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2004年6月15日更新
01.*CLEAN AGE 198号 *目次へ 
参照カテゴリ> #02.規則 


いわゆるPRTR法(化学物質管理促進法)とは いったいどんな法律か
指定された界面活性剤4種の管理とそのリスク評価
★そもそもPRTR法とはどういう法律か
 この法律の概要は、「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」というその正式名称と、第一条「目的」の条文に集約されています。化学物質管理を、国際的協調に基づいて、科学的知見と化学物質の製造、使用その他の取扱い状況を踏まえて、事業者・国民の理解のもとに、環境への排出量等を把握し、情報提供と自主的な管理の改善を促進し、環境保全上の支障を未然に防止しよう、というものです。平成13年から施行されているこの通称PRTR(Pollutant Release and Transfer Register)法は、“…しなさい・…してはいけない”というこれまでの法律とは基本的に異なり、事業者等の自主的な管理の改善を促し、広く国民の認識の浸透を期待している、という大きな特徴があります。
 これまでの日本の法律にはめずらしく、広い分野にわたって網羅的に網をかけたのもこの法律の特徴です。



★そういう法律が必要になったわけは
 いまやわたしたちの社会や暮らしは、生活の隅々にまでさまざまな化学物質を使用することによって恩恵を受けています。しかし、目に見えない化学物質は、その管理や取扱にも細心の注意が必要なことはもちろん、ひとつ間違えば人間の健康や環境に影響を与えるという危険性もないとはいえません。
 ところが、いったいどんな化学物質が、どこでどれだけ、どのように使われているのかさえわからないというのが現実だったのです。1984年インドで殺虫剤工場が爆発を起こしたのに続いて、アメリカでも化学工場で化学物質の漏出事故があり、これらのことをきっかけに、とにかく化学物質の広がりの状況を把握しなければならないという国際的な機運が高まったのです。1992年には国連環境開発会議で「アジェンダ21:持続可能な発展のための人類の行動計画」が採択され、そのなかで“有害化学物質の環境上適切な管理”が求められることになりました。
 これ以降、国際的な合意のもとにいろいろな形で化学物質の取扱いについて検討され、各国でいろいろな制度ができていますが、日本のPRTR制度もそのひとつなのです。

★指定化学物質とはなにか
 流通しているだけで数万種もあるといわれる化学物質のすべてを把握するには大変な困難がともないます。そこでまず、人への影響・環境への影響からみて、ある一定以上の有害のおそれがあるなどの性状をもつと認められる物質が指定されました。法律の対象となる「第一種指定化学物質」としては、年間の生産・輸入量が100トン以上のものなど、環境中に広く存在が認められる354の物質が指定されました。それほど広く存在していない(年間の生産・輸入量が1トン以上)が、今後のために数値を把握しておく必要があるものは「第二種指定化学物質」として81物質が指定されています。
 指定の理由は、発癌性が高いもの、こどもへの影響が懸念されるもの、毒性全体が高いもの、環境中の生物に対して毒性が強いものなど、物質によっていろいろ有害性(ハザード)の種類が異なります。

★事業者にはどんな義務が課せられるか
 指定された化学物質を製造したり、原材料として使用したりして取扱う者のうち、一定の業種や要件に該当する者は、この法律の対象事業者となります。
 事業者は、対象化学物質をどのくらい環境に出しているかその排出量と、廃棄物に含まれて事業所の外に移動する移動量を事業所ごとに把握し、それを毎年都道府県を通じて国に届け出る義務があります。
 環境に出している排出量には、大気に蒸散しているもの、埋立や土壌に浸透しているもの、排水に含まれ河川等に流出しているものの三種が想定されています。公共下水道に流れるもの、廃棄物として搬出処理されるものは、移動量となります。
 製品として出荷されるものは、届出の対象にはなりません。これは別途、国が独自に推定して把握します。もちろん、排出量を把握報告すればそれでいいという問題ではありません。なによりも法の精神に基づき、自主的な総合管理を促進しなければならないのです。



★「ハザード」とは「リスク」とは
 PRTR法では多くの化学物質が指定されていますが、その選定基準は物質毎ではなく、人への影響や環境への影響濃度等の項目の基準で決められます。一方、4種類の界面活性剤が指定されたハザードの種類は、魚類や藻類など水生生物の生育への影響であり、人への影響ではありません。このように指定の判断項目がたくさんあるので、「有害性」という一言ですべてくくられてしまうと、誤解も生じやすいのです。
 そもそも“無害な物質”というものはどこにもないのです。どんな物質でも、使い方によっては有害になるという性質があります。こういった、そのものが潜在的にもつ有害性を“ハザード”といいます。そして、それにより人や環境に対して好ましくない影響を生じる可能性や確率を“リスク”といいます。
 たとえば、夜間停車中の自動車が点滅させるハザードランプは、ここにハザードがあるよと後続車に知らせて、あらかじめリスクを避けようというものです。
 ハザードとリスクを混同しては、正しい理解は得られません。

★ハザードとリスクを取り持つのが暴露量
 

 どのくらいの量が環境中に存在しているかや、製品使用時に人にどのくらい吸収されるかという暴露量の推定をまずします。次に、これと人への安全性や動植物などへ危険を与えない量とを比較することで、いまの現状がどうなのか、影響が出ているのかいないのか、それを判定し評価するのがリスクアセスメントです。
 まず排出量から把握しようというPRTR法も、事業者の自主的な総合管理という表現で、管理を改善するときの手順のひとつとして、それを期待しているものと理解されます。方法論としては、まずどんなハザードをもつか、それが発現する量がどのくらいかの確認が必要です。もう一つの柱である暴露は、環境分布の予測をすることです。これは排出量を使っていろんなシミュレーションモデルで試算したり、実地にモニタリング調査することなどにより推測できます。




★界面活性剤のリスク評価は
 PRTR法によって、排出量などのデータが報告され公開されることは、世界的に協力して地球環境を守るという大きな目標に向けての小さな一歩と位置づけられます。単に排出量が多いとか少ないとかいうだけでなく、有害性と暴露をみてそれをリスクに落とし込んで判断するというリスク評価と連動させて考えなければなりません。
 指定物質のなかでも、界面活性剤ほどデータがそろっている物質は稀といってもいいでしょう。60年代に安全性の問題が提起されたこともあって、かねてから長年にわたってさまざま研究調査が重ねられてきており、環境中の界面活性剤成分についても当工業会独自にモニタリングやシミュレーションも積み重ねてきました。その上で実測値(環境濃度)も毎年発表しています。リスク評価については機会を改めてくわしくお知らせする予定ですが、4種の界面活性剤の環境濃度は、上の表のように環境への影響がないとされている最大許容濃度よりもさらに低く、環境水域での生態リスクは小さいことがわかっています。
 日本石鹸洗剤工業会では、法の精神にそっていっそうの努力を続けてまいります。

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