<第一世代・1956年〜1960年代>
家庭の台所から食品衛生の向上に貢献
日本では戦後、食の欧米化や人口増加に伴う食糧増産がすすむ一方で、野菜についた寄生虫卵や残留農薬の除去が大きな課題になっていました。そのため、1956年に初めて台所用洗剤が発売されると行政はいち早く通達を出し、野菜や食器は台所用洗剤で洗い、食品衛生の向上に努めることを奨励しました。それまで日本の家庭では、野菜はもちろん食器についても洗剤で洗う習慣がありませんでしたが、人々の衛生意識が高まるにつれて、台所用洗剤を使うという新しい習慣が根付いていったのです。また、油を使う洋食が食卓に並ぶことが増え、水洗いだけでは食器の汚れを落とすことが難しくなったことも、台所用洗剤の利用が拡大していった要因でした。
<第二世代・1980年代>
食品衛生法のもとで磨かれた配合技術
台所用洗剤はもともと、食器よりも、野菜や果物を洗うことを主目的として開発されました。野菜を洗える台所用洗剤はすべて中性で、漂白剤や酵素を含まないように定められていますが、それは食品衛生法によって使用できる成分などが制約され、野菜や果物に洗剤が残っても健康に悪影響が出ないように配慮されているためです。一方、食器についた油汚れなどを綺麗に落とすには高い洗浄力が必要ですし、手に直接触れる洗剤だからこそ手肌への優しさや泡立ちといった使用感も重要です。このため各メーカーは、限られた成分をどのように組み合わせたら、必要な機能が実現できるのかという研究を重ねました。その努力が、開発技術の進歩を後押ししたといっても良いと思います。
1960年代に問題になった台所用洗剤による手荒れも、技術開発で解決をはかりました。まず第一世代の洗浄成分である陰イオン界面活性剤を、皮膚の角層のタンパク質を変性させにくいものに改良し、さらに両性界面活性剤を組み合わせて手荒れを緩和する配合方法を編み出しました。これにより、1980年代以降の台所用洗剤では「洗浄力と手肌への優しさ」を両立させています。
<第三世代・ 1990年代>
容器はコンパクトに、付加価値はより大きく
今では定番となっているコンパクトサイズの台所用洗剤は、1990年代に、非イオン界面活性剤を配合する新しい工夫から生まれたものです。従来よりも少量で高い洗浄力を発揮するため、容器ボトルの大きさは約半分になり、容器包装プラスチックの省資源化につながりました。
この時代はもう一つ大きな出来事がありました。現代では寄生虫卵の心配がほとんどなくなったことを背景に、野菜洗いを用途に含まない台所用洗剤が登場したのです。これをきっかけに、弱酸性や弱アルカリ性のものなどが開発され、従来の手肌への優しさや洗浄力がより強化されたり、くすみやニオイ、菌の除去などの訴求点が加わったりと、製品の付加価値も多様化していきました。 |