1999(平成11)年7月に法律ができて、2000(平成12)年3月から施行されてきた「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(通称: 化管法)に基づいて、すでにこれまでに5回の届出・公表が行なわれています。
化学物質を取り扱う事業者の自主的な管理を促進するこの法律では、PRTR制度と呼ばれる化学物質の環境への排出の把握および届出が必要な物質として、354の物質(第一種指定化学物質)を指定し、管理の対象にしています。それとあわせて、MSDS制度という、化学物質の取扱事業者に対して事業者がデータシートを提供する義務を定めたものとして第一種に加え81物質(第二種指定化学物質)が指定されています。つまり、化管法では、計435の化学物質を管理対象に指定しているというわけです。第一種には、環境中に広く存在するものが、第二種にはそれほど量は多くないが継続的な管理が必要とされるものが、それぞれ指定されています。
このように、化管法というのは、PRTR制度とMSDS制度を含んだものですが、厳密にいうと、MSDS は化管法と労安法と毒物劇物取締法と三法にそれぞれあるものです。法の目的が、環境を経由した毒性と、労働者の安全健康、短期・急性毒性と、それぞれ違うので指定物質も同じではないのですが、三つのMSDS制度が、同時にスタートしています。
しかしながらMSDS自体は、物質の性状や取扱に関する情報を、それをつくった者が利用者である事業者に対して提供することによって、事業者がPRTR制度による自主管理を適切にするために役立ててもらおうということでは、同じ方向を向いていると思います。
この法律自体が、施行後7 年を経過した後に見直しをし、検討を加えて必要があれば法律の改正を含めて措置を講ずることをうたっていました。今年は、ちょうどその見直しの時期に当たっていたことから、産業構造審議会と中央環境審議会が合同で見直しのための審議会を開催し、現在、その中間とりまとめ案について、パブリックコメントを実施中です。これによると、たとえばPRTR については、平成17年度分の届出として約4万1千事業所から届出がなされ、PRTR届出排出量も、平成13 年度の約31万3千トンから平成17年度には約25万9千トンとなっており、全体的には減ってきている状況となっています。
見直しは、みなさんのご意見を聴いたうえで、さらに検討を加えどうするかを考えるということになります。いまのところは、中間取りまとめの最後の「おわりに」に書いてあるように「誰もがより容易に個別事業所ごとのPRTRデータの入手が可能となるよう、現在の開示請求方式から国による公表方式に変更する点、環境リスクをより一層把握するために廃棄物の処理方法等を記載項目へ追加することや、MSDS制度のGHSとの整合に向けた取組など制度の変更に関する指摘」があったとされていますので、これらを中心に検討を加えていくことになると思われます。
また、「今後は、更に化審法を中心に審議を行い、化学物質管理政策の新たな方向性を示し、必要に応じて化審法及び化管法の一体的な改正を目指していくべきである。」とされていますので、時期については、これから始まる化審法の検討とあわせて検討されることになります。つまり、バラバラに法改正をするということではないのです。これから関係省庁とも相談しなければなりません。
基本は、結論ありきではないので、国際的に見てもさまざまな化学物質について動きもありますので、そういうなかで現行の化審法で充分なのか、よく自己評価をし、みなさんの意見も聴いたうえで不足があれば追加修正を検討することになります。法律を改正するのか、施行令や規則を変えればいいのか、あるべき姿を議論したうえで、内容によって対応していくことになるでしょう。
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