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2016年9月15日更新
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参照カテゴリ> #06.CLEAN AGE No247 

*これからの製品デザインの考え方とは?

 

これからの製品デザインの考え方とは?


専門家のお話をうかがいました

国立研究開発法人 産業技術総合研究所
人間情報研究部門 部門長 持丸 正明 さん

国立研究開発法人 産業技術総合研究所
人間情報研究部門 部門長
持丸 正明 さん

 専門は情報・人間工学領域の研究と技術開発。製品・サービスの設計や販売支援、「キッズデザイン・CSD認証」などの公的な品質保証や認証システムの策定にも数多く関わってこられました。


◎製品は価値の成熟にともなって変わってきた

 日本では、顧客が製品やサービスに求める『価値』がかなり成熟してきています。価値が成熟すると、 それに伴って製品の中身だけではなく、パッケージや届け方など、いろいろなことが変わってきます。以前は、製品のブランド名やパッケージをとにかく目立たせて、店頭で手に取ってもらうという『交換価値』が重視されました。しかし今は、製品を使った顧客が「あっ、これはいいな」と思い、『使用価値』を認めてリピート購入してくれることのほうがずっと大事です。顧客は、店頭より家で製品と接する時間のほうが長いので、『使用価値』が出るかどうかという観点は重要です。市場の成熟に伴う大きな流れの一つとして、この交換価値から使用価値へと軸が移ってきたことがあります。


◎機能的なだけでなく、感情的な価値もデザインする

 使用価値には、洗浄力や使いやすさといった『機能的な価値』と、エコや安全安心のように、どちらかというと『感情的な価値』があります。たとえば、「使いやすくてエコなものが欲しい」という消費者の意識には、「私が使いやすい」という機能的な価値と、「エコなものを買って社会に参加し、貢献できた」という感情的な価値が両立しています。
 一方、製品メーカーからみると難しいのは、機能的な価値を提案するだけでは競争力が出せなくなってきたことです。企業は、顧客のライフスタイルや多様性に応じて、付加価値の高い製品を提供する工夫をしてきました。しかし、業界が努力して製品の機能や使いやすさを向上させるほど、その差異は小さくなり、消費者にわかりにくくなります。これは一例ですが、今は高機能なテレビが発売されても、世の中に初めてテレビが登場したときの衝撃はもう感じられません。機能は高くなっているのに、白黒テレビがカラーになったときほどの差がないため、数年前に買ったテレビでも十分な気がしてしまう、という具合です。
 こうなると、企業としては機能的な価値から感情的な価値へと、さらに軸を移すことが重要になってきます。製品のメーカーは、真に役立つ機能的な価値を提供するとともに、社会に役立っているという感情的な価値も体験できるように製品をデザインする必要があるわけです。たとえば、洗剤類の詰め替え用パウチは、「あなたがこれを使うことで“環境に貢献できた”という体験ができるデザイン」です。ペットボトル飲料のなかにも、飲み終えたら手でクシュっと潰して、ゴミの量を目に見えて小さくできるものがあります。そのように、本来は実感しにくい環境への貢献や安全といった価値を、体験できるようにデザインした製品がもっと増えてくるといいと思います。


◎企業と顧客が価値を共創するという方向性へ

 環境や安全という大きな問題に対して、多くの人は、いきなり行動を起こすことはできません。何かしたいと思っていても、どうしたらいいかよくわからない。その一方で、成熟した社会では、人は少なからず利他的になります。たとえば、「私の家にはお年寄りや子供がいるので、私が使う製品は、みんなにとっても安全安心なものがいい」と考えるのも利他的です。成熟がすすむほど、「私が幸せなだけではなく、周りの人や、私に見えない人たちの幸せにも貢献できたら、私はもっと幸せ」と感じるのです。

私の周りの人,私に見えない人たち,どこかにいる人,将来の人「みんなの幸せに貢献できると、私はもっと幸せ」

 そうした顧客の思いに応えるためにも、企業は機能的な価値だけをつきつめるのではなく、より社会的な価値に向かって動いていく、ということがカギになります。
 また、顧客が製品の価値を体験した結果、「また体験したいな」と思い実行することによって、世の中が良くなり、企業も利益を得るというのは、非常にいいサイクルです。これは、企業と顧客が価値を共創していくことでもあります。このサイクルをつくり出せるような製品デザインは、今後も有用だと言えるでしょう。




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