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2002年4月1日更新
01.*CLEAN AGE 189号 *目次へ 
参照カテゴリ> #02.調査研究 


リスクとハザードってなんですか?
化学物質管理促進法を理解するために---その1
- - - - 最近「リスクとハザード」という言葉をよく見聞きするようになったように思いますが、これはどうしてですか?
化学物質の環境や人の健康に対する影響を考える際、これまでは化学物質の毒性の大きさだけで議論されることが多かったわけですが、最近では、化学物質が本来もっている毒性や引火性等の有害性の大きさとその化学物質を使うことによってどの程度、その有害性が現実のものとなって現れるかといった可能性の大きさの両方を評価することが必要と考えられるようになったからです。
ここで、化学物質が本来持っている潜在的な有害性または物質固有の有害性のことを「ハザード」と言い、この「ハザード」が実際の影響として現れる可能性、または確率を「リスク」と言います。したがって、リスクは、「ハザード」が実際に生ずるかも知れない可能性(確率)とも言えます。こうした考え方の重要性は、たとえば、化学物質が環境に排出された時の影響の度合いをどのように見るかという、次のような例で見るとわかりやすいと思います。
つまり、化学物質が環境に排出される場合、排出される量、排出された後で処理されるか否か、環境中での微生物による分解の程度、土壌等への吸着、光による分解の可能性、さらには大気中での挙動等、と条件がいろいろ変わる可能性があり、こうした要因を加味して化学物質のハザードがどの程度現実のものとなって現れ、環境生物に影響を及ぼすかといった可能性(リスク)の大小を探ることが如何に大切かを考えると理解しやすいのではないでしょうか。
- - - - わたしたちがよく知っている「ハザード」には、自動車のハザードランプとかゴルフのハザードがありますが…。
そうですね、ハザードランプは、夜間など駐停車する車が点滅させているランプで、これは、ほかの車に「ここに車が止まっているよ! ここに危険物、ハザードがあるよ!」と知らせているわけです。それをみたほかの運転者は「この運転を続けていけば、あれにぶつかるかどうか?」というリスクを考え、それを避けるために、たとえばハンドルを切る、スピードを落とすといった対策を立てて行動するわけです。
ゴルフでいうと、池やバンカーというハザードがありますね。ハザードに落ちるとペナルティが生じ、スコアが悪くなる危険性が高くなると同時に心理的な不安が高くなるというリスクも生じます。
- - - - 人間や環境に危険な影響のある有害物質は、いっさい使わないようにすればいいと思いますが、それはできないのですか?
なにをもって「有害」とするかということですが、それをいうならまず「無害な物質はあり得ない」ということから認識しなければなりませんね。
たとえば、食塩は一般には安全だと思われています。では、まったく無害かといえば大量に摂取すれば腎臓障害を起こしたり、場合によっては死亡の危険もあり得ます。砂糖にしても、糖尿病の患者さんたちのように摂取に注意しなければならない人はたくさんいます。しかし、そのことをもって、塩や砂糖そのものをいっさい使わないようにしようという人は誰もいません。
- - - - 洗剤に使われている界面活性剤も、なにか化学物質規制の法律対象になったと聞きましたが、安全性に問題はないのですか?
化学物質は、その種類によって毒性の大きいものから小さいものまでいろいろあります。2001年4月から施行された「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」通称:化学物質管理促進法で、対象に指定された物質は全部で435種類あります。そのなかに、現在洗剤類に広く用いられている4種の界面活性剤(LAS、AE、AO、DHTDMAC)も含まれています。
これらの界面活性剤が指定化学物質とされたのは、後でも述べますが、使用量が多いことと、一定の生態毒性があること、さらには環境水系中の一部でこれらの界面活性剤が検出されるためです。しかし、これらの界面活性剤の安全性については、これまで多くの検討がおこなわれ、人や環境生態系に対する安全性が十分確認されており、問題があるというわけではありません。
- - - - それならば、どうしてその法律で、わざわざ界面活性剤が指定物質にあげられることになったのですか?
今回、この法律で界面活性剤が指定された理由は、先程も申しあげたように、ハザード(生態毒性データ)が一定の大きさであることと使用量(年間100トン以上の使用量基準)の多さ、さらには環境中でこれらの界面活性剤が検出されるという理由からです。
確かに、界面活性剤は毎日家庭から流しているもので、下水道普及率も100%ではないし、環境水系中でこれらの界面活性剤が検出されるのは事実です。しかし、その検出濃度は、魚や藻などの水生生物を使った試験で求めた許容濃度と比較しても、十分低いレベルなのです。これらの指定された界面活性剤は、下水処理場や、河川水中の微生物によって生分解して除去されるのですが、どうもこのことは、今回の法律による指定にあたっては考慮されていないようです。
もちろん、界面活性剤を使用する事業者には、これらの化学物質を確実に管理して、環境への排出を削減する努力を払う義務があり、これらの指定化学物質の大気や環境水系への排出量や移動量を、届け出ることになっています。その結果は物質ごとに集計され、2002 年には公表されます。
日本石鹸洗剤工業会のワーキンググループでは、昨年この界面活性剤4種についての最新のリスク評価をおこない、その結果を、「界面活性剤のヒト健康影響および環境影響に関するリスク評価報告書」としてまとめました。これは、人間と環境生態系双方へ界面活性剤がおよぼす可能性のあるリスクを緻密に検証評価したものです。その結果、魚にも人にもいずれに対しても界面活性剤のリスクは極めて小さいことが、改めて科学的に確認されました。


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