日本石鹸洗剤工業会(JSDA)
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2024年6月24日更新
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参照カテゴリ> #01.社会 #06.CLEAN AGE 277号 

* シリーズ
つかう人、つくる人

社会をより良くしていくための資源・環境・安全への取り組み
一緒に考えてみませんか

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北野 大 さん
工学博士。分析化学で博士号を取得。専門は環境化学。明治大学大学院理工学研究科 教授や、OECD、経産省の委員などを経て、現在は淑徳大学名誉教授、学校法人秋草学園 理事長、秋草学園短期大学 学長。環境問題などに関する著書多数。

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長谷 恵美子 さん
2023年度から日本石鹸洗剤工業会の環境・安全専門委員。花王株式会社 品質保証部門 技術法務・技術渉外センター、GFC(Global Framework on Chemicals/旧SAICMサイカム)推進委員会事務局。

インタビュー
 2生活者やライフスタイルの変化とともに歩んできた洗剤と、当工業会の活動をSDGsの観点から振り返り、これからの情報発信のあり方を考えます。工学博士であり学校法人の理事長も務める北野 大さんに、当工業会の長谷 恵美子さんがインタビューしました。

秋草学園短期大学にお邪魔しました。左は当工業会の西條専務理事(取材当時)。

秋草学園短期大学にお邪魔しました。左は当工業会の西條専務理事(取材当時)。


◉適切につかって、製品の良い面が引き出されるようにしたい


cut 私は洗剤メーカーに勤務しているので、製品の「適切なつかい方」をお伝えしていきたいという思いがあります。どんなに性能の良い洗剤をつくっても、適切につかわないと、洗浄力が低下したり、環境負荷が増加したりする恐れがあるからです。製品の良い面が最大限引き出されるように、科学的に良い面と注意すべき面の両方をわかってつかっていただく必要性を感じています。
 先生は環境化学がご専門で、化学物質の安全性試験や、学校での教育に携わってこられました。化学製品をつかう人・つくる人とのコミュニケーションについて、どのようなことが重要だとお考えですか。


◉有用性が理解されるように、メーカー側が努力する


cut  まず、メーカーとしては従来よりも洗浄力が高くて環境にやさしい洗剤をつくっている、という自負があると思うんです。その良い面をなかなか理解してもらえないとしても、ユーザーに責任はないんですね。メーカーはわかってもらえるように、伝える工夫や努力をするべきです。
 そして化学物質というのは良い面と悪い面がある、いわば「諸刃の剣」です。でも、刃物は危険だから使うのを止めよう、世の中から無くそう、ということにはなりません。それは、有用性が理解されているからなんですね。
 私は化学物質全般について、今の世の中には必要なものだと思っています。新型コロナウイルスが大流行したときは、清潔で快適な生活を送るうえで界面活性剤(石けんや洗剤の主成分)が役立っていることがよく分かりました。有用性が理解され、手を洗う人が増えたことは、とてもいいことだと思います。ですから、メーカーは良い製品をつくったのなら、適切なつかい方や注意点だけでなく、社会的な有用性をきちんと発信していったほうがいいんです。石けんや洗剤をつかう人が、良い面も悪い面も、製品ライフサイクルの視点を含めてオーバーオール(overall:総計で、全体として)で考えられるように、そのために必要な情報をメーカーが発信していくことが大事です。  


◉洗剤の環境配慮について、どのように伝えていくか


cut 有用性という点では、洗剤は昔よりも少量で効率よく洗うことができますし、すすぎ1回タイプも選べます。洗浄力だけでなく、水不足や水質汚濁、資源枯渇を考慮した環境への配慮も高まっているので、その変化も伝わるようにしていきたいです。

cut ただ、独り善がりな発信になってはだめです。客観的に従来製品との比較など、わかりやすい数値や具体的なデータを示す必要があります。「地球にやさしいものづくり」といったスローガンだけでは、どういう面がやさしいのか、わからないですよね。

 たとえば昔、高度経済成長期に河川が汚れて泡立ったときに、ABSという洗剤成分がその一因だと考えられました。ABSは生分解されにくかったので、生分解されやすいLASへと切り替えられています(図1参照)。環境中での分解性はとても重要で、LASはその後何十年も問題なくつかわれてきた実績があり、それが一種のエビデンスになっています。このように、従来との比較は情報を客観的に伝える一つの方法だと思います。

図1:洗剤成分の生分解性向上の取り組み(一例)

cut 洗剤成分の環境影響については、当工業会が約25年にわたって自主的に実施している「環境モニタリング」のデータもあります(図2参照)。毎年、界面活性剤の河川水中濃度を調査した数値などをもとに、水生生物への影響を確認する「リスク評価」も行なっています。この結果を記者会見やWEBサイトで公表していますが、内容が科学的かつ専門的です。多くの人によりわかりやすい伝え方も大切ですね。


◉SDGsの観点で「適切につかう・大切につかう」啓発を


cut  もっとSDGsの観点から考えることが重要だと思います。「適切につかうだけでなく、大切につかおう」とか、「エコロジーはエコノミー(環境と経済)」というふうに。「もったいない」もいい言葉です。同じ意味の英単語はないので、友人のケント・デリカットに「It's a pity. That's wasting.(無駄にするのは残念だね)」と訳してもらったことがあるんです。「もったいない」は、本来の価値を生かさず無駄にすることなんですね。少量でつかえる洗剤をどばっと入れてしまうのは無駄ですし、余計な負荷を環境にも家計にもかけてしまいます。適量を守ることが、環境や経済にとってもどれだけ大事かということを、SDGsの観点から伝えていく必要があると思います。
 ほかには、家事負担を減らせる面もありますね。高齢になると、お風呂の浴槽の掃除が大変なんですよ。今の浴室用洗剤は、泡で汚れを落とすので昔に比べて擦らなくてよくなっているから、ずいぶん楽になりました。こういうことが、意外と知られていないんじゃないでしょうか。

cut 洗剤の性能や形態が変わってきて種類も増えているので、目的にあった製品を選んでつかっていただくことも大事ですね。それには製品表示をわかりやすくすることも重要です。たとえば当工業会では業界共通の「安全図記号」を開発して、洗剤類の表示やWEBサイトなどの開示情報に採用しています(図3参照)。

図3:洗剤の表示にある業界共通の「安全図記号」

◉生活の知恵が伝わりづらい時代こそ、教育が大事


cut  多様性の時代ですから、図記号は日本語の母語話者でない人にもわかりやすくていいですね。業界で共通につかえるようにする工業会の活動も重要だと思います。ただ、表示やWEBサイトはやや受動的で、興味のある人が見る傾向があります。より多くの人に関心をもってもらうには、もっと能動的に、動画作成や出前授業のような何らかの方法で見せることも大事でしょうね。

cut  動画といえば、子どもたちに正しい手洗いを習慣化してもらうための『手洗い授業プログラム』動画版を当工業会から教育現場へ無償で提供し、小学校などで出前教室を開いています。洗剤類の適切なつかい方も、早めに伝えていくのがよいということでしょうか。先生は教育者として、現場で若い世代の方々もご覧になっていますが、どう思われますか。

cut  デジタルネイティブ、という言葉がありますよね。我々の世代と違い、今の若い世代は「洗剤ネイティブ」とも言えます。でも残念ながら、つかい方をすごく知っているかといえば、そうでもありません。洗剤に限らず、昔だったら生活のなかで「塩分の摂り過ぎはよくないから、お醤油はこのくらいの量でね」というふうに教わるか、体験を通して覚えたような知恵が、伝わりづらくなったと感じます。知恵の伝承や習慣化には時間がかかりますから、小さいころからの教育はやはり重要です。
 ですから、大人にも子どもに対しても、一つは洗剤の有用性をSDGsの観点から伝えること、もう一つは洗剤の適切なつかい方を能動的に見せること、この両方をやっていくことが大事でしょうね。製品を使っていただくための発信だけでなく、「適量で大切につかう」ための情報を、メーカーや工業会は積極的に発信していってほしいと思います。

cut お話をうかがって、洗剤をつくる側がその有用性をSDGsの観点から伝えることや、生活の身近な所まで情報が届くように発信することの大切さを改めて感じました。本日は、ありがとうございました。  



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