■ I -2)
ローマ時代は洗剤としては,小鉢に入れられたフラー土(漂白土)を使用し,油汚れを落としていました。し尿や硫黄が漂自のために使われたほか,木や他の植物の灰から水で抽出された原始的な洗剤も使用され始めていました。ギリシャでは洗剤・石けんを使用していませんでした。この頃、日本では踏み洗い,もみ洗い,手洗いによるせんたくでした。
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■ I -3)
中世になると、洗濯は2〜3ヵ月に1回の頻度で行われるようになり、灰汁(アク)とフラー土または白い粘土を溶かした洗濯液を栓付きのたらいに作りつけ,オリーブ油や動物性油脂などで作った石けんも使用されました。
ただし,こうした石けんは大変高価で滅多に使えるものではありませんでした。
日本では奈良時代(700年代)からサイカチのさや,ムクロジの果皮を天然の洗剤として使用していました。これらには泡立ち
成分としてサポニンが含まれていました。また,1000年頃からたらいや砧(きぬた)の使用が始まりました。
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■ I -4)
ルネサンス期(1500〜1700年頃)には,衛生概念が出てきて、町にリネンを清潔に保つため洗濯屋がありました。洗濯方法の進化はあまり見られませんでした。Wash board(ギザギザのついていない平らな洗濯板)と棒が発明され,洗濯が楽になりました。
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■ I -5)
石けんは相変らず高価で、使用した洗濯排水が貧しい人に与えられていました。
そのころ日本では、灰汁・ムクロジ・サイカチ・石灰などを洗浄用に使用していました。シャボン(石けん)の洗浄力は知られていましたが、貴重品のため洗浄に使用することは稀でした。
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■ I -6)
18〜19世紀に入り、洗濯方法・洗剤ともに進化の時代を迎えました。1797年にScrub board(ギザギザの付いた洗濯板)が発明され,1851年に手動式ドラム洗濯機,1858年に回転式洗濯機,1861年に最初の脱水機能洗濯機、そして1874年には家庭で使用する初めての木製手動式洗濯機が発明されました。
石鹸洗剤工業も飛躍的に発展した1779年にグリセリン、1790年に人工ソーダ製法,1811年に油脂の化学的成分が発見され.19世紀末には石けんは庶民の必需品として普及しました。
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■ I -7)
日本では,安政開港により1859年に洗浄用石けんの輸入が開始され,明治維新後に輸入量は急増しました。1872年には国内で石けん製造を開始(官営),翌1873年には堤磯右衛門石鹸製造所が民問として製造するなど.石けんはその後急速に普及していきました。ただし、当時.洗濯機はありましたが,ほとんどの家庭はまだ手洗いでした。
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■ I -8)
20世紀以降は,1907年に木製の洗濯槽の手動回転ハンドル付き洗濯機,1908年にモーターで洗濯檎が回転する最初の電動洗濯機が開発されました。
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■ I -9)
1916年に最初の合成洗剤がドイツで生まれ,1933年に米国で家庭用合成洗剤の第一号が発売されました。
1944年にトリポリリン酸による洗浄力向上,1952年には米国で合成洗剤が石けんの消費量を上回りました。一方,1950年頃から欧米で河川や下水処理場での発泡現象,1960年代後半に欧米で富栄養化閤題が取り上げられ,洗剤のソフト化や無リン化など対応が図られました。
1990年代前半には日本から波及するかたちで海外でも洗剤のコンパクト化が進みました。
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■ I -10)
古日本では1937年に中性台成洗剤「モノゲン」、1951年に弱アルカリ性の合成洗剤「花王粉せんたく」が発売されました。1962年以降アルキルペンゼンの国産化にともない、家庭用合成洗剤が著しく成長を遂げました。また,河川発泡問題を受けて1966年にABSからLASへ転換されました。富栄養化問題・琵琶湖条例を受け1980年に初めての無リン洗剤が登場しました。1987年には初のコンパクト洗剤として花王「アタック」が発売されました。
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■ I -11)
日本では、1921年に輸入電気洗濯機があらわれ,1930年に擾絆式の第1号機が登場しました。1953年に噴流式(輸入)、1955年に渦巻き式が出てきて,その後これが主流となりました。1960年代前半に二槽式,1960年代半ばに全自動式も出始めました。
■ II -1)
現在の日米欧における洗濯習慣・洗濯条件を比較すると、洗濯機のタイプがそれぞれ特長があります。合成洗剤が汚れを落とす剤が主体となっていることは日米欧共通となっています。欧州の洗濯機はドラム式主体で浴比が小さい(洗濯物量に対して水量が少ない)のが特徴です。
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■ II -2)
欧米の洗濯機の家庭設置(アメリカおよびヨーロッパ)および店頭陳列(アメリカ)の事例です。右上写真はアジテーター式の攪拌翼例です。
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■ II -3)
最近の動向としては,米国で水とエネルギー節約に関する法律の施行(2007年,35%エネルギー削減)を受けて,ドラム式を含む「高能率洗浄」機能を持つ洗濯機が成長してきています。ドラム式は水の使用量が少ないので、エネルギー削減への対応が技術的に達成しやすいとされています。洗剤もこの動きに対応して、ドラム式に適した低発泡姓を特長にもつ洗剤が出てきました(上記洗剤ラベルに表記されている「he」は対応洗剤です。水使用量が少なくても溶けやすくするなど設計に工夫が見られます。
■ III -1)
欧州では,エネルギー節約のため,洗濯機の水使用量滅少(1990年70L→2002年40L),洗濯温度の低温度化(同60℃→30〜40℃)といった対応が取られていまする。しかし,水使用量・低濃度化は進んだものの,洗浄力という意味での洗濯環境は悪化しています。エネルギー効率を重視しているので、洗浄力自体は下がっていると考えられます。
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■ III -2)
日本では、洗濯機の大容量化が進んでいます。1993年には約40%が2kg以下でしたが、2002年には約40%が7kg以上を占めるに至っています。また、乾燥機付き洗濯機、ドラム式洗濯機(高濃度・高能率洗濯機)が増加煩向にあり,縦型洗濯機でも高濃度洗浄システムが導入されています。ドラム式の普及率はまだ10%程度と思われます。
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■ III -3)
洗濯機容量変化は、1991年時点では4〜5kgが主流でしたが、約10年後の2000年には6〜7kgと増加しています。
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■ III -4)
ドラム式洗濯機には (1)高い濃度での洗浄による高い洗浄力が期待でき、前処理の必要性が減ること (2)たたき洗いにより、パルセーター式・アジテーター式より繊維が傷みにくい (3)節水 の利点があります。大きさ,重さ,騒音が改善されてきたことも普及障害を緩和したと考えられます。
■ V -1)
以前は,主要な洗浄成分である界面活性剤の臨界ミセル濃度(CMC)を参考に、水量に対して洗剤量を決めていました。しかし,洗剤の進化・改良を受けて、水量に対して洗剤量を決めることが最適ではなくなり、平成9年の家庭用品品質表示法の改正にともなって,使用量の適量についてわかりやすく表示するようになりました。
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■ V -2)
CMC以上の濃度にした場合.界面活性剤による洗浄力は、それ以上界面活性剤濃度を上げてもほとんど変わらないが,酵素や漂白剤の効果は濃度により増加し,洗剤としての全体的な洗浄力は向上します。
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■ V -3)
洗剤濃度によるトータル洗浄力の模式を示しています。
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■ V -4)
日本の主な合成洗剤の使用量の目安表示例。洗剤使用量の目安を洗濯水量に対してと洗濯物重量に対しての量で示しています。
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■ V -5)
よりよい洗濯環境のための案。
まず、風呂の残り湯を有効活用。可能ならば入浴後できるだけ早く使うのが望ましいです。温度が水道水より高く,洗浄力が高まります。しかも水節約ができます。次に,ひどい汚れには,温水コースを使用する。ただし、エネルギー(電気代・ガス代)は余分にかかります。
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■ V -6)
ひどい汚れには高濃度つけおきが有効です。洗剤をパッケージ表示より多く使うのでなく,水を少なくするのが好ましいでしょう。つけ置きコースの使用でもよい。洗濯物が浸るくらいに湯を入れてスプーン山盛り1杯の洗剤を溶かして数時間〜一晩置いておく方法でも良いでしょう。その後,他の洗濯物と一緒に洗剤量の目安を参考に洗剤を加えて洗擢します。そのほか、洗濯機の洗浄時間を長く設定する、洗濯機の高濃度コースを使うといった方法もある。
汚れがひどい場合でも、繊維を傷つけないように、なるべく擦り洗いは避けます。擦り洗いをすると、繊維が乱れて汚れが付着しやすくなります。また汚れるので、また擦るという悪循環に陥ることになります。