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2002年9月17日更新
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海を水田にした児島湖のかかえる問題
洗剤指定まで盛り込んだ環境保全条例制定から10年


児島湖締切堤防と、「家庭でできる水質浄化」をPRしている岡山県生活環境部のパンフレット、シール。

岡山県児島湖も、湖沼水質保全特別措置法に基づく第四期の湖沼水質保全計画を、この3月に策定したところです。実はこのシリーズで、前々回とりあげたびわ湖、前回の霞ヶ浦、今回の児島湖、そして手賀沼、印旛沼は、いずれも昭和60年度に指定湖沼となって以来、ほぼ同様に三期15年にわたって、水質保全の総合対策を進めてきていた閉鎖性水域です。
近年では、シアンやカドミウムのような有害物質が工場排水に漏れるといった汚染事故が減ったのに対して、先のびわ湖、霞ヶ浦の例にみるとおり、BOD(生物化学的酸素要求量)やCOD(化学的酸素要求量)を指標とする有機汚濁は、なかなか目に見えて改善されるということはないようです。
もちろん「百年河清を待つ」わけではなく、児島湖でもまず周辺の下水道等の生活排水処理施設の整備を柱にしつつ、きめ細かな対策をとっていますが、水質数値で見る限り十分に効果が上がっているとは、残念ながらいえません。
 
古代から多島海が広がって吉備の穴海といわれたこのあたりは、中国山地のたたら製鉄で山が荒れ、河川の堆積が促進されたといわれています。児島湾の干拓のきっかけは、歴史に有名な秀吉の備中高松城水攻めにあったといいます。その堤防づくりの技術を活かし、1585年宇喜多秀家が倉敷に「宇喜多土手」をつくったのが、長い長い干拓の歴史の始まりでした。
江戸時代に本格化した干拓による新田開発は、広大な水田をうみ、児島を陸続きにしたのです。明治以後も士族の授産事業として続き、戦後は国営事業として引き継がれ、昭和38年に一応工事は完了しています。
干拓の歴史は、常に農業用地の確保にその目的がありました。海を堤防で締め切り、その内側を水位調節しながら干して農地にしてきたのが、岡山から倉敷にかけての南側一帯です。わずかに東西にのびる細長い湾になって残った児島の海は、いま締切堤防で仕切られた西の一部がこうした農業用水の調整池となり、児島湖と呼ばれているのです。
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ところが、干拓地内でもだんだんと都市化してきた結果、児島湖の水質汚濁が進み、昭和40年代終わり頃から閉鎖性水域の富栄養化問題がクローズアップされることになります。平成3年の児島湖環境保全条例制定のときにはまだ、洗剤が環境を汚しているという一部の誤った主張が力を得ていたこともあって、「環境にやさしい洗剤を県が指定する。洗剤に課徴金も」という話までもあったのですが、その後は「汚染源が洗剤などではないこと、水質汚染に共通する課題は単純ではないが、対策はなにより下水道整備にあること」といった当工業会の説明などもご理解いただき、実際にはそのようなことは起きませんでした。岡山県では、現在も河川中の界面活性剤の測定は行なっていないそうです。
そんな経緯まであった児島湖の水質は、昭和49年以来の経年推移で常に9〜11であった年平均CODが、平成12年は8.2と若干減少傾向がうかがえるものの、全窒素(T−N)が1.5〜2.0で、全リン(T−P)が0.17〜0.31で推移し、全体としてみるとはかばかしく改善されているとはいえないのが現状です。流入河川の水質と、内部生産と両方にその原因は求められます。流域河川の中流部・上流部ではほぼ環境基準数値前後ですが、干拓地内・児島湖内になると高く、堤防を越えて湾にでるとだんだんと低くなっています。
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児島湖の水深は非常に浅くて、農業用水を利用する灌漑期では平均2.1メートル、非灌漑期では1.8メートルしかありません。いちばん深いところで9メートルといわれていますが、最近の実測データがないので実際はもっと浅いそうです。浅いと水温が高くなるので植物プランクトンの増加も早く、泥が溜まりやすく汚染の原因になるので、平成4年からは浚渫作業を続けています。落差がない干拓地では、用水路か排水路かもわからない、時期によって逆流もします。締切堤防は児島湖と児島湾の水位差を利用して排水し、逆に湾側が高くなると締め切るという操作を24時間行なっています。
他の地域でよく行なわれている葦原の植裁も、自然に水が流れていれば、植物を植えることも効果があるのでしょう。コンクリート護岸や水路に囲まれ、ポンプで常に水を移動させなくてはならない干拓地では、葦の刈り取り作業が現場の形状から困難と、この考え方を根本的に改めざるを得ませんでした。
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汚濁負荷の発生源は、CODでは生活系排水が約49%、あとは自然系22%、産業系16%と、その割合にはあまり変動がありません。生活排水対策として、各家庭へのPRもしていますが、やはり根本対策は下水道処理です。岡山県自体まだ下水道普及率が全国平均に届かず、岡山市が半分強を占める児島湖流域でも50%、これを超えると水質にもいい影響があると期待されています。
流域浄水事務所の下水処理水はCOD6mg/Lと、高度処理をした結果かなりきれいになっています。家庭排水による汚濁防止のためには、合併処理浄化槽も高度処理型の普及に力を入れ、広く地域住民の協力を得るため河川の里親制度を取り入れようとしています。
自然の姿に人間が手を加え、海を水田にしたのは大事業でしたが、環境という宿題には手をつけてはいるものの、いまだ正解が出せないでいる児島湖の悩みは、しばらく続きそうです。


浚渫(しゅんせつ)した泥は、湖畔にパイプで運ばれて乾燥処理される



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