日本石鹸洗剤工業会(JSDA)
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2003年6月16日更新
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参照カテゴリ> #02.調査研究 


数理モデルによる環境濃度予測手法を活用
洗剤成分の環境濃度をよりよく把握するために
日本石鹸洗剤工業会は、洗剤成分の生態リスク評価を行なうために、河川中の界面活性剤濃度の実態調査をしています。多摩川などの4つの都市河川を対象にして、7か所から年間4回ずつ採取した河川水を分析しており、洗剤成分の実態把握に大変役立っています。
この実態調査の妥当性の検証と調査対象にしていない河川の実態推定のために、洗剤成分の環境濃度を予測する数理モデルを利用したシミュレーションプログラムを生態リスク評価に活用しています。

◆洗剤成分の環境影響は?
◆モニタリング調査とモデル予測
◆日本の都市型河川の代表の姿を

◆洗剤成分の環境影響は?
洗剤に含まれる界面活性剤成分が、環境によくない影響を与えるのではないか、というご心配をお持ちの方々もいます。石洗工では、下水処理や生分解によって、環境に影響を及ぼすおそれがあると考えられる濃度より低い値であることを確認しました。しかし、その懸念や問題提起も、またその問題解決のためにも、常に継続して現在の河川などの環境中に洗剤の成分がどの程度含まれているのかが正確に把握されていることが必要です。まず、実態はどうなのか、そこからすべて始まらなければなりません。
確かに洗剤成分は使用後、家庭排水に含まれて排出されます。では、河川などの環境に到達したときにいったいどの程度であれば環境影響があると懸念されるのか。信頼性のあるひとつの目安として、魚などの水生生物に対してなんらかの影響を及ぼすおそれがないと判断される濃度として、代表的洗剤成分のひとつであるLASでは、1リットルあたり0.25ミリグラムという数字が発表されています。
一方、実際に河川中でどの程度の洗剤成分があるかを調査するために、一般に行なわれているのは、川や湖の水を汲んできて、そのなかに界面活性剤成分がどれだけあるかを分析する方法で、これを「環境モニタリング」といっています。行政などの機関がそれぞれの立場から環境モニタリングを実施していますが、多くの場合BODのようなごく一般的な水質や農薬・有機塩素系化合物などについてで、洗剤成分が調査の対象にされることは少ないのです。洗剤成分を対象にした場合でも、分析法があまり適切でなかったり、データが古かったり、調査期間が限られていたり、といったことで最新の実態が的確につかめない状況でした。
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◆モニタリング調査とモデル予測
そこで、当工業会としては、まず洗剤成分の環境影響の実状を正しく把握するという目的から、環境保全水環境影響評価ワーキング・グループ(現在の環境委員会環境・安全専門委員会)の活動としてモニタリング調査を1994年からはじめ、毎年継続しています。その結果は、毎年の『環境年報』に公表し、各方面からも評価されてきました。昨年度、当工業会の環境モニタリングは、多摩川・荒川・江戸川・淀川の4河川7か所で年4回、LASやAEなどの洗剤の界面活性剤について調査を行なっています。
一方、1995年頃、環境・安全専門委員会のメンバーのひとりでもある山本昭子氏ほかのP&G研究者グループが、日本の河川での洗剤成分の環境影響を予測するシミュレーションプログラムを、多摩川を対象として開発しました。当工業会環境委員会では、このモデルの提供を受け、生態リスク評価に応用してきました。
 このモデルに着目したのは、すでにLASについて先行して着手していたモニタリングの信頼性の検証に、シミュレーション手法が有効だと考えたためでした。また、モニタリングでは、日本中の主要な川すべてを調査対象とすることはできません。それを補完するためにも、信頼性の高い濃度予測手法が必要ではないか、と考えるようになったわけです。モニタリングの対象にしていない洗剤成分についても、予測濃度を出せるので大変有用だと考え、さらにこのモデルの精度を高める研究も行ないました。1999〜2000年頃からLASやAEでの検討を行ない、有力な手法であることが実証されました。

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◆日本の都市型河川の代表の姿を
このモデルで対象としている多摩川という川は、「タマちゃん」を持ち出して説明するまでもない有名な川で、日本の各地にある都市型河川の代表的なモデルといえます。流域には住宅地が多く、下水処理水・未処理水あわせて家庭排水が毎日流れ込んでおり、しかも上流では飲料水も取水しています。
洗剤成分が各家庭から排出され環境に出たあとに、河川を流れて海に達するまでに、どこでどう分解してどの程度減ってどのような運命をたどるか、そしてどの程度環境中に残っているのかを、関連データを入力し、奥多摩湖から東京湾まで約90キロを1キロごとに区切った地点で環境濃度を予測しようというのが、このモデルです。他の濃度予測モデルと区別しやすいように、「多摩川モデル」の通称を使うこともありますが、その予測結果は必ずしも多摩川だけでなく、日本の都市河川の状況をあらわしていると考えられます。
その状態をシミュレーション計算するためには、多摩川の流速や流量、人口分布、一人一日あたりのLAS使用量、地域ごとの下水道処理普及状況、下水処理場で処理される排水量と未処理排水の数値、LASの分解速度など、さまざまな基礎データが必要です。東京都と神奈川県の境を流れ、両岸の大小さまざまな支流が各市町村にまたがるため、基礎データを集めるのは管轄が違う行政窓口を一つ一つ尋ねて、データをまとめるという困難な作業になりました。
工業会の環境モニタリングの結果は、このモデル予測濃度と比較的よく一致していました。モニタリングのデータが水環境の代表的な状態を測定していることが検証でき、リスク評価の信頼性を裏付けたといえます。環境モニタリングを実施したうえに、シミュレーションプログラムで確かめたという調査の例は世界的に見てもめずらしいケースです。
実際には、LASなどの洗剤成分は、これまでの環境モニタリングで確認されているように、下水処理施設によって99%近く除去されていますし、未処理水として排出される場合でも、微生物による生分解や希釈などにより濃度が低下します。日本の代表的河川でのLAS濃度は、魚などの水生生物への影響が心配される濃度よりも低い数値であることが、このシミュレーションの結果でも示されています。


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