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2006年12月15日更新
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*洗剤の「除菌」表示と消費者意識(1)

除菌に対する消費者意識調査結果

洗たく科学専門委員会
熊谷 善敏

(2006/11/21開催)

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1) 調査概要
2) 菌制御関連の用語(殺菌、除菌など)に対するイメージ
3) 除菌表示製品に対するイメージ期待
4) 除菌習慣
5) 除菌に対する意識の背景
6) まとめ

 1) 調査概要
1-1. 調査目的、概要
 近年、腸管出血性大腸菌O157、SARS(重症急性呼吸器症候群)、高病原性鳥インフルエンザといった新興感染症が話題となることが多い。原因となる細菌やウイルスは、眼に見えないことから、生活者は過度の不安を抱いているとも考えられ、「除菌」や「抗菌」を訴求する製品への関心が高まってきている。

 日本石鹸洗剤工業会が対象とする洗濯用、台所用、住宅用の石けん・合成洗剤に関しても、ここ10年ほどの間に「除菌」表示のある製品が多数市場に登場してきており、実生活の中で定着しつつある。従って「除菌」、「抗菌」に対し、生活者がどのように理解、認識しているのか、「除菌」表示のある製品の使用実態や製品に対する期待などを明らかにすることで、現状における課題を明確にすることは極めて重要であり、課題の内容によっては適切な対応実施が求められるものと考える。

 そこで、当洗たく科学専門委員会では、2005年3月に「除菌」を含む様々な「菌」に関する用語に対する生活者の理解、期待、イメージ、および「除菌表示のある洗剤」に対する意識、使用の実態を把握することを目的に調査を実施した。
この度、得られた調査結果に解析を加え、「除菌表示のある洗剤」を製造販売するものとして、「除菌」の意味、「除菌」表示のある洗剤の使用方法、便益等の理解においていくつかの課題を抽出した。本資料が、これら課題に対する取組みを進めるにあたり参考となることを期待する。

 生活者の清潔意識の高まりに対応し、除菌、抗菌などの菌の制御を訴求する家庭製品は様々な分野で開発、上市されている。洗浄剤分野も例外ではなく、除菌、抗菌を訴求した製品は多岐に渡るが、これまで、生活者の除菌に対する本格的な意識実態に関する調査・報告はなされていない。当工業会では、生活者の除菌に対する理解、期待、イメージなどの実態データが、洗浄剤分野における除菌製品のあり方を考えるための重要な基礎データとなると考え、本調査を実施した。
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1-2.調査内容
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 2)菌制御関連の用語(殺菌、除菌など)に対するイメージ
2-1.菌制御関連の用語に対する生活者のイメージ
 日用製品等で使用される菌制御を表現する用語には、滅菌、殺菌、消毒、除菌、抗菌などの学術用語に加え、菌も落とす、菌に働くなどの製品の訴求にのみ使用されている用語もある。これらの用語が一般生活者にどのように理解されているかを調べた報告は、これまでにほとんど例がない。本調査では、このような様々な用語に対し生活者がどのようなイメージ・期待を持っているかの把握を試みた。

 生活者が各用語に持つイメージを示した。尚、菌数変化に関するイメージを明確にするため、「○○の菌を死滅させる」または「○○の菌を取り除く」を選択した生活者を、「○○の菌を死滅・取り除く」として統合した値を示している。

 本図から、生活者は、「滅菌」、「殺菌」、「消毒」、「除菌」、「菌も落とす」は「菌を死滅・取り除く」こと、また「抗菌」、「制菌」、「菌に働く」は「菌を増えなくする」こと、「除臭」は「菌数に変化を与えない」こと、というイメージを持っていることがわかる。更に、「菌を死滅・取り除くこと」、つまり菌数の減少に関しては、「滅菌」、「殺菌」は「全ての菌を死滅・取り除く」こと、「消毒」、「除菌」は「大部分の菌を死滅・取り除く」こと、「菌も落とす」は「半分程度の菌を死滅・取り除く」こと、というイメージを持っている生活者が最も多かった。このことから、生活者が期待する菌数の減少の程度は、「殺菌」、「滅菌」、「消毒」、「除菌」、「菌も落とす」の順であると示唆される。

 身体や健康に害を与える菌について: 「身体や健康に害を与える菌を死滅・取り除く」というイメージに関しては、「消毒」が最も高く、次いで「菌も落とす」、「除菌」、「抗菌」、「菌に働く」の順であり、複数回答を求めた設問にも係らず「全ての菌を死滅・取り除く」イメージの強い「滅菌」、「殺菌」が低かったことは意外であった。これは、生活者が製品、CM、メディア等でよく見かける菌の制御に関する用語に対して、身体や健康に害を与える菌と高い関連付けがなされているためと思われる。その中でも「消毒」に関しては、その関連付けが最も高く、「滅菌」や「殺菌」は生活者が日常見たり・聞いたりすることがあまりないため、生活者の中での関連付けが薄いためと考えられる。
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2-2.菌に対する作用のイメージ
 菌を「死滅または取り除く」イメージの強かった「滅菌」、「殺菌」、「消毒」、「除菌」および「菌も落とす」について、「死滅させる」または「取り除く」を選択した生活者の割合を示した。
 生活者は、菌の種類に関わりなく「滅菌」および「殺菌」に対しては「死滅させる」イメージを、一方「除菌」および「菌も落とす」に対しては「取り除く」イメージを持っていることがわかった。また、生活者の「消毒」の作用に関するイメージは、「死滅させる」と「取り除く」がほぼ同程度であった。
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2-3.菌制御関連の用語に対する生活者のイメージまとめ
 菌数減少効果及び健康被害抑制効果に対する生活者の期待度から示唆される各用語に関する生活者のイメージを示した。
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 3)除菌表示製品に対するイメージ期待
3-1.除菌表示ありの製品の購買欲
 家庭で使用される洗剤では、多くの製品で「除菌」を表示している。本項では、生活者の除菌表示の製品に対するイメージについて述べる。
 除菌表示ありの製品の購買: 製品カテゴリーごとの除菌表示の製品に対する購買選択傾向を示した。洗剤を購入する際、「必ず除菌表示ありを選ぶ」または「除菌表示ありを選ぶことがある」と答えた生活者は、トイレ用及び台所用洗剤では70%程度であり、一方、浴室用及び洗濯用洗剤では50%程度であった。また、「除菌表示ありは選ばない」と回答した生活者は、各カテゴリーで3%以下であった。これらのことから、生活者はトイレおよび台所で、浴室や洗濯よりも除菌の必要性を感じていることが推測される。
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3-2.除菌表示ありの製品を選ぶ理由
 洗剤を購入する際、「必ず除菌表示ありを選ぶ」または「除菌表示洗剤を選ぶことがある」と答えた生活者に、それぞれの製品分野ごとにその理由を選択方式で聞いてみた。

 除菌表示の製品を購入する理由として、「菌を減らすことは大切だから」、「菌の除去をしっかりするため」、「清潔に仕上がりそう・掃除できそう」、「ニオイが防げそう」、「同じ値段・目的なら表示ありがよさそう」を選択した生活者が多かった。このことから、生活者は除菌表示の製品に対し、「菌数の減少」、「清潔な仕上げ・掃除」、「ニオイの抑制」などの除菌の便益を期待し、また同じ値段・目的ならば付加価値のある製品を選ぶという傾向が覗える。一方、除菌表示の製品に対し「洗浄力が強そう」と思っている生活者は少なかった。これは、除菌と洗浄の間に関連性を意識する人が少ないためと思われる。

 製品分野ごとでは、台所用洗剤で「同じ値段・目的なら除菌表示があったほうがよさそう」を選択した生活者が他の分野の製品より多い傾向にある。また、「ニオイが防げそう」として除菌表示の製品を選択している人は、洗濯用洗剤で最も高い。これは、CM等の影響もあり、生活者が洗濯物のいやなニオイ(生乾き臭や室内干し臭など)と菌の関係を他の場所より強く関連付けているものと考えられる。更に、浴室用・トイレ用洗剤では、「カビが防げそう」や「ヌメリが防げそう」という、どちらかといえばカビ・酵母に関連する問題点の解決を期待している生活者が多い。生活者は、細菌、カビ、酵母をすべて「菌」というひとつの概念で捉え、それぞれの違いを認識していないと考えられる。
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3-3.除菌表示ありの製品に対する消費者のイメージ
 洗剤を購入する際、「必ず除菌表示のある製品を選ぶ」または「除菌表示のある製品を選ぶことがある」と答えた生活者を対象として、それぞれの製品分野ごとに、除菌表示のある製品の除菌効果に対するイメージを選択方式で聞いた。
 製品の「除菌効果」に対するイメージを示した。製品の「除菌効果」に対するイメージに関し、製品分野ごとの差はほとんどない。菌数減少効果に関しては、「大部分の菌を死滅・取り除く」というイメージを持っている生活者が最も多く、次いで「半分程度の菌を死滅・取り除く」と「菌を増えなくする」イメージが同程度であった。また、「身体や健康に害のある菌を死滅・取り除く」イメージを持っている生活者も比較的多い。
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3-4.用語と製品のイメージギャップ
 ここでは、製品の「除菌効果」と「用語としての除菌」に対するイメージの比較を示した。
 製品の「除菌効果」に対するイメージと用語としての「除菌」に対するイメージを比較すると、菌数の変化に関し、製品の「除菌効果」に対し「全ての菌を死滅・取り除く」イメージを持っている生活者は、用語としての「除菌」に対する生活者より少なく、「大部分または半分程度の菌を死滅・取り除く」または「菌を増えなくする」というイメージを持っている生活者が多い。このことから、菌数の変化は眼に見えない現象であり、実際の製品使用による菌数の減少を実感できないため、製品の除菌効果に対し、用語としての「除菌」より効果が低いイメージを持っているように思われる。
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3-5.除菌製品の使用と生活者の安心感
 実際に除菌表示洗剤を購入している人が、除菌表示の洗剤を使用することにより、どの程度安心を得ているかどうかについて調べた。

 除菌表示のある製品の使用による安心の程度については、製品分野ごとに大きな違いが見られず、いずれの製品分野においても、「安心につながっている」と答えた生活者は15〜18%、「やや安心につながっている」と答えた生活者は65〜70%、両者の合計は80%以上であった。

 「除菌表示のある製品」の使用による安心の程度に関し、「安心につながっている」または「やや安心につながっている」と答えた生活者がかなり多い。「菌制御関連の用語に対する生活者のイメージ」で述べたように、生活者は「除菌」に対し「身体や健康に害を与える菌を取り除くこと」というイメージを持っていることを考慮すると、生活者は「除菌表示のある製品」の使用により、「身体や健康に害を与える菌を取り除く」ことを期待し、それが安心につながっていると思われる。
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 4)除菌習慣
4-1.主な除菌対象
 生活者が除菌している対象物を、場所ごと(トイレ、台所、浴室・洗面台・洗濯機、衣類・洗濯物、その他)に調べた。50%以上の生活者が除菌している対象物を場所ごとに示した。
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4-2.除菌方法(トイレ)
 トイレ関連対象物に対する生活者の除菌方法を示す。
 生活者が主に除菌している対象物は、便器、便座およびトイレの床であり、いずれの対象物も、除菌表示のある洗剤または除菌シートで除菌している生活者が多い。
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4-3.除菌方法(台所)
 生活者が除菌している対象物は、多種多様であり、様々な方法で除菌している。それぞれの対象物の主な除菌方法は、まな板、台ふきん、三角コーナーでは漂白剤、スポンジ、包丁、流し台・シンク、食器・ボウル、洗い桶では除菌表示ありの洗剤、排水口では排水口クリーナー、冷蔵庫内ではアルコール剤および除菌シートであった。一方、スポンジ、包丁、流し台・シンク、食器・ボウル、洗い桶では、20%以上の生活者が流水で洗うと回答している。
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4-4.除菌方法(浴室・洗面台・洗濯機)
 浴室・洗面台・洗濯機関連対象物に対する生活者の除菌方法を示す。
 生活者の行う除菌方法は対象物によって異なり、専用洗剤がある排水口に関しては、排水口クリーナーを、洗濯槽に関しては洗濯槽クリーナーを使用している。また、除菌表示ありの洗剤となしの洗剤の使用を比べてみると、他の場所に比べて除菌表示ありの洗剤の使用比率がそれほど高くない。浴室・洗面台・洗濯機などのカビや酵母が気になる場所では、カビ取り剤や専用製品の使用が多い。一方、浴室の床、浴槽では、20%以上の生活者が流水で洗うと回答している。
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4-5.除菌方法(衣類・洗濯物)
 衣類・洗濯物関連対象物に対する生活者の除菌方法を示す。
 タオル、肌着・下着、ソックス・ストッキングなどの洗濯機で日常洗濯している対象物では、通常の洗濯で使用している除菌表示ありの洗剤、除菌表示なしの洗剤、漂白剤を使用しており、特に除菌表示ありの洗剤や漂白剤の使用率が高いわけではない。一方、ふとん、カーテンおよびカーペットなどの洗濯しにくい対象物においては、布用消臭・抗菌スプレーを使用している。また、日光干しも行っており、特にふとんでその割合が高い。
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 5)除菌に対する意識の背景
5-1.年齢別の菌に対する意識の違い
 生活者の菌に対する意識の背景を把握するため、年齢別の菌に対する意識、除菌を意識するようになったきっかけ、食中毒や感染症などの報道による影響について調査した。

 年齢別の除菌に対する意識の違いを左図に示した。20代から40代までは菌に対し「とても気にする」または「やや気にする」と回答した生活者は約80%であり、年代による菌に対する意識に大きな差は認められなかった。一方、50代では「あまり気にしない」と回答した人の割合が約30%で他の年代よりも高く、除菌に対し「とても気にする」または「やや気にする」と回答した生活者は70%に低下した。

 右図の年齢別の家族構成を見ると、20代から40代までの回答者(おそらく主婦と思われる)の家庭では小学生以下の子供がいるのに対して、50代の回答者の家庭では小学生以下の子供がいないことがわかった。このことから、小さな子供が家族にいることが菌に対する意識を高くする一因となっていることが推察される。
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5-2.子どもの有無と菌に対する意識
 子供の有無による菌に対する意識の違いについての調査結果を示した。
 今回の調査では危険率5%での統計的有意差は得られなかったが、菌の存在を「とても気にする」または「やや気にする」生活者が子供のいる家庭では81%であり、子供のいない家庭の70%よりも多かった。
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5-3.菌対策をするようになったきっかけ
 生活者が菌対策をするようになったきっかけ及び子供の有無による菌に対する意識の違いについての調査結果を示した。

 菌対策をするようになったきっかけとして「子供が生まれたから」(31%)という回答が最も多く 、前に述べた「子供の有無による菌に対する意識の違い」の結果とあわせて考えると、「小さな子供が家族にいることが菌に対する意識を高くする一因となっている」 ことが伺える。

 更に、「食中毒がニュースになったから」(21%)、「きっかけはないが菌対策をしている」(16%)や「小さいころからの習慣」(9%)と回答した生活者も比較的多く、約90%の生活者が何らかのきっかけで除菌を意識するようになったと回答しており、除菌などの菌対策が生活習慣の一部となっていることが伺える。
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5-4.感染症に関する報道の影響
 近年、腸管出血性大腸菌O157、SARS(重症急性呼吸器症候群)や高病原性鳥インフルエンザなどの新興感染症が報道等で取り上げられる機会が多くなってきている。このようなニュースが生活者の衛生に対する意識に与える影響について調べた。
 上図に示したように、感染症等のニュースにより、衛生に対し「より強く意識するようになった」(20%)または「以前よりいくらか意識するようになった」(61%)と回答した生活者は81%である。
 また、下図に示すように、63%の生活者が感染症に関する報道により日常生活や衛生行動で「変わったことがある」と回答している。このことから感染症等のニュースが生活者の衛生意識や衛生行動を高めていることが伺える。
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5-5.感染症話題後の衛生行動の変化
 具体的に変化した行動について示した。
 具体的な衛生行動としては、「手をていねいに洗う」(86%)、「うがいをする」(68%)、「除菌効果のある洗剤等を選ぶ」(58%)が上位を占めている。前述の「除菌表示製品と安心との関係」において、80%以上の生活者が除菌表示のある製品の使用により「安心につながっている」または「やや安心につながっている」と回答していることからも、除菌洗剤が生活者の衛生手段の一つとして認知されており、その期待度の高さを伺うことができる。
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 6)まとめ
6-1.まとめ(菌関連用語に対するイメージ)
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6-2.まとめ(除菌表示製品に対するイメージ・期待)
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6-3.まとめ(除菌習慣)
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6-4.まとめ(除菌に対する意識の背景)
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