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2010年9月21日更新
01.*石洗工の容器包装と3R対策 *目次へ 
参照カテゴリ> #06.CLEAN AGE 223号 

*プラスチックごみリサイクルの課題

 

.実はなかなかむずかしい
プラごみの分別収集と
再商品化

 

日本ポリエチレン製品工業連合会 
専務理事 戸上 宗久 氏


● プラスチック容器包装は重要で省エネ・環境対策にも

 いわゆる「容リ法(容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律)」の制定から、すでに15年が経過しました。容リ法制定の発端も、家庭から排出されるごみの6割が食品や日用品などの容器包装だったからというので、今でもプラ容器自体をムダで邪魔な悪者のように見る傾向があるのは、残念なことです。なによりも、内容物が傷んだり変質することから保護し、できるだけ長く保存が可能なようにと、容器包装の本来の重要な役割を果たしていることを忘れないでいただきたいのです。
 プラ容器は積層化などによって高度に機能アップされる一方で、総体的には軽量化され、コンパクトになっています。環境や資源問題の基本は、3つのR(Reduce リデュース:減らす/Reuse リユース:繰り返し使う/Recycle リサイクル:再資源化)のバランスの上で考える必要がありますが、プラ容器包装も、目に見えないリデュースでどんどん進化してきているのです。そのなかで、軽くて丈夫なポリエチレンが果たしている役割は重要です。
 最終製品に占めるプラスチック包装資材の割合は、重量比で平均的に見て1〜3%程度となっております。このことは、物流コストの大幅な引き下げにも貢献しており、省エネ・環境対策にもつながっているのです。


「その他プラ」の再生利用率は低い

 容リ法では、容器包装のリサイクル義務を負う特定事業者に対し、再商品化費用(2009年度407億円)の負担を求めています。一方、消費者にはごみを減らし、排出にあたっては分別を求めています。そして、自治体には分別収集に必要な措置を要求しています。
 この法律がリサイクルの対象としているプラスチックには、「プラ」または「PET」の識別表示がされています。プラごみ分別の方法は、細かくは自治体によって異なりますが、(A)PETボトル、(B)発泡スチロールトレイ、(C)「プラ」マークのついたプラスチック(これがいわゆる「その他プラ」)となっています。
 プラスチックのリサイクル(再商品化)の方法としては、(1)マテリアルリサイクル(原料・製品として再生利用)、(2)ケミカルリサイクル(油化や高炉還元剤利用)、(3)サーマルリサイクル(エネルギー回収利用)の三種類があります。この三種類のどれでもいいというのならば、少しはわかりやすくなるのですが、法律の建前はあくまでもマテリアルリサイクルによる再生利用であって、他はやむを得ない補完的な方法とされています。
 一般家庭や会社から出るプラごみなどが、どのように処理されているか、2008年度のプラスチック処理促進協会のデータによると、(1)が13%、(2)が4%、(3)が51%で、残り32%が単純に焼却されたり埋立処分されています。
 これでもわかるように、プラごみの再生利用率は低いのです。それは、「その他プラ」は現実的にマテリアルリサイクルには向いていないという事情があるからです。


再生利用が可能な条件は限られる

 なかでも、ペットボトルのリサイクルは、ある程度うまくいっています。それは、必要な条件が整っているからできることで、「その他プラ」はとても同列には論じられないのです。
 PETボトルは、消費者の識別が容易で、なおかつ単一の素材でしかもほぼ単一のグレードでできています。量的にも広く流通しており、その素材が伸縮性をもつため、繊維などの再生利用の道筋が見えています。また、内容物(清涼飲料、酒類等)が水洗いだけで洗浄でき、残存物や匂いが残ることが少ない、というリサイクル適性があります。
 そのため、容リ法でもまずPETボトルのリサイクルを前面に打ち出したわけです。このように、リサイクルが可能なものは、どんどん進めるのがよいでしょう。
 ところが、「その他プラ」は、形状や構造も多様なうえ、容器包装自体に着色されているものがほとんどです。機能面から複合材料が多く、多種多様なものが入り交じっています。内容物も液体あり固体ありとさまざまで、しかも洗浄は容易ではないことが多いのです。容器の見た目で、消費者が分別するのも困難な状況です。たとえ再生したとしても、細かい寸法精度等を必要としないごく限られた射出成形品(擬木・車止めなど)くらいしか、リサイクルに適した用途はないのです。PETと比較すると、あらゆる面で対照的で、リサイクル向きでないことは間違いありません。
 そして、「その他プラ」のうちでは、ポリエチレンが大きな比重を占めています。プラスチック製品の材質は多種多様で、わかっているようでも具体的なイメージが湧きづらいこともあます。日本ポリエチレン製品工業連合会のホームページでは、その現物の例示を「身の回りのプラスチック写真集」として公開しています。(http://www.jpe.gr.jp/polyetylene/
 プラ容器包装には、「識別マーク」が付いており、容リ法の分別回収の対象となっています。日頃、プラごみの分別や回収にご苦労されている方々の努力を思うと、わたしたちはとにかく事実を伝えることが、なにより必要だと思っています。
 「その他プラ」は、どんなに綿密に分別して回収しようとしても、元の素材に戻ることはできません。プラスチックの分子が切れたら、もう元に戻らない、それがプラスチックの性質です。将来的な希望と期待は別にして、すぐにでもマテリアルリサイクルが可能とは言えないのです。


サーマルリサイクル拡大へ環境整備を

 最近になって、新聞などにも「プラごみは燃やすのがよい」といった専門家の意見が、掲載されるようになりました。
 一度使った後の「その他プラ」は、手間とお金をかけて再生努力をするよりも、エネルギーとして回収した方がよほどよい、といえるでしょう。しかし、現実には自治体によって取組みも状況も異なるので、悩ましいところがあります。
 ただ、“燃やすのはもったいない”という一般にありがちな感情については、大半の石油資源は灯油とかガソリンなどの燃料として燃やして消費していることを考えてみればよいのです。原油の約90%が燃料用で残りの約10%が石油化学品原料のナフサです。プラスチックの生産には、全石油消費量の約6%を使っています。すでに一度、プラ容器包装として使われ、世の中の役に立って貢献した後で、さらにもう一度エネルギーとして回収されるということは、立派にリサイクルだといえます。
 東京都を始めとして、ダイオキシン対策も進み、焼却炉の切り替えが進んだ自治体では、プラスチックごみも埋立処分から「可燃ごみ」として一括焼却処分するところが増えています。今では、約半数の自治体が可燃態勢に切り替えているといわれます。
 プラスチックが燃えるごみに入ると、燃焼性も向上するのですが、発電で温水プールという程度からさらに進めて、有効な活用ができる態勢が整備されているかといえば、それも課題です。環境省も高効率焼却施設の推奨をする一方で、「識別マーク」をつけ、再商品化にこだわっています。この際、消費者にとってわかりにくいリサイクル制度を、総合的に整理しなおす時期に来ているように思います。


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分別回収、再利用が容易にできるものについては、その制度を定着させていくことも必要ですが、リサイクルは、リサイクルのために行なうものではありません。資源の循環的な利用をはかり、石油など限りある天然資源の消費を抑制しつつ環境への負荷をできる限り低減することが、最も重要なことだと思われます。
 今や“環境税”とさえいわれる再商品化費用の負担を強いられている事業者も、リサイクルの呪縛にあっている自治体も、消費者も納得できるように、それぞれがやりがいのあるわかりやすい制度にしていきたいものです。
 来年に予定されている法改正を控えてこれから論議が盛んになることでしょうが、プラスチックごみについてぜひこの機会に多くの方に関心をもっていただきたいものです。  (談)


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