日本石鹸洗剤工業会(JSDA)
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2004年9月15日更新
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*PRTRデータを読み解く−PRTRデータと界面活性剤リスク評価−

A. [特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律]
PRTR法とは −そのしくみと意義−

化学物質アドバイザー
原田房枝

(2004/5/24開催)

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1)諸法令の位置付け
2)PRTR制度とは
3)公開されたデータ
4)PRTRをどう読むか
5)リスクアセスメントとリスクコミュニケーション

 1)諸法令の位置付け
化学物質は私たちの生活を豊かにし、また、便利で快適な毎日の生活を維持するうえで欠かすことのできないものです。意識するしないにかかわらず、日常の生活や事業活動において多くの化学物質を利用し、そしてそれらを大気や水、土壌といった環境中に排出しています。日本では、化学物質はその用途毎もしくは人体への影響の種類によって、適切な管理がなされるように規制されてきました。特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(PRTR法)は、人の健康の維持と環境保全を、化学物質の用途を超えてひとつの法律で包括的にすすめている法律です。

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 2)PRTR制度とは
PRTR法の概要
PRTR法の正式な名称は「化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」です。化学物質が環境へどのような形で、どれぐらいの量が排出されているのかを把握します。排出量と移動量は事業者から国に届けられます。この部分がPRTR(化学物質排出移動量届出)制度です。その排出量とその物質の有害性の両方から、人体と環境への悪影響を推定します。その結果を基に、リスクが懸念される場合は、管理の改善、つまり、暴露量を下げる管理施策をとっていきます。管理の手段は、規制的手段によらす、事業者の自己責任によりすすめることを求めています。つまり、化学物質による環境保全上の支障が生ずることを未然に防止することを目的に制定された法律です。
この一連の活動を支えるのが、リスク評価。リスクとは、望ましくないことが発生する起こりやすさ(確率)をしめしたものです。化学物質の「環境リスク」は、化学物質などによる環境汚染が人の健康や生態系に好ましくない影響を与えるおそれのことをいい、化学物質の有害性の程度と、それにどのくらいさらされているか(暴露量)によって決まります。これを式で表すと、次のようになります。これまで、暴露量を把握することは困難でした。
化学物質の環境リスク=化学物質の有害性×暴露量
PRTR制度により、環境へ放出された化学物質の暴露量を推定する材料(=排出量・移動量)が提供され始めたわけです。


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PRTR制度とは


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PRTR指定化学物質
PRTR法の対象となる化学物質は、有害性と環境中にどれくらいが存在しているかの2点から指定されています。日本石鹸洗剤工業会に関連する物質としては、数種類の界面活性剤が第一種指定化学物質となっています。その指定の根拠は表の青い部分です。


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界面活性剤として使用される対象化学物質
指定化学物質には6種類の界面活性剤が含まれていますが、下の2種類(物質番号308、309)は家庭用品には使用されていません。


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事業者の届出
PRTR制度に従い、事業者は環境へ排出される量(排出先: 大気、公共用水域、埋め立て、地下浸透)と事業所外へ移動する量(移動先: 下水道、廃棄物)を届出ます。PRTR法の対象となった事業所だけが化学物質の排出源ではありません。届出の対象とならない事業者や自動車などの排ガスからも多くの化学物質が排出されていますし、家庭生活からも排出されます。これら対象事業者以外の発生源からの排出については、国が推計を行います。例えば、指定化学物質(界面活性剤)が製品(洗剤など)に配合されて出荷されているような場合が、それに含まれます。


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 3)公開されたデータ
家庭などからの排出(国が推定)
PRTR届出対象事業者以外の発生源からの排出については、物質が使われる用途や発生源に応じたさまざまな推計方法を用いて推計されます。界面活性剤の場合は、次の通りです。


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H13年データの集計結果(排出+移動)
この図は、PRTR制度初年度(平成13年度)における、対象事業所の届出量(排出量+移動量)と非対象事業所からの排出量(国が推計。届出外と示されている部分)を、総計の多い順に示したものです。


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H14年データ(排出量のみ)
この図は、平成14年度の排出量(対象事業所の届出量+非対象事業所からの排出量(国が推計))の合計を多い順に示したものです。化学物質は、事業所だけでなく、家庭や自動者などの移動体からも環境へ排出されています。PRTR制度により化学物質の排出量を明らかにすることができました。しかし、排出量の多い物質ほど人の健康や動植物の生育もしくは生育への影響も大きいと考えがちですが、ある化学物質がどの程度の影響を及ぼすおそれ(リスク)があるかについては、排出量の大小だけでは判断できないことに留意して下さい。


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 4)PRTRデータをどう読むか
PRTRデータをどう読むか
人の健康や環境への影響については①化学物質の有害性の程度②その化学物質が環境中にどのように分布しているか(環境中の濃度)③環境中から人や動植物にどれくらい取り込まれるのか(暴露量)などの情報を総合的に検討する必要があります。例えば、環境中での存在状況に大きく寄与する因子のひとつに、環境中で分解されるかどうかをみる生分解性があります。環境中で容易に分解して消失すれば、環境中での濃度低下と暴露期間の短縮に直接つながりますので、環境への影響も失われると考えることができます。
PRTR法では、有害性データのみに着目して対象物質を指定していますので、こうした因子も取り入れないと、実際にリスクが高いのか低いのかを正しく判定できません。


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 5)リスクアセスメントとリスクコミュニケーション
リスクアセスメントの手順
リスクの判定は、その物質がどの程度の量や濃度であれば有害性を示さないのか(無毒性量・濃度)と推定される暴露量とを比較して行います。推定される暴露量が、無毒性量よりも低ければ、リスクは小さいと考えられます。暴露量については、PRTR制度でj公表された排出量を環境濃度へ推定可能となってきました。また、物質によっては、実際に環境中の濃度を測定するモニタリング調査も国・自治体、そして業界の自主的な活動の一環として実施されています。こうしたデータを使ってリスクアセスメントを実施します。


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リスクコミュニケーション
PRTR法をきっかけとして、市民、企業、行政が、化学物質の排出の現状を理解し、対策の必要性や、進み具合について話し合いながら協力して、化学物質をうまく活用していくことが期待されます。最初の一歩として、環境への排出量だけでなく、リスクアセスメント結果を共通認識していくことが重要です。


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