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2001年12月28日更新
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Mother Lake びわ湖の滋賀県では、いま…
「せっけん運動」にも転機。「合成洗剤は×」から「適正使用」へ。

“Mother Lake びわ湖。預かっているのは滋賀県です。”…こんなCMがテレビから流れてきます。
滋賀県全域の6分の1を占めている日本一の閉鎖性水域びわ湖は、もちろん大きな宝物であり県の象徴です。このびわ湖は、歴史的にみれば石鹸洗剤業界にとっても大きな教訓をもたらした場所でもありました。

■今から20数年前の話…びわ湖条例制定
■業界の対応とその後
■びわ湖会議の歴史的方針転換


■今から20数年前の話…びわ湖条例制定
かつて1970年代の初め頃から、藻や赤潮の大発生が生じたびわ湖では、富栄養化による水質汚染が問題視されていましたが、その原因がリン分を含んだ合成洗剤にあるとされました。1978年から滋賀県下で『有リン合成洗剤を買わない、売らない、贈らない』住民運動が起こり、これに呼応した行政も「合成洗剤の使用制限及び粉せっけんの使用推進」を打ち出すと共に、「びわ湖を守る粉石けん使用推進県民運動県連絡会議(せっけん会議=のちにびわ湖会議)」が発足、大規模な県民運動が展開されることになったのです。
その結果、1979年には「有リン合成洗剤の店頭販売禁止・消費者の不使用の責務・贈答品としない責務」を盛り込んだ「滋賀県琵琶湖の富栄養化の防止に関する条例」が成立しました。
この滋賀県の動きは、当然石鹸洗剤業界にとっては肯定しがたいものでした。業界では当時湖水の富栄養化の原因を一方的に有リン家庭用合成洗剤にあるとすることの問題点を踏まえ、県知事に対しても提言を行ないました。つまり、富栄養化の原因の一つとされるリン分のうち、合成洗剤の影響度は10%程度に過ぎないと推定されること、むしろ農業用肥料や下水道施設のない地域の生活雑排水を問題にしなければ解決しないことなどを、科学的なデータを示して訴えました。条例制定にあたっては、県民意思形成の問題点、規制の公正さに関する問題点、科学的問題点をあげて反論しました。



■業界の対応とその後
その一方で、環境影響負荷を総合的になくする努力は怠ってはならないという考えから、自主的な対策を進めました。まず、当面の措置としてリン分10%の自主規制を行なう一方で、ヨーロッパに水質問題調査団を派遣し、抜本対策の研究を業界あげて推進しました。また、リン分を合成洗剤から完全に除去した無リン合成洗剤への道を選択し、82年には6割、84年には9割と、急速に切り換えが進行したのです。しかし、無リン化後の滋賀県の調査でも、びわ湖の水質が改善されたとはいえませんでした。工業会が3年がかりで実施し84年に発表したびわ湖における合成洗剤環境影響調査でも、LASの影響は認められなかったという結果がでています。
にもかかわらず、滋賀県の影響は全国的に波及し、折からの“非科学的な合成洗剤有害論”とあいまって「合成洗剤追放」という動きが吹き荒れたのです。滋賀県のせっけん運動の柱は、完全無リン化後も(条例で規制が必要とした対象は有リン合成洗剤であったのに)長い間『合成洗剤を使わない・粉せっけんを推進』だったのです。
びわ湖条例施行直後の80年に滋賀県が行なった県民意識調査では、「粉せっけんのみ70.6%、粉せっけんと無リン合成洗剤の両方17.9%、無リン合成洗剤のみ7.3%、わからない4.2%」という全県的な盛り上がりを示していました。近年の県民意識調査では、「主に粉せっけん30%前後、粉せっけんと合成洗剤の両方25%前後、主に合成洗剤のみ40%前後」で推移しています。



■びわ湖会議の歴史的方針転換
98年に20周年を迎えた滋賀県のびわ湖会議では、これを契機として、もっと運動全体が変わっていかなければならない、という問題意識が芽生えたようです。それから2年間、各方面からの情報収集活動に力を入れ、当工業会でも製品の現状や環境影響評価結果などの面での情報提供を続けました。
そういう経過を経て、2000年にびわ湖会議は歴史的な重大な方針転換ともいえる決定をしました。びわ湖の水環境だけでは今の環境問題はとらえられないと、時代に合わせてせっけん運動に代わるテーマとして、「エコキッチン革命」を掲げる新しい運動方針を打ち出したのです。省エネ・省資源・ごみ対策・環境問題全般を、台所に焦点を当て、住民の暮らしの視点からとらえていこうというものです。
それにとなもなって、『せっけんも洗剤も適正に使用しましょう』とスローガンも切り換えられました。これまでは、ずっとせっけん使用ということを勧めてきたけれど、合成洗剤も改良が進んできていて、環境面からいえば、「せっけんが○で合成洗剤が×」とは必ずしもいえない、せっけんを使うにしても量を多く使いすぎれば水を汚すことになる…という正論に耳を傾けたものとして評価されるでしょう。
せっけん運動は、他の住民運動にも大きな影響を与え、びわ湖を守るシンボル的な存在として根強く残っているため、びわ湖会議のなかにもせっけんにこだわるむきも強いのです。この方針は、従来のせっけん運動に加えて、合成洗剤も適正量使用していくということで、せっけん推進運動がなくなったわけではないそうです。今度は「適正量というけれど何をもって適正量というのか」が議論になっています。ただ適正量をといっても一般にはぴんとこないため、洗濯の仕方から考えてテストをしデータを集めて、独自の基準を研究しているそうです。
滋賀県では、びわ湖の水質を守るため、従来の市町村単位の枠を越え、湖に注ぐ河川の流域単位の視点から、びわ湖の水質を1965(昭和40)年時点の水質に戻そうという目標を設定しています。


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