暮らしを支える“水”を未来に引き継ぐために
シリーズ・水循環を考える
第3回「毎日の生活に必要な水を届けるために」
●● 生活用水の使用量は、1人1日平均287L
日本の生活用水(🅐)の使用量は約130億㎥、1人1日あたりの平均使用量は287Lです(2018年度の有効水量ベース※1)。最近の節湯浴槽の満水容量は270L前後なので、これに近い水量を思い浮かべてみてください。それは、山間部などの水源から生活圏へと、はるばる運ばれてきた水です(🅑参照)。
当たり前のように水を使える生活の裏では、毎日大量の水を運び、安全な水道水をつくり、汚れた水を処理するための水道・下水道事業が営まれ、膨大なエネルギーが費やされています。
●● 水道水をつくる・運ぶ・利用する 水道事業
水源から運んだ原水は、さまざまな電気設備を使って浄水処理・消毒処理されます。水の安全性や美味しさを保つため、配水池や水道管などを管理し水質汚染や機械の故障を防ぐコンピューター機器も常に稼働しています。
全国の水道普及率は98.1%(2019年度)と高く、地下にはりめぐらされた管路は約72万km(2018年度時点)と大変長いため、水を運ぶ工程では高所に水を揚げるポンプが必須です。つまり水道を使うと、多くの電気エネルギーも消費されます。水道事業に使われる電力は、国内の年間消費電力の約1%を占めています。(家庭で使われる水量は🅒参照)
●● 使った水を集める・処理する 下水道事業
家庭などで使った水は下水管に流れ、揚水ポンプで下水処理場に運ばれます。汚水処理には「活性汚泥法」と呼ばれる微生物の集まりを利用しますが、その工程で酸素を供給する送風機が最もエネルギーを消費します。全国平均の下水道普及率は80.1%(2020年度)、下水道管などの総延長は約49万km(2021年3月末時点)です。下水道に使われる電力は、国内の年間消費電力の約0.7%となっています。
●● 維持管理・更新費用の負担増などが課題
水道・下水道は各自治体が経営する独立採算制の事業です。近年は高度経済成長期に設置された施設の老朽化が進み、水道管や下水管の更新にかかる高額な費用や長い時間が深刻な問題になってきました。大地震による断水や電力不足を防ぐための耐震化対策や、省エネルギー設備の導入も課題です。しかし、今後は人口減少により料金収入が減っていくため、維持管理・更新の負担は増していくと予想されます。
家庭用水道料金の全国平均は1,526円/10㎥(2018年度)で、水源の豊かさなどの違いから地域によって最大約8倍の料金差があります。下水道料金の全国平均は約1,376円/10㎥(2018年度)です。各料金には、事業運営に必要な維持管理費、水量により変動する薬品費や動力費などが反映されています。
●● 次号「安全できれいな水の基準とは?(仮)」へつづく