★水環境を汚しているのは |
人が生活していくうえで、欠くことのできない水…。台所、浴室、洗たくなどから排出される生活雑排水は、ゼロにすることはできません。
これらの排水をそのまま流せば、環境に負荷をかけることになります。『環境白書』(平成16 年度)によると、われわれは一人当たり一日にBOD(生物化学的酸素要求量)として43 グラムの有機物質(し尿を含む)を排出していることになります。このうち、いちばん多いのは台所からの排水で、お風呂の排水と合わせると60%になり、そのほかに洗たく排水が約10%となっています。
環境汚染の原因となる排水をできるだけ減らすには、食べ残しや飲み残しを流しに捨てないようにするなど、個人の努力も必要です。
当業界でも、環境負荷を極力減らすための努力(無リン化、生分解性の向上、適量使用、使用量の削減推進など)を続けてきました。また、定点観測で環境モニタリングによる影響調査を行ない、実態把握に努めてきました。
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★生分解と下水道と浄化槽 |
生活雑排水に含まれる界面活性剤などの有機物は、基本的には河川や湖沼など環境水系中の微生物の働きによって分解されます。わかりやすくいえば、バクテリアなどが汚れを食べてくれるわけで、これが「生分解」です。
けれども、大都市で発生する大量の汚水などは、自然の生分解能力を大きく超えることもあり、できるだけ環境に負荷をかけないようにしなければなりません。
そこで、水環境を守るための総合的な視点と対策が必要とされ、その中心施策として、長年にわたって国や行政のインフラ整備努力が積み重ねられてきました。それが、し尿処理と合わせて排水処理対策ができる下水道・合併処理浄化槽(平成13年から単独処理浄化槽が原則禁止された)の普及です。今や両方を合わせると、全国下水道普及率は約85%に達しています。
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★環境影響をはかるものさし |
では、そもそも水が汚れているとかきれいだとかは、なにを指標にしているのでしょうか。
まず、水質汚濁の指標のひとつとして、BODが河川の浄化度を測るときなどに、よく使われます。
これは、水中の有機物を微生物が分解するときに必要な酸素量で、この値が大きいほど、有機物汚れがひどいことを示しています。
また、下水処理場で洗剤成分の陰イオン界面活性剤がどの程度除去されたかは、MBAS(メチレンブルー活性物質)濃度が簡易測定の指標として使われることが多いようです。
合成洗剤の主成分のひとつである陰イオン界面活性剤は、陽イオン系色素のメチレンブルーと反応して、複合体を形成する性質があります。このような複合体を形成する物質を、MBASといい、この濃度を測ることによって、水中の陰イオン界面活性剤濃度を測定しようとするものです。
しかし、MBASは自然界の植物成分の一部(落葉など)でも検出されるので、この値の解釈には注意を要する場合があります。
当工業会では、政令指定都市の下水道処理水の結果を取りまとめて、公表しています。また、長年にわたる環境モニタリング調査を継続する努力のなかで、陰イオン系のLASや、非イオン系のAEの濃度を測る方法の研究も重ねてきました。
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★洗剤は半世紀使われてきて |
日本で洗剤が使用されはじめてから半世紀以上経過していますが、下水道普及率の向上や、易分解性成分の使用等によって、ほとんどの河川で洗剤成分濃度の低下が観測されています。また、合成洗剤が、水質や水生生物に悪い影響を与えているとの報告も、とくに見受けられません。
魚が生息しているような河川での洗剤成分濃度は極めて低く、それが魚など生態系に大きな影響を与えているといった事例がないことは、各自治体の観測データや当工業会独自の環境モニタリング調査結果でも、実証されているといえるでしょう。 |
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バクテリアが汚れを食べてくれる |
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