化学製品PL相談センターの活動報告会で 「消費者相談」を考える
当工業会は化学製品PL相談センターの活動にサポーティングスタッフとして協力しています。同センターは製造物責任法(PL法)の制定に伴い設立された中立的機関で、消費者などからの化学製品に関する質問や、PL法に関連する事故の相談に電話で応じています。2018年度の活動報告会の内容を一部抜粋し紹介します。
↑実施日:2019年6月24日
会場:東京都・住友不動産六甲ビル内 化学団体共用会議室
登坂 正樹 さん 「2018度活動報告」より
一般社団法人日本化学工業協会 内
化学製品PL相談センター 部長
2018年度の全相談件数は233件(前年比110%)でした。そのうち146件は主に消費者からの相談です。相談内容は、化学製品の安全性などに関する一般相談が123件(同137%)、拡大被害を伴う事故に関連した相談が80件(同86%)、品質に関連した相談が26件(同108%)ありました。
ここ10年の全相談件数の推移はほぼ横ばいで、事業者からの相談が減少、消費者からの相談がやや増加しています。
PL法における「欠陥」の定義と2つのポイント
PL法とは、製造物に「欠陥」があり、その欠陥によって人の命や身体、財産への被害が生じた場合に、製造業者等の損害賠償責任があることを定めた法律です。ここでいう「欠陥」の定義は、「当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていること」であって、製造者側の過失の有無は問いません。つまり、製造者に対して事故の責任を問えるかどうかは、「製品の欠陥の有無」と「損害と欠陥の因果関係の証明」の2つがポイントとなります。
2018年度の相談事例に、使い切りタイプの瞬間接着剤を使う時にチューブを強く押したところ破れて、接着剤が眼に入ったというケースがありました。相談者側が販売店を通じて製造メーカーに申し出たところ、製品に問題ないとの見解だったそうです。当センターで調査をしてみると、該当の接着剤は使用前に本体の先端部に穴をあける必要があり、製品には穴あけ機構が備わっているものの、あけ方の説明が説明書の内側で使用前に見つけにくいことがわかりました。こうした取り扱い説明書の問題点は、製品の“指示警告上の欠陥”に該当する可能性があります。
消費者相談はユースケースシナリオを見直すきっかけになる
事業者にとって製品安全は永遠のテーマで、製品を使う消費者の行動をどう予見するかが課題となります。製品開発時に想定していたユーザー層は、時間の経過とともに新しいユーザー層へ変わり、その常識や行動も以前とは違ってきます。消費者相談や事故情報に耳を傾けることが、製品開発時に予見しきれなかった消費者の行動を知り、製品のユースケースシナリオを見直す良いきっかけになるのではないでしょうか。
ゲストスピーカー 大竹 正子 さん 「生活者の声を“よきモノづくり”に活かす」より
花王株式会社
生活者コミュニケーションセンター長
花王は消費者・顧客の立場にたった“よきモノづくり”という考え方を企業風土として受け継いできました。1978年には消費者からの相談内容を社内で共有するための花王エコーシステムを導入し、現在は生活者コミュニケーションセンターが中心となって、生活者のお困りごとに対する情報提供を行なっています。頂いた多様な声は社内へ迅速にフィードバックして製品開発などに活かしています。近年の例では、ジーンズを履いた時に“チラ見え”しない、より下着らしいローライズの軽失禁パンツなども生活者の声をもとにつくりました。
若い世代とのコミュニケーションを活性化する能動的支援
しかし従来の電話相談では10代から30代までの若い世代からのお問い合わせが少なく、今後ますます減っていくと考えられます。そこで、ご相談を待つのではなく、生活のお悩みを自ら見つけて解決をサポートしようと、2015年から「Yahoo!知恵袋」での公式アカウントによる対応を始めました。自社製品と関係がなくても、社会や生活に役立つ情報は積極的に提供しています。1つの回答が長期間閲覧され、閲覧数から関心度などをはかることもできますし、SNS上でも情報が拡散され、より多くの方へと伝わっています。
このように相談者や相談経路の変化を捉えて対応することは消費者相談において重要であり、いつでもどこでも生活者のよきパートナーとなるためにかかせないことだと思います。
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