供を心がけていきたいものですね。
2004年12月15日


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