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2016年6月15日更新
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参照カテゴリ> #06.CLEAN AGE 246号 

*台所用洗剤が生まれて60年

除菌や時短の訴求が本格化

台所用洗剤が生まれて60年

1956 >>>2016

ライオン株式会社 
研究開発本部 技術渉外担当部長
宮前 喜隆 さん


 1956年に登場した台所用洗剤は、それ以前はなかった「野菜・果物・食器を専用の洗剤で洗う」という新しい習慣を日本にもたらし、衛生水準の向上に貢献しました。今年は台所用洗剤が生まれて60年、改めて、これまでの歩みを振り返ります。
 以前、当工業会の洗たく科学専門委員を務め、台所用洗剤の50年史をまとめた経験をお持ちの宮前喜隆さんに、お話をうかがいました。

発売当初から2000年までの歩み

<第一世代・1956年〜1960年代>
家庭の台所から食品衛生の向上に貢献

 日本では戦後、食の欧米化や人口増加に伴う食糧増産がすすむ一方で、野菜についた寄生虫卵や残留農薬の除去が大きな課題になっていました。そのため、1956年に初めて台所用洗剤が発売されると行政はいち早く通達を出し、野菜や食器は台所用洗剤で洗い、食品衛生の向上に努めることを奨励しました。それまで日本の家庭では、野菜はもちろん食器についても洗剤で洗う習慣がありませんでしたが、人々の衛生意識が高まるにつれて、台所用洗剤を使うという新しい習慣が根付いていったのです。また、油を使う洋食が食卓に並ぶことが増え、水洗いだけでは食器の汚れを落とすことが難しくなったことも、台所用洗剤の利用が拡大していった要因でした。


<第二世代・1980年代>
食品衛生法のもとで磨かれた配合技術

 台所用洗剤はもともと、食器よりも、野菜や果物を洗うことを主目的として開発されました。野菜を洗える台所用洗剤はすべて中性で、漂白剤や酵素を含まないように定められていますが、それは食品衛生法によって使用できる成分などが制約され、野菜や果物に洗剤が残っても健康に悪影響が出ないように配慮されているためです。一方、食器についた油汚れなどを綺麗に落とすには高い洗浄力が必要ですし、手に直接触れる洗剤だからこそ手肌への優しさや泡立ちといった使用感も重要です。このため各メーカーは、限られた成分をどのように組み合わせたら、必要な機能が実現できるのかという研究を重ねました。その努力が、開発技術の進歩を後押ししたといっても良いと思います。
 1960年代に問題になった台所用洗剤による手荒れも、技術開発で解決をはかりました。まず第一世代の洗浄成分である陰イオン界面活性剤を、皮膚の角層のタンパク質を変性させにくいものに改良し、さらに両性界面活性剤を組み合わせて手荒れを緩和する配合方法を編み出しました。これにより、1980年代以降の台所用洗剤では「洗浄力と手肌への優しさ」を両立させています。


<第三世代・ 1990年代>
容器はコンパクトに、付加価値はより大きく

 今では定番となっているコンパクトサイズの台所用洗剤は、1990年代に、非イオン界面活性剤を配合する新しい工夫から生まれたものです。従来よりも少量で高い洗浄力を発揮するため、容器ボトルの大きさは約半分になり、容器包装プラスチックの省資源化につながりました。
 この時代はもう一つ大きな出来事がありました。現代では寄生虫卵の心配がほとんどなくなったことを背景に、野菜洗いを用途に含まない台所用洗剤が登場したのです。これをきっかけに、弱酸性や弱アルカリ性のものなどが開発され、従来の手肌への優しさや洗浄力がより強化されたり、くすみやニオイ、菌の除去などの訴求点が加わったりと、製品の付加価値も多様化していきました。


2000年以降の歩み 台所用洗剤は次のステージへ

近年は家事の負担を減らすための工夫も

 2000年代には自動食器洗い乾燥機が普及し、専用の洗剤も開発されました。ただし、家庭用の自動食器洗い乾燥機の普及率は30%程度に留まっており(2014年度)、今も多くの家庭で食器を手洗いしていると考えられます。そのため近年は、台所用洗剤の洗浄性能とすすぎ性をさらに向上させて、汚れを素早く一気に落とせるようにすることで、食器洗いにかかる時間の短縮と節水を実現することにも力が入れられています。
 また、さらなる衛生意識の高まりから、食器を洗うスポンジの除菌を訴求した製品が増えていきました。適切に「除菌」表示が行なわれるように、工業会でルールや試験方法を検討し、2006年には業界の統一基準が策定されました。最近ではスポンジのほかに、ふきんやまな板の除菌ができる台所用洗剤も増えて、利便性が広がっています。

より多くの人々の衛生的な暮らしをサポートするために

 日本の台所用洗剤は、食品衛生の向上という基本的かつ重要な役割を担うところからスタートし、その後は時代やニーズに応じて技術開発が行なわれ、より付加価値の高いものになっていきました。この60年間の経験を、今後は、成長が続くアジア地域で役立ててもらうことも大切ではないかと感じています。
 国内の台所用洗剤の市場は、すでに30年以上も成熟期を維持していますが、アジア地域全体でみると、市場規模はここ10年で2倍に成長していて、なかには伸び率が4倍近い国もあります。工業会も協力して、台所用洗剤がより多くの人々の衛生的な暮らしをサポートできる存在になっていければ良いと思います。






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