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2024年12月18日更新
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参照カテゴリ> #01.社会 #06.CLEAN AGE 280号 

* シリーズ
つかう人、つくる人

社会をより良くしていくための資源・環境・安全への取り組み
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花王株式会社
田原 寿夫 さん(左)
SCM 技術開発センター 品質技術グループ(品質基幹技術)主任技術員
荒木 裕行 さん(右)
同グループ 部長/上席主任技術員

インタビュー
 人の安全と健康を守るため、化学物質を扱う事業者には、『労働安全衛生法』に則った リスクアセスメントの実施義務があります。
 花王(株)は社員の安全確保の視点から、多くのリスクアセスメントを誰もが短時間で行なえ、正確に評価できるツールを開発、運用しています。


化学物質を安全に取り扱い、社員の安全・健康を守るために


 化学物質による危険性・有害性から社員を確実に守るには、化学物質に関する情報を精査してリスクを見積もることと、一歩引いてその化学物質を取り扱う人の動き(作業)を見ることの両方が大切と考えています。ここでは前者の、化学物質のリスクアセスメント(A)のために私たちが開発した、リスクアセスメント支援ツール(Bの※1)をご紹介します。

A『労働安全衛生法』に定められたリスクアセスメントとは?, B 化学物質リスクアセスメント支援ツールを独自に開発

 現在、事業者がリスクアセスメント実施義務を負う化学物質の数は、896種類あります。(2016年の法制化当初は640物質)。その範囲は『改正 労働安全衛生法』の施行により拡大し、将来的には数千〜数万単位の物質を事業者が自律的・積極的に管理することが求められています。
 これに対して私たちは、2017年の時点で、リスクアセスメント実施義務のある数百物質だけでなく、取り扱う全原料を対象にリスクアセスメントを進めようと検討を重ねていました。手間はかかりますが、数年後を考えればそのほうが効率的で、より万全を期した安全管理ができると考えていたためです。


リスクアセスメントの鍵は、SDS情報のデジタル化だった


 化学物質に関する情報は、製品(原料)ごとのSDS(安全データシート)を参照します。SDSは文字通り、紙やPDFのシートでの情報のため、以前は手作業でリスクアセスメントツールに入力して、リスク評価をしていました。そのため、数万物質を各工程ごとにリスク評価しようと思うと、計算上100年はかかるという問題がありました。私たちはこの課題を解決することが効率化の鍵だと気付き、外部のAI技術を借りるなどの工夫によって突破しようと考えました。その結果、数年かけて、取り扱う全原料のSDS情報のデジタル化を完成させると共に、独自のツールも開発し※1、リスクアセスメントを効率的に100%実施できる体制を整えました。


効率的に評価できる支援ツールを、社外に無償で提供


 ツールの開発には試行錯誤を繰り返しました。とくに法律と現場の考え方のギャップが壁でした。厚生労働省は「単物質」ごとにリスク評価するツールを提供していましたが、現場で実際に扱っているのは「混合物」である原料です。取り扱う原料によっては、1商品に50種前後の物質を含有するものもあり、それらを一度で管理・評価したいとの思いから、どうしたら現場で効率的なリスク評価を実施することができるのか、知恵を絞って新たなツールと評価法を構築しました。
 こうしたリスクアセスメントの効率化は、化学物質を扱う企業のみなさんにとっても課題ではないでしょうか。私たちは化学工業界に貢献するために、2024年からツールの無償提供を始めました(公開技術情報として登録済み)。日本石鹸洗剤工業会と協力して、導入セミナーなども開催しています。  


自律的な化学物質管理と、人の安全と健康のために


 現在、私たちはリスクアセスメント実施義務の範囲をはるかに超えて、取り扱う全原料を対象に化学物質管理を進めています。法律の遵守を超えた自律的な取り組みができたのは、2012年から国際的な化学物質管理のためのSAICM※2に沿って活動してきたことが大きかったです。
 リスクアセスメントの本質は、人の安全と健康です。そのような広い視点から、SDSのデジタル化データを社員の特定健康診断にも活かすといった新たな仕組みにも挑戦し、社員の安全と健康に貢献していきたいと考えています。


※2. SAICM(2006-2020、国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ)は2023年にGFC(国際化学物質管理に関する2020年以降の枠組み)に引き継がれました。



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