日本石鹸洗剤工業会(JSDA)
home JSDA概要 沿革 組織・会員 統計 資料・刊行物 リンク 総目次 English
JSDAの活動 安全と環境 石けん洗剤知識 役立つ情報 クリーンキャンペーン CLEAN AGE
2006年10月31日更新
01.*セミナー:もっと良く知ってほしい洗剤 *目次へ 
参照カテゴリ> #01.活動 #03.社会 

*一度決めたら止められないの!?
自治体の合成洗剤反対運動支援

―「合成洗剤対策」ならびに「石鹸推進要綱/同要領」に関する調査結果から―

コミュニケーション推進専門委員
佐藤 孝逸

(2005/11/24開催)

←前へ 次へ→

1) 合成洗剤をとりまく社会状況
2) 日本石鹸洗剤工業会(石洗工)のコミュニケーション活動
3) 調査の目的と結果の概要
4) まとめ、今後の活動
 2006年7月14日、神戸市より“3-5.要綱等の内容と問題の程度”について神戸市要綱は問題高の要件に該当しない旨のご指摘をいただきました。また9月14日に面談し説明を受けました。当工業会は神戸市の説明を理解し、神戸市要綱は問題小に変更いたします。なお、プレゼンテーション資料は発表当時の当工業会の理解を示したものですので、修正はせずそのまま掲載し、該当シートには注記を添えます。(2006年10月31日)。

 1) 合成洗剤をとりまく社会状況
1-1.合成洗剤と環境・安全問題および対応状況
 1951年に日本で初めての石油系合成洗剤が誕生し、電気洗濯機の普及に伴い合成洗剤の消費量も伸びてきました。この頃の合成洗剤の代表的な界面活性剤は生分解のしにくい分岐鎖型(ハード型)のアルキルベンゼンスルホン酸塩(ABS)でした。
 そのために'60年代半ば頃は、合成洗剤による河川の“発泡”が問題となりましたが、その後分解のしやすい直鎖型(ソフト型)のアルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)に切り替えたために問題は解消しました。(次頁写真参照)
 '70年代前半には琵琶湖や瀬戸内海で藻類の大量発生や赤潮の発生がみられ、この原因としてリンが問題視され、合成洗剤の洗浄助剤として配合されているリン酸塩が槍玉にあげられ、ついには滋賀県で1979年に琵琶湖の富栄養化を防止するための条例が可決され、県内においてのリンを含む合成洗剤(有リン洗剤)の使用、販売等が禁止され1980年から実施されました。これ以降、他の自治体も次々と条例あるいは要綱、要領等で有リン洗剤を規制してきました。中にこのような動きに乗じて、有リン洗剤のみではなく、合成洗剤全体を禁止し、石鹸に切り替えようとする自治体もありました。
 その後、約25年経過した今日において、琵琶湖の水質のリン分は当初に比べても低下はしていません。
 業界においては、'60年代から'80年代初期に提起されたこのような問題に対しては真摯に取り組み、界面活性剤のソフト化に続き、合成洗剤の無リン化、トータル性能の向上と環境対応を目指したコンパクト洗剤の開発等を進めてきました。現在においては、合成洗剤は広く受け入れられ、世界的にも標準的な生活用品として定着しています。
 このような状況にもかかわらず、'70年代前後に取り上げられた問題にいまだに固執し、合成洗剤を有害であるとみなし、誹謗するなど誤った情報を消費者、市民に流しているグループがいくつも残っています。
 これらのグループの活動のよりどころは、1つは当時の活動家の当時の実験結果をいまだに信じていること、もう一つは'80年代に制定された条例や要綱等にあると考えられます。 
1/21
↑1/21
1-2.多摩川丸子橋防潮堤における発泡
 写真左は多摩川丸子橋防潮堤における1967年時点での発泡状況を示しています。防潮堤下の川面が発泡により堤の影が写っていません。この頃はソフト化への切換え途中です。
 写真右はソフト化への切換えが進んだ1970年時点での同位置による状況です。防潮堤の影が映り、発泡が極めて少なくなっていることを表しています。1972年には家庭用合成洗剤のソフト化(LASへの切り替え)が完了しました。
2/21
↑2/21
1-3.滋賀県琵琶湖の富栄養化の防止に関する条例
 1971年には滋賀県の琵琶湖で藻類が大量発生し、富栄養化の原因として洗剤中のリン酸塩が関与しているとマスコミ報道されました。この頃は、瀬戸内海でも赤潮が発生し問題となりました。
 70年代は、合成洗剤反対運動が広まり、1974年には合成洗剤追放全国集会が開かれています。1978年に瀬戸内海環境保全特別措置法が成立し、閉鎖性水域水質汚濁防止法が改正され、水環境に対する規制がきびしくなってきました。
 このような流れの中で、滋賀県議会は1979年10月17日に、琵琶湖を守り、美しい琵琶湖を次代に引き継ぐために「滋賀県琵琶湖の富栄養化の防止に関する条例」を可決し、翌年7月1日から施行されることになりました。
 条例は第3章で「りんを含む家庭用合成洗剤を使用の禁止等」が定められています。
3/21
↑3/21
▲上へ戻る
 2)日本石鹸洗剤工業会(石洗工)のコミュニケーション活動
2-1.情報の流れとコミュニケーションの主な対象
 石洗工は合成洗剤や石けん等を主力商品として扱うメーカーを会員とする業界団体です。消費者にはより良いくらしに役立つ商品と、情報を提供してきています。 
 商品やくらしに関連する情報は、行政やマスコミ、団体等を経由して消費者に流れることもあります。これらの情報は、もちろん正しいものもありますが、メーカーや業界の意図とは別に、科学的根拠に基づかない、あるいは合成洗剤を誹謗するような、意図的に情報を枉げて消費者に伝え、誤解を与えている場合があります。当業界では、そのようなことが判明した場合は発信者に対して、科学的根拠に基づいた情報による是正を求めるよう申入れを行なっています。当工業会のコミュニケーション推進専門委員会はそのような役割を担って活動しています。
4/21
↑4/21
2-2.これまでの自治体とのコミュニケーション
 石洗工は過去においても自治体とのコミュニケーションは活発に行なってきました。頻度の高いエリアとしては関東圏(東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県)と近畿圏(大阪府、京都府)でした。頻度の高い県は2種類あり、1つは県内の多くの市とのコミュニケーションを図ることにより、他の1つは県内での同一自治体と複数回行なっている場合です。前者は千葉県や京都府の例、後者は大阪府の東大阪市や枚方市、神奈川の県藤沢市の例があります。複数回コミュニケーションを行なっている自治体は、合成洗剤に対する反対姿勢が強い場合が多いようです。合成洗剤反対姿勢の強い背景には共通的に、自治体の石鹸使用推進あるいは合成洗剤対策の要綱や要領等の存在があるとの認識があります。
5/21
↑5/21
 3)調査の目的と結果の概要
3-1.調査目的と方法
 合成洗剤に対してネガティブイメージを持っている自治体が存在しています。その背景に“要綱、要領等”があるとすれば、各自治体においての“要綱、要領等”の有無や活用状況を把握しておく必要があります。そのような状況を、消費者基本法に照らして確認、把握し、今後のコミュニケーション活動を効果的に推進していくための基礎資料とするために、47県769市(内1町)に、要綱等の有無(廃止の場合は廃止年度、要綱等ありの場合は送付依頼)、要綱等有無の認知、予算・補助金の有無、市民・団体活動の有無、当工業会に対する意見等の項目で調査を実施しました。回答は432自治体で回答率は56%でした。 
6/21
↑6/21
3-2.自治体での要綱等の有無
 769自治体にお願いし、半数以上の432自治体から回答いただいたことは、過半の自治体が当工業会の調査の趣旨にご理解いただいていることと考え、ご協力に感謝いたします。
 回答432自治体のうち、要綱“有”回答は30自治体で全体の7%、過去あったが現時点で廃止したと回答は9自治体(2%)でした。
廃止した9自治体については今後、廃止理由等を確認する必要があります。
 回答432自治体のうち、市民の活動に対して予算や補助金“有”回答は30自治体(7%)で、うち要綱等“有”自治体は10、要綱等はないが補助金等有は20自治体でした。
7/21
↑7/21
3-3.自治体での要綱等の制定状況
 自治体から送付された要綱等の制定年、改訂年をプロットしてみると、多くは1980年代前半に制定されており、滋賀県の琵琶湖富栄養化防止条例に影響受けて制定されたものと考えられます。制定後見直ししている自治体もありますが、80年代から現在にいたるまで何ら見直しされていないものが29自治体中18自治体と62%もあり、これらについては、要綱等自体が形骸化されていると考えられます。
8/21
↑8/21
3-4.要綱等の規制名からみた分類
 送付された要綱等の規制名称をみると、「合成洗剤対策〜」の名称が12自治体、「石けん使用(利用)推進〜」が5自治体あり、中でも「石けん推進〜」の名称を持つ我孫子市、藤沢市、東大阪市などは当工業会で過去頻度を高くコミュニケーションをすすめてきましたが、相互理解するには尚時間を要する自治体と考えています。
9/21
↑9/21
3-5.要綱等の内容と問題の程度
 自治体から送付された要綱等の内容についてみると、石けん・洗剤に対して適性使用を求める内容と、当工業会からみてきわめて問題のあるとみられるものがありました。問題が大きいと判断される内容は、「合成洗剤使用禁止」「石けん使用推進」「洗剤の石けんへの切り替え」の文言です。当工業会がこれまでコミュニケーションを進めてきた自治体の多くも入っていますが、新たな自治体も浮かび上がってきました。
 
神戸市を「問題高」から「問題小」に変更します。(2006年10月31日)
10/21
↑10/21
3-6.要綱等の内容の問題点
 「合成洗剤使用禁止」「石けん使用推進」「洗剤の石けんへの切り替え」の内容については、消費者基本法 基本理念第2条に謳われている“商品及び役務について消費者の自主的かつ合理的な選択の機会が確保され〜」に照らしても問題があるといえます。
 「有リン洗剤使用禁止」は家庭用洗剤は完全に無リン洗剤に切り替わっており、現状を反映していない文言といえます。
 「石けんを含む分解性の高い洗剤使用」「廃油石けん製造」については文言自体には問題ないが、その意図に注意を払う必要があります。
11/21
↑11/21
3-7.要綱等の内容事例と問題程度(1) 問題少ない
 福岡県の「合成洗剤対策推進要綱」は“公共用水域の富栄養化の防止を図るためのりん削減対策”を趣旨としており、推進目標および推進項目の文言においても“石けん又は無りん洗剤の使用”と表現されており、問題のない要綱事例といえます。
12/21
↑12/21
3-8.要綱等の内容事例と問題程度(2) 問題あり(1)
 大阪府の「大阪府合成洗剤対策要綱」は“大阪湾の富栄養化を防止するため、リン削減対策の一環として定める”ことを趣旨とし、“洗剤使用減量化と石けん等リンを含まない洗剤の使用を普及浸透させる”ことを目的としています。しかし、実施項目においては、“府の施設で合成洗剤使用を禁止”しており、趣旨の範囲を逸脱しているといえます。趣旨からすると文言としては“リンを含む合成洗剤を使用しない”に限定すべきであろうと考えます。
13/21
↑13/21
3-9.要綱等の内容事例と問題程度(3) 問題あり(2)
 吹田市の「合成洗剤対策の推進に係る基本方針」も大阪府の要綱を実施することを基本とし、“合成洗剤によるリンの排出負荷を削減することにより、大阪湾の富栄養化の防止”を目的としていますが、具体的な削減の方法では“市の施設及び行事においては「合成洗剤を使用しない」”としており、大阪府と同様、目的の範囲を逸脱しており問題であると考えます。
14/21
↑14/21
3-10.要綱等の内容事例と問題程度(4) 問題あり(3)
 東大阪市は規制名称が「石けん使用運動推進要綱」となっており、基本方針が「石けんの使用を普及浸透」させることであり、市は率先して合成洗剤は使用せず、石けん使用を推進することを謳っています。根拠なく合成洗剤を排除していると捉えられ、消費者基本法の基本理念に反しているといえます。
15/21
↑15/21
3-11.自治体の予算、補助金による支援
 自治体の市民活動に対して、要綱等の有無にかかわらず、廃食油回収や石けん製造、石けん購入や製造した石けんの配布や販売に予算・補助金による支援しているところがあります。要綱のある自治体では講習や勉強会についての支援にウェイトをかけている様子がうかがえます。講習会や勉強会の内容についても知る必要があると考えます。
16/21
↑16/21
3-12.市民、団体の活動
 自治体が把握している市民、団体活動については、多くは廃食油リサイクルや石けん使用推進運動との関連です。要綱等のない自治体においても行なわれていますが、ある自治体で特に活発に行なわれている様子がうかがえます。
 当工業会では、リサイクルのための廃食油回収、石けん製造については問題はないと考えています。しかし、何が何でも石けんという“石けん信仰”のための合成洗剤反対には、これまでどおり反対です。また、これを支援する自治体があれば、科学的事実の裏づけを求め、また、消費者基本法の基本理念に照らして申入れを継続していきます。
17/21
↑17/21
3-13.自治体から石けん洗剤工業会に対する意見・要望等
 アンケートに回答いただいた自治体から、当工業会に対する意見・要望としては、合成洗剤と石けんの環境に対する負荷は一長一短であるというデータ、資料の提示要請が比較的多くありました。またこのような情報を一般市民に対してもっとわかりやすく、効果的に伝えるべきという意見もありました。
 当工業会ではこのような意見・要望を踏まえ情報の整備と提供をより積極的にすすめていきます。
18/21
↑18/21
 4)まとめ、今後の活動
4-1.調査のまとめ
 今後、今回の情報のフィードバックを行い、さらに相互理解できるコミュニケーションを進めていきたいと考えています。
19/21
↑19/21
4-2.今後のコミュニケーションエリアの展開
 今回送付された要綱等の内容で、当工業会からみて問題ありと捉えた自治体は、これまでのコミュニケーションを図ってきた自治体と重複しているところもありますが、新たな対象となりうるエリアも明確となりました。効率的なコミュニケーションをすすめていきたいと考えます。
20/21
↑20/21
4-3.石鹸洗剤工業会のスタンスと今後の具体的対応
 琵琶湖条例が施行されて25年になります。他の自治体での要綱等も20年以上経過しているものが多くなっています。今回の調査結果から、要綱等制定後現在に至るまで改訂されていない自治体の多いことがわかりました。また、要綱等の内容に基づいて、石けん使用推進活動への支援が続いていると思われる自治体も確認できました。
 今後、要綱等の制定後改訂のない自治体については役割が終わったことを伝え、要綱等の廃止を求めていきます。要綱等に基づき、合成洗剤反対活動が予算化され市民活動が行なわれている自治体に対しては、今後とも重点的にアプローチをしていきます。要綱等があり石洗工がこれまで未対応であった自治体に対しては、さらに実情把握を進めていきます。
合成洗剤に対する誤解を払拭し、もっとよく知っていただき、消費者自身の自由な選択につながるように、当工業会は科学的実とデータをベースとして情報を整備・提供し、自治体をはじめ、マスコミや団体とのコミュニケーションをすすめていきます。
21/21
↑21/21
←前へ 次へ→

▲上へ

HOMEJSDAの活動安全と環境誤飲誤用石けん洗剤知識役立つ情報クリーンキャンペーンCLEAN AGEこどものページJSDA概要沿革組織 会員統計資料 刊行物リンク総目次English

日本石鹸洗剤工業会 (JSDA)

© Japan Soap and Detergent Association 2000