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2007年9月15日更新
01.*安全・環境に関する規則 *目次へ 

*化管法とPRTR制度をもう一度整理すると

●法律の趣旨と経緯・見直しの方向

●PRTR制度の目指すところ

●化学物質と有害性の考え方

●「指定物質」の意味

化管法とPRTR制度をもう一度整理すると

--- その考え方とリスク評価・リスク管理について ----

経済産業省 製造産業局 化学物質管理課
化学物質リスク評価室 室長
福 島  洋

●法律の趣旨と経緯・見直しの方向

 1999(平成11)年7月に法律ができて、2000(平成12)年3月から施行されてきた「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(通称: 化管法)に基づいて、すでにこれまでに5回の届出・公表が行なわれています。
 化学物質を取り扱う事業者の自主的な管理を促進するこの法律では、PRTR制度と呼ばれる化学物質の環境への排出の把握および届出が必要な物質として、354の物質(第一種指定化学物質)を指定し、管理の対象にしています。それとあわせて、MSDS制度という、化学物質の取扱事業者に対して事業者がデータシートを提供する義務を定めたものとして第一種に加え81物質(第二種指定化学物質)が指定されています。つまり、化管法では、計435の化学物質を管理対象に指定しているというわけです。第一種には、環境中に広く存在するものが、第二種にはそれほど量は多くないが継続的な管理が必要とされるものが、それぞれ指定されています。
 このように、化管法というのは、PRTR制度とMSDS制度を含んだものですが、厳密にいうと、MSDS は化管法と労安法と毒物劇物取締法と三法にそれぞれあるものです。法の目的が、環境を経由した毒性と、労働者の安全健康、短期・急性毒性と、それぞれ違うので指定物質も同じではないのですが、三つのMSDS制度が、同時にスタートしています。
 しかしながらMSDS自体は、物質の性状や取扱に関する情報を、それをつくった者が利用者である事業者に対して提供することによって、事業者がPRTR制度による自主管理を適切にするために役立ててもらおうということでは、同じ方向を向いていると思います。
 この法律自体が、施行後7 年を経過した後に見直しをし、検討を加えて必要があれば法律の改正を含めて措置を講ずることをうたっていました。今年は、ちょうどその見直しの時期に当たっていたことから、産業構造審議会と中央環境審議会が合同で見直しのための審議会を開催し、現在、その中間とりまとめ案について、パブリックコメントを実施中です。これによると、たとえばPRTR については、平成17年度分の届出として約4万1千事業所から届出がなされ、PRTR届出排出量も、平成13 年度の約31万3千トンから平成17年度には約25万9千トンとなっており、全体的には減ってきている状況となっています。
 見直しは、みなさんのご意見を聴いたうえで、さらに検討を加えどうするかを考えるということになります。いまのところは、中間取りまとめの最後の「おわりに」に書いてあるように「誰もがより容易に個別事業所ごとのPRTRデータの入手が可能となるよう、現在の開示請求方式から国による公表方式に変更する点、環境リスクをより一層把握するために廃棄物の処理方法等を記載項目へ追加することや、MSDS制度のGHSとの整合に向けた取組など制度の変更に関する指摘」があったとされていますので、これらを中心に検討を加えていくことになると思われます。
 また、「今後は、更に化審法を中心に審議を行い、化学物質管理政策の新たな方向性を示し、必要に応じて化審法及び化管法の一体的な改正を目指していくべきである。」とされていますので、時期については、これから始まる化審法の検討とあわせて検討されることになります。つまり、バラバラに法改正をするということではないのです。これから関係省庁とも相談しなければなりません。
 基本は、結論ありきではないので、国際的に見てもさまざまな化学物質について動きもありますので、そういうなかで現行の化審法で充分なのか、よく自己評価をし、みなさんの意見も聴いたうえで不足があれば追加修正を検討することになります。法律を改正するのか、施行令や規則を変えればいいのか、あるべき姿を議論したうえで、内容によって対応していくことになるでしょう。

*化管法
 化学物質には、環境中に出た結果、人の健康や生態系にどのような影響をもたらすか、不明なものも少なくない。それらすべてについて、影響を的確に評価し、社会的な合意の下に適切に管理する従来の手法を用いることはできない。そこで、すべての環境媒体を全体的にみて、数多くの化学物質の環境負荷を総体的に低減する必要性に対応できる手法として、化管法のもとでPRTR制度とMSDS 制度が導入された。

●PRTR制度の目指すところ

 環境や人の健康に害を及ぼす物質については、大気汚染防止法や、水質汚濁防止法、毒物及び劇物取締法といった法律で規制がされています。これらの法律は有害性が高く、きちんと厳密な管理をしないと取り扱いがむずかしいものを対象にしており、排出基準を決めて、きびしく強制的に規制されています。排出基準というのは、国が「これ以上出してはいけませんよ」という具体的な数値をあげて規制を設けるものです。基準以下であればよいとは言えないにしても、いちおう人間や環境への影響は小さい、許容できる範囲であると考えられています。
 ところが、化学物質はそれ以外にもたくさんあって、しかも、その取扱方法次第では有害性が懸念される物質も多いと言われています。それらについて、こうした強制的な法律をつくるには、疫学的な調査を含めて時間と費用もかかるため限界があるのです。
 そこで、この数値以上には使っていけないというまでもない、あるいは国が排出基準を示すことは困難というものについては、それを化管法のもとできちんと自主的に管理していただくことにしたわけです。
 それら化学物質についても、リスクは一定程度あるだろうが、基本的には事業者がそのリスクを理解したうえで使っていだければいい、ということです。
 当然、リスクがあり環境中にたくさん排出されているならば、それを管理して減らす努力もしよう、減らし方にもいろいろな方法があるので、それについては現場で取り扱っている人の創意工夫が活かせるようにした、それがこの法律の精神なのです。国が手取り足取りして、これが良いとかそれは良くないとかというのではなく、事業者の自主的な管理に委ねようというわけです。法律の長い名前も、後半の「管理の改善の促進」というところにポイントがあります。PRTR 制度の目指すところは、事業者による化学物質の排出・移動量を自ら把握し、それらを自主的に管理することによって、環境上に起こるかも知れない影響を未然に予防しようというのが大目的なのです。


●化学物質と有害性の考え方

 化学物質といえば、過去の例であればPCBやダイオキシンとか、そういう非常に有害な物質の引き起こす問題が懸念されました。わたしたちの身近には、そんなに有害なものではないが、たくさん暴露(摂取)してしまうと有害な懸念のある化学物質で満ちています。
 どういう化学物質が有害か否かという考え方や判断は、有害性と暴露量から導かれるリスクで考えるべきものですが、これを言い始めるとどうもよくわからない、腑に落ちないという人が多いのは事実です。要は、その物質が持っているマイナスと、その物質の効用=ベネフィットの問題なのです。それが、どこでバランスをとり、折り合いをつけるか、という問題なのです。
 DDTという殺虫剤は、かつてレイチェル・カーソンなどが警鐘を鳴らし、国際的にその使用が禁止された化学物質です。中西準子産業技術総合研究所化学物質リスク管理研究センター長が講演された記録を読んだのですが、それによると、その結果蚊が増えてマラリアなどで死ぬ人が途上国では毎年100万人もある、というのです。塩素消毒をやめた結果、コレラが蔓延して死者が出たということも中西センター長の講演記録にありました。また、薬も基本的には同じで、副作用が少しあっても、それをなるべく減らして病気を治すというベネフィットを増やしていくことが重要だと思います。こういう例はいろいろあって、すべて化学物質との付き合い方の問題を示している、ともいえるわけです。
 リスクとベネフィットの問題は、なにも化学物質に限ったことではありません。車にしても、電車も飛行機も、それによってもたらされるベネフィットを考えれば、事故が起こる可能性があるからといって、これを排除することはできません。世の中ではリスク=危険可能性はゼロにはできない、ということなのです。リスクを下げる努力は、もちろん必要ですが、ゼロにしようとすると、そのためには無限の投資をしなければならない…。
 洗剤も多くの化学物質のひとつとして、そのリスクは否定はできませんが、洗剤を使わなければ、不潔で病気になったりするかも知れないし、適正な量の三倍も使うことは環境に影響を与えることになるかも知れない。正しい理解をして使用し、適正な管理に努め、内在しているリスクがあることも踏まえてなるべく安全な方策を求めて、一層リスクを下げる努力をしていただくことは当然必要でしょう。


*指定物質
 指定化学物質には、(1)健康影響、(2)生態毒性、(3)オゾン層破壊への影響があり、かつ現在または将来にわたって、環境中に継続して存在することが見込まれるものが指定されている。 
 当業界関連の化学物質としては、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(AE)など四物質が、(2)の生態毒性の観点から、管理対象物質に指定されている。

●「指定物質」の意味

“指定物質だから危ないんだ” と言う人々が一部にあるという点については、国のPRが不足していることも事実かも知れません。指定物質が安全か危ないかといわれれば、結局リスクの問題、人への暴露量次第では、危ないとも言えないし危なくないとも言えないのです。しかし、“指定物質だから必ず有害だ” ということではないのです。指定物質はいずれもリスクをきちんと認識して、適切な管理をして使えば問題はないものです。
 ほんとうに有害性やリスクの高い有害なものについては、強制的に別の法律で規制をしています。強制法規の対象にならなくとも、自主的な管理で減らしていくことができていれば、使い続けながら環境中の濃度も下がって良好な環境も維持でき、健康な生活も送ることができるのです。指定物質リストには、事業者の方々に日常的にそういう自主的な管理をして欲しいという物質があげられています。“届けるのが面倒だから指定物質を代替すればいい” といった声もあると聞きますが、これは意味のないことです。別の物質に代替したとしても、有害性がありリスクが高いと判断されれば、それもまた指定されることになりますので、一時的なことでしかありません。代替する場合は、その代替物質について有害性と暴露量などをきちんと把握していただいて、使っていただくようお願いしたいものです。
 指定物質の見直しは、とくに何年に一回と時期が決まっているわけではありません。閣議決定事項なので、随時検討していくということになるでしょう。
 また、“PRTR に指定されていない物質を使っています”とか、“PRTR指定物質は使用しておりません” といったことを、ことさらアピールしようというのも、法律の趣旨とは違うと言えます。“指定物質のリストに載っているから使わないほうがいい” とか、“使うのを控えましょう”、ということではないのです。もちろん、“どんどんたくさん使っていい” ということでもないので、これらの化学物質は事業者が自主的に適切に把握管理していくことによって、環境への排出量を徐々に減らしていこう…というのが法の精神です。このことを、みなさんに理解していただくように、今後も努力はしなければならないと思っています。         

(談)


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