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2007年3月15日更新
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参照カテゴリ> #01.社会 #06.CLEAN AGE 209号 

*インタビュー


生協・コープネット事業連合系列で
“LAS 系洗剤解禁”へ

期待される消費者教育と運動への新しい展開

インタビュー
大矢 勝 先生
に聞く

(横浜国立大学助教授)


世の中の動きも少しずつ変わってきて、これまでLAS系洗剤の販売取り扱いをしてこなかった生協でも、一部で解禁の動きが広がってきました。以前からLAS 系洗剤を扱っていたコープとうきょう、さいたまコープに続いて昨秋からとちぎ、いばらき、ぐんま、ちばの各コープ生協でLAS系の洗剤販売の取り扱いを開始しました。また、コープながのは、この3 月から取り扱いを開始します。
LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩)
洗剤などの主要成分として、約40 年前から広く使われている、生分解性の高い界面活性剤の一種。


------ わたしどもにとっては、たいへん喜ばしいニュースでした。東京都だけでも大手地域生協は四系列あって、それぞれ動きが違うようです。同じ系列でも地域によっては温度差もあるようですが、こうした動きの背景は?

 地域生協は、地区ごとのものもあれば、生活クラブさんのように全国でやっておられるのもあって、なかなか複雑です。日本生活協同組合連合会(日生協)の打ち出す方針に、全国各地の生協がすべて従うというものではなく、それぞれ自主的に動いておられるようですね。
 やはり販売競争の激化もあるし、それに対応するにはそれぞれの生協が手を組んでやっていく、そういう方向性を模索していかなければならないですね。そうすると、安全性ということに関しても、しっかりした基準、しかも科学的な根拠に基づいた形で方針を定めないとダメだというようなことで、いろいろ動きがでてきたのでしょう。LASの解禁もそうですが、食品添加物などのほうが先行していたようです。
 従来なら、「合成だから拒否しよう」というようなことでやってきたものについても、その根拠を明確にするような形で、国の基準や科学的に認められているレベルにしたがって方針を決めていこう、という形に変わってきたようですね。
 
------ その流れをつくっていった背景には、消費者基本法や景品表示法をめぐる公取委の動きも影響したのではないでしょうか。どう考えても、“LASはダメ” という論理を押し通せば、これに引っかかってくる…。
  
 それは大きな機会になったでしょうね。ただ、日生協さん自体は、外部に依頼して検討された結果「合成洗剤を有害だといって避けなければならない根拠はなさそうだ」というデータと報告を、1997年に既に出しておられます。上部組織内では、LAS を排除するということ自体が、どうやら科学的にそれほど根拠がなさそうだ、ということは把握しておられたようですけれどもね。
 問題はそれまで、消費者運動とか消費者教育というレベルでは“石けんがいいんだ、LASは悪いんだ” ということで運動が行なわれ、一定の方向に向かう活動の推進力を得ていた、ということなのです。それをいきなり潰すということは、なかなかできないでしょう。
 いちばんの問題点というのは、“LASは悪くないんですよ” という形で説明しますと、これまで一生懸命石けん推進運動をされてきた方々は、“じゃぁ、わたしがこれまでやってきたことは間違っていたのか” というショックと挫折感が大きい。組織や運動のことを考えて、一生懸命やってきた人ほど、そんな情報は受け入れられないでしょう。

------ 一般に売られているものは安全性に不安があるから自分たちで安心できるものを共同で仕入れよう、価格が高いからスケールメリットでもっとそれを安く仕入れて販売しようという、基本精神があったのでしょうが、それに加えて、生協さんでは、“自然な物は合成な物より絶対に安全だ” という気運が強くありましたね。

 昔の生協はそうだったんですね。大きな見方でみると、生協= 消費者運動の組織という一面がありますので、“生産者vs 消費者” という対立軸のなかで、消費者側を守るというような部分が一つあります。
 そして、最近とみに注目されてきはじめたのが、構成員に対して科学的に正確な情報を発信しなければならないということ、そういう二つの側面があったのです。
 けれども、そこでこれまでの矛盾がだんだんと明確になってきたということ、直接はそれが最近の動きにつながっているのだと思われます。
 しかしどうしても、従来から“合成物と天然物であれば合成物排除” という形で消費者運動を束ねてきた、という経緯があります。それまでの消費者運動のなかでは、中心的に石けん運動というものをサポートしてきた、それからどうやって科学的な考え方に切り替わるか、それを模索しておられて、それがようやくこういう時期になって実ってきたといいますかね。
 戦後間もない頃、まだ誰も安全について意識のない消費者に対して、長い期間かけて自分たちの安全を守るという意識を身に付ける活動をしてきた。それは正しいことだし、これは消費者保護という点では非常に素晴らしいことなんですね。その消費者教育のなかで養われてきた、危険な物への意識までもなくしてはいけない。
 だから、いま消費者リーダーの方々や上層部の方々が思い悩んでおられるのは、以前のように安全などにまったく関心を払わないような消費者意識に後戻りしないように、適度にバランス感覚を育てていくには、どうしたらいいかということでしょう。

------ 最近では表面的には“合成洗剤排除”の文字は見えなくても、トークでそれが伝わっているような運動もある。活動の性質が変わってきたのかなという感じもします。“石けんは界面活性剤じゃない”といっている組織もありますし、生活者ネットの議員さんたちの中には今でも“洗剤追放”といってる人もあるようですが…。

 生協の中でも、科学的な知識を持っている人と、石けん石けんという人と、両方の交流というのがちょっと少なくなってきた、というふうには感じられますね。合成洗剤は環境にも健康にも悪いというようなことを主張される方は、科学的な根拠がないので何をよりどころにするかといえば、結局人と人とのつながりなんです。たとえば、ある人が気がついて洗剤を否定するグループから外れようとすると、そのことがグループの活動に支障をきたすことになる。そうすると消費者同士の集まりというのは、石けんを推進するだけではなくて、社会貢献的なリサイクル推進だとかさまざまな取り組みもやっています。それらが潰れるのを恐れるという気分の方が強い。その部分でなんとか組織を繋ぎ止め守って、活動の推進力を保ちたいということになってしまうのです。
 でも、流れからいうとこれからは、全体的なリスクで考える、というふうに考えていかざるを得ません。

------ そういう人々に、リスクの考え方に立って考え直してもらうことができるでしょうか。

 誰でもそうでしょうが、AとBのどちらがいいか悪いかの判断をするとき、誰かがA がいいというとそれを使う。そういう生活思考パターンで動いてきたのが消費者の多数派です。テレビで“納豆がいい” というとすぐ買いに行こうという人々です。それと同じで、これまでは誰かどこかの先生が“合成洗剤は悪い” と言えばみんなで“追放しろ” ということになっていた。
 ところが、だんだんといいとか悪いとかも簡単に言えなくなってきた。リスクというのは、どちらにも動くからです。○か×かも、条件によっては○が×になったりする、それがリスクの考え方なんで、実はこれは訓練なしに受け入れるには、なかなかむずかしいレベルの考え方なんですね。いわゆる理系の方々は、リスクアセスメントとかそういう考え方が大切だといいますが、社会全体でそれを受け入れられるような教育が、まだ行なわれていないのです。これまでの学校教育・消費者教育でも、まったく取りあげられたことのないものなんです。
 そういう場合、わたしはやはり生活協同組合連合会などに新しい消費者運動・消費者教育の中心的存在として、大いに期待しますね。
 この度のLAS系洗剤解禁という方針転換にあたっても、組織内のいちばん環境安全に意識の高い人を説得してまで、とにかく使いすぎに注意し使用量を減らすことが重要ですよということもいいながら、バランスよく商品選択を変えていこう、組織も変化していこうという姿勢は、高く評価できると思うのです。
 石けん推進、それは科学的には間違っていたけれども、そういう運動をこれまで一生懸命やってこられた方々の力は、そのためにも必要なんです。その方向をうまく環境安全や、世の中をよくする方向に進めていく中心的な存在に成り代わって欲しい、そう願っています。




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