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2002年12月15日更新
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ついに"日本一汚れた湖沼"の汚名は返上!?
千葉県手賀沼・印旛沼の水質浄化努力

実はワーストランキングの常連だった
実は湖沼の汚れの原因は「人間」…
実は生活雑排水が一番の問題
実は利根川からパイプで注水しました…
実はリン除去にもさまざまな取り組みが…

千葉県我孫子市・柏市 手賀沼大橋周辺
(c) 千葉県 東葛飾土木事務所 提供 
実はワーストランキングの常連だった
利根川を北に接して広がる北総台地は、標高30〜50メートル程度の起伏が、東西約100キロ近くにもわたって続く、日本でも他ではあまり見られない広々とした独特の風景を展開しています。かつて太古には霞ヶ浦とつながっていて、同じ海跡湖としての歴史を辿りながら離れ離れになって残った手賀沼と印旛沼は、ともにその半分を干拓で狭められながら、今はこの台地に拡大する首都圏の縁辺として急速な都市化の波のなかに埋没するかのようにも見えます。
例年の湖沼水質調査では、この手賀沼と印旛沼はワースト・ランキングの常連でした。平成9年度にいたっては、ついに手賀沼と印旛沼がワン・ツウ・フィニッシュを決めてしまうという不名誉な事態に、千葉県の対策もいっそう拍車がかかり、地元の周辺流域圏市町村が連絡会議をつくり、湖沼水質保全計画のなかでさまざまな方策をとるとともに、新しい試みも積極的に取り入れてきました。
印旛沼では、もともと国の事業として利水・治水・環境保全という柱で利根川印旛沼総合開発事業計画を進めていたものの、近年では利水の必要性がなくなったため、総合開発事業は平成12年から中止になり、その後をうけて千葉県が手賀沼と並行して管理に乗り出したところです。手賀沼と印旛沼では、少し事情が異なりますが、ここでは手賀沼を中心に、水質浄化の努力をみてみましょう。
実は湖沼の汚れの原因は「人間」…
手賀沼の水質は、昭和50年代に入って急激に悪化し、一番悪いときで54年度にはCOD27(mg/l)を記録していました。それから徐々に改善傾向にむかうものの、平成7年度のCOD年平均は24とまた悪くなり、平成12年度には再び14まで下がってきました。
そもそも湖沼の汚れは、人間がそこにどう関わっているかで決まるもので、湖や沼のせいではないのです。ちなみに湖沼水質のベスト・ワンは、周囲をすべて自然に囲まれた北海道の支笏湖で、COD年平均0.7です。これと、まったく同じ基準で比較するのも、周辺の田畑がどんどん宅地化し首都圏のベッドタウンになってきた手賀沼には気の毒というものです。
この手賀沼のCODの経年変化に、なにか明確な原因や背景がないかを探る試みもありました。結局、はっきりとした原因を求めることはできませんでした。ただ、間違いなく言えることは、周辺の宅地化、人口増といった水質を悪化させるマイナス要因と、下水道や合併処理浄化槽整備といった水質を浄化して排水するプラス要因のせめぎあいの結果として、COD経年グラフに表れているということでしょう。

つまるところ、人間が水を汚し、それを河川や湖沼に流していることが、水質汚濁の根本問題なのですが、それは排出負荷量を発生源別にみると、より明らかになります。

実は生活雑排水が一番の問題
手賀沼の場合、COD排出負荷量は一日あたり4.4トンと計算されていて、その内訳は家庭からの生活雑排水の占める割合が62%、市街地や農地などからの自然排出が32%、工場からの排水が6%、となっています。これは、あくまでも周辺の土地利用形態や、人口など各種データを元に負荷の原単位を積算する方式で試算されたものです。なぜなら、場所が変われば変わる、季節により変わる、降水量が変われば変わるもので、その値はずばりとはいえないし、実測はできないものだからです。環境省ではこの計算の基準として、統一原単位を示しており、これによって推計されたものです。
そういうわけで、一番大きな影響を与えている生活雑排水の内訳は詳細にはわからないのですが、一般に家庭から排出される台所、お風呂、洗濯、トイレなどの排水もすべて生活雑排水です。したがって、公共下水道が完備されていれば、これらはすべて下水処理の過程で浄化されたうえで、汚物は最終処理され、きれいな水になって自然界に排出されているので問題はありません。千葉県全域の公共下水道普及率は58%で全国平均の62%には及ばないものの、手賀沼の指定地域内だけでみると約73%と、決して低いという数字ではありません。
にもかかわらず、「日本一汚れている湖沼」という汚名を27年間もかぶらざるを得なかったのは、やはり下水道につながっていない生活雑排水が相当量あったということでしょう。下水道未普及地域の対策としては、合併処理浄化槽の普及がありますが、単独浄化槽から合併処理への切り替えが思うように進まないこと、生活や事業からでる汚水を直接雨水排水口に流し込んでしまうケースや、下水道エリアに入ってもつながないケースもあるということです。
それになによりも、市街化が急速に進んだ結果として自然系負荷や産業系負荷も増え、これまで森や林だった丘陵が住宅地になるということは、負荷を減らす要因だったものが逆に増やす方になってしまうわけで、そのバランスがとれなくなったためといえます。

←利根川からの水を手賀沼に注水する

←ビオトープ
自然の植生で浄化をはかる

実は利根川からパイプで注水しました…
その手賀沼も、今年の水質ランキングからはやっとワースト・ワンの定位置を静岡県の佐鳴湖に明け渡すことができました。それには、平成12年から国土交通省が進めてきた北千葉導水路の効果が大きいといわれています。これは、利根川の水を印西市からポンプでくみ上げ、地中に埋設した直径3.2メートルのパイプで10キロ以上離れた柏市まで運び、手賀沼に注水しているものです。この事業はそれだけが目的ではないのですが、平成13年には合計で1億4000万トン(東京ドーム113倍分)の水を注水し、結果として手賀沼を掃除しているその効果が大きいとされています。
口の悪い向きは、「ただ薄めただけじゃないか」といいますが、それもこれも含めて浄化の努力が、少しずつ表れてきつつあると考えて、なにはともあれさらに努力を続けるしかないのでしょう。
もちろんただ薄めるだけでなく、千葉県では排水の浄化対策としていくつかの特徴的な事業も展開してきました。
実はリン除去にもさまざまな取り組みが…
手賀沼に流れ込む二つの川、大堀川と大津川について、それぞれ下水道未整備を補完する対策として浄化施設を設けています。これは、川を一時的にゴムを膨らませて堰き止めて取水し、それをプラスチックや小石の濾過材を敷いた水路の中を通すことで浮遊する汚れ物質を付着させ、バクテリアによる分解を促進するばっ気方式で水きれいにして再び川に戻す、というものです。この二つの川の流域人口は手賀沼流域全体の85%以上を占めるため、下水道普及がもっと進むまでの苦肉の策ともいえます。
また、富栄養化が進み、しばしばアオコが発生して汚濁の内部生産の原因となっていたので、その対策として流入するリン分を減らさなければなりません。リンは洗剤には使われていなくても、日常の台所の調理や後始末排水、食べかすや肥料には多く含まれています。全リンの環境基準値は0.1ですが、手賀沼のそれは0.26です。家庭雑排水が多く流れ込んでくるところとみられる大津川の支流逆井には、平成12年度からリン除去施設が設けられました。
これは、ポリ塩化アルミニウムの凝集剤によって汚れを集めて、砂濾過を通して浄化する方式で、リンは80%除去されるそうですが、全国でもまだめずらしい施設です。
そのほか、ホテイアオイの投入・回収によるリンの除去、汚れのひどい初期雨水の一定量だけをカットして下水処理場に回すモデル事業、側条施肥などの環境にやさしい農業の推進、沼の西部の澱んでいるところの底泥を重点的に浚渫する、沼の周辺に植生を根付かせ自然浄化を促進するビオトープなどなど、総合的な対策がとられていて、その効果も徐々にあがることが期待されています。
家庭雑排水の対策は、一人一人の住民の意識から啓発していかなければなりません。一般的な注意として、PRに努めていることは、台所の流しにはストレーナー、調理くずは土に埋める、油を流さないようにする、浄化槽を点検管理、ディスポーザーは使わない、お米の研ぎ汁はとくに影響が大きいので流さないようにする、洗剤は適正量を使うこと、などです。
この周辺市町村には、相変わらず「洗剤を石鹸に替えましょう」とうたったり、すでに一般市場にはないのに「有リン洗剤の使用をやめましょう」をスローガンにしているところもありますが、すでに洗剤の使用が湖沼の汚濁の直接原因ではないということは、県レベルでは正しいご理解をいただいているのです。

底泥の浚渫も沼の汚れのひどい西部に限定して拡散しないように→



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