「多言語コミュニケーションの工夫」
日本で仕事や勉学をしている外国人の数は、長期的にみて増加傾向にあります。法務省のデータによれば、令和元年の外国人入国者数は3,118万7,179人で、前年に比べ108万5,077人(3.6%)増加しました※1。また、令和元年末の在留外国人数は293万3,137人で、前年末に比べ20万2,044人(7.4%)増加となり、過去最高でした※2。
こうした人々が日々、日用品を購入したり家事をしたりする場面では、日本語での会話や製品表示がわからず困難を感じることがあります。この課題に対し、製品とそれをとりまくコミュニケーションに多言語の工夫を取り入れる試みが増えてきました。手洗いや洗濯、掃除など、毎日の衛生にかかせない洗剤類には、どのような工夫がみられるのでしょうか。ここではライオン(株)、花王(株)の事例を取り上げます。
※1 入国時に在留資格を受けて上陸を許可された者及び特別永住者の数。再入国者数を含む / ※2中長期在留者数と特別永住者数者の合計 / ※1、※2ともに法務省の令和2年3月27日報道発表資料より
〜日本で働く・学ぶ、外国人のための洗濯教室〜
ライオン株式会社
近年、ライオン(株)では外国人従業員が増えています。「日本で生活を始めたばかりの時、洗濯の仕方がわからなくて困った」という声が聞かれたため、実態を知るために外国人従業員や近隣の日本語学校の学生などに聞き取りをしました※3。
「日本でお洗濯した時に困った事は?」という質問に対し、多かったのは「洗剤の選び方、洗濯機の使い方がわからない」という、おもに日本語が読めないことに起因する困り事でした。ほかには、「自国では粉末洗剤が主流なので、液体洗剤の適量がわからない」、「残り湯を使って洗濯することに抵抗がある」、「湿気が多くて生乾きになることが多い」など、文化や習慣、気候の違いによる困り事もありました。
これを受けてライオン(株)は、『日本での「洗濯(せんたく)」〜外国人のための洗濯教室〜』と題した記事を作成し、自社の情報サイト「Lidea」に掲載しました。洗剤の選び方、洗濯機の使い方などのポイントを、簡単な日本語と英語、中国語、韓国語で伝えています。
※3 外国人従業員や日本語学校の学生へのヒアリング、在留外国人へのWEBアンケートなど

「Lidea」での記事化にあたっては研究開発本部(東京都江戸川区)近くの日本語学校の先生のアドバイスも取り入れました。「すべてひらがなだと、どこまでが単語かわからないため、ある程度漢字もあったほうがよい」ことや、「ひらがなが続くときには、スペースを入れたほうがわかりやすいこと」などに配慮しています。
詳しくはWEBサイト「Lidea」をご覧ください。https://go-lion.jp/Lidea012
〜日本語・英語・中国語・韓国語で電話相談に対応〜
花王株式会社
花王(株)の生活者コミュニケーションセンター(以下生活者CCと略記)は、複数の相談窓口を開設しています。電話やeメールなどの直接のコミュニケーションだけでなく、花王ホームページの「製品カタログ」「製品Q&A」「お問い合わせ」などを通じ、生活者のお役にたつ情報を発信しています。2019年に寄せられた相談件数は、約21万4千件(前年比99%)でした。内容は製品の入手方法や、使用期限、新製品に関する問い合わせが多く、近年はインバウンド(訪日外国人旅行)の影響と思われる「製品を海外に送りたい」といった航空輸送に関する相談や外国語での相談も増加しています。
生活者CCでは以前から、日本在住の外国人もしくは海外居住の方などからの英語でのeメール相談に対応してきました。さらに2019年からは電話窓口においても英語・中国語・韓国語の3言語での対応を始めました。3言語での相談対応は基本的に、通訳を介した三者間通話で行なっており、開設以来「製品の製造年月日を教えてほしい」、「日本と海外で販売されている商品に違いはあるのか」などのさまざまな疑問の解消にあたっています。
なお、各国の花王グループに寄せられた相談は、ワンエコーというシステムに入力されます。それら国内外の製品に関するお客様の声を、生活者CCが中心となり全社で共有しています。そして各部門がそれぞれの視点で解析を行ない、グローバルな品質向上活動、製品開発、情報開発などに活かしています。