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2014年3月15日更新
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参照カテゴリ> #06.CLEAN AGE No237 

*人にやさしい製品の工夫(3)

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人にやさしい製品の工夫誰もが使いやすい製品を提供する取り組み

3 「使いやすさを探求するプロセス」


 メーカーがユーザーの視点から発想し、より使いやすい製品を開発することは日本ではごく当たり前に行なわれてきました。ユニバーサルデザインという言葉が登場する前から、他者を気遣う文化を土壌にその芽を育んできたといえます。製品開発の現場では、具体的にどういったプロセスで製品の使いやすさを探求しているのでしょうか。ライオン(株)で包装容器の開発を担当する方々にお話をうかがいました。

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(写真中央)ライオン(株)包装・容器技術研究所 横幕 敦司さん、
(向かって左)中川 敦仁さん 、(右)山本 昌彦さん 


生活の場を実際に観察して開発することが基

 洗剤類のように普段よく利用する製品ほど、多少不具合があっても、使う人自身は気付かないことが多いものです。頻繁に家庭訪問をして調査を実施しているのは、生活の現場を見て、ユーザーの行動を知り、製品への潜在的な要望を汲み取ることが大切だと考えているからです。

<実例1.衣料用漂白剤>

 アンケート調査で、漂白剤を衣服に直接塗布する人が約7割と多かったため、家庭訪問して、実際に部分漂白する様子や動作を観察しました。すると、計量時や塗布するときに姿勢が不自然になることや、エリ・袖や小さなシミには、キャップからだと漂白剤が上手くつけられないことがわかり、容器の形状を変更して改善する方法を考えました。部分漂白のしやすさを追求し、たどり着いた形がノズル付2WAYキャップと、16度傾斜ボトルです(図1)。

図1.「直効ブライト」改良例図1.「直効ブライト」改良例

<実例2.食洗機用粉末洗剤>

 食洗機用洗剤のように、普及率がさほど高くない製品の場合は、不満の声がなかなか表に出てこない傾向があるので、よく調査して問題の発見に努めています。

 従来の製品を、複数の家庭でテスト使用したところ、返却された計量スプーンは柄の部分まで洗剤の粉がついて汚れ、中の洗剤まで固まっているものも多くありました。原因は、食器を予洗いし、濡れた手でスプーンを使った後、洗剤容器の中に入れてしまうからです。「時間がない・面倒だ」との心理がはたらいた結果、既存のスプーン置き場はほぼ使われていないことがわかりました。

 改良後の容器は、誰でもラクにスプーンが戻せる専用ポケットをつけたほか、きちんと閉めなくても、防湿性が保てる位置まで蓋が自然に降りるよう工夫し、粉の固化対策をしました。また、食洗機の洗剤投入口が小さく、家庭ごとに設置場所も違う点に着目して、どの方向から投入しても粉が細く入れやすいスプーンに変更しました(図2)。

図2.「CHARMY クリスタパウダー」改良例図1.「直効ブライト」改良例

社員の手の実測データを活用した開発手法

 身体に合わせて選べる靴などとは違って、洗剤類は多様なユーザーに対して使いやすさを提供する必要があり、人を理解したうえでモノとの関係性を良くしていくことが大切です。これをふまえ、ライオンでは社員の手の73箇所を計測した値をデータベース化し、容器の設計に活かす手法をとっています。

<実例3.洗濯用液体洗剤>

 「トップ NANOX(ナノックス)」は、濃縮液体洗剤の特色であるコンパクトさをアピールするため、容器をサイコロ形状にしました。そのままだと、手のひらを大きく開いてつかまなければならないので、角に2箇所アーチ状のくぼみを加えています。このくぼみを設計する際に、社員の手のデータと日本人の統計データを組み合わせて、女性の平均的なサイズと、少し小さめのサイズの分布に該当する社員をモニターとしました。そして、複数の形状モデルを使用してもらい、筋肉の収縮活動を測定して比べたり、経験値やその時の気分からくる主観的な使用感についても調査したうえで、最終的な形状を決定しました。

 「モノ×人」で容器の設計を考え(図3)、「生理学的評価×官能評価」を併せて行なった、代表的な事例です。この開発への取り組みは社会的にも評価され、平成24年度の人間工学グッドプラクティス賞を受賞しました。

図3.モノ×人で考える図1.「直効ブライト」改良例

多様な人に向けた使いやすさを実現するために

 製品に関わる人はさまざまで、家事に慣れている人やそうでない人、高齢者や子供も含まれます。高齢者の目線で使いやすさを考えたり、子供による誤使用を防ぐ工夫も重要なことです。人の多様性を理解する活動の一環として、近年はいろいろな調査を実施しています。また、3Dプリンターなどの導入により、サンプルの試作技術やスピードも向上しました。

 こうして常に新しい視点を取り入れながら、使いやすさの探求を続けています。ぜひ店頭でも製品を手に取っていただき、容器やパッケージにご注目ください。



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