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2018年9月15日更新
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参照カテゴリ> #03.CLEAN AGE 255号 

*化学製品PL相談センター

 

化学製品PL相談センター 活動報告会で
「情報の取り扱い方」を考える


 化学製品PL相談センターは、製造物責任法(PL法)制定の翌年(1995年)に設立された機関で、中立の立場から、PL法関連の事故や化学製品全般に関する消費者の相談に応じています。
 当工業会はサポーティングスタッフとして同センターの活動に協力しています。6月29日に東京で実施された2017年度の活動報告会の内容を一部抜粋し、紹介します。

会場:東京都・住友不動産六甲ビル内 化学団体共用会議室
↑会場:東京都・住友不動産六甲ビル内 化学団体共用会議室

photo 登坂 正樹 さん 
「2017年度活動報告」より

一般社団法人日本化学工業協会 内
化学製品PL相談センター 部長


 

化学製品に関連する事故の相談内容とは


 2017年度の相談件数は計212件(前年比92%)あり、化学製品による事故に関連した相談は93件(同124%)、品質に関連した相談は24件(同96%)、安全性などに関する一般相談は90件(同74%)でした。そのなかから、事故に関連した相談事例を3つ紹介します。

  1. レトルトご飯を電子レンジで焦がし煙が出て喉に違和感
  2. 油凝固剤をエンジンオイルの処理に使用してボヤ発生
  3. 家屋のベランダのFRP防水加工でシックハウスを発症

 1の事故は、製品の加熱時間(電子レンジ2分・湯煎15分)の表示を消費者が見間違えたことで起きました。メーカーには表示をよりわかりやすく改善することが求められますが、そもそも「電子レンジで発火する」という一般認識が不足していることをふまえて表示を工夫する必要があったと考えられます。
 2の事故原因は、消費者が食用油用の凝固剤を用途外で使用したことです。表示を見ると食用油用であることは明白なため、ボヤ以上の拡大被害が起きていたとしてもメーカーの製造責任は問えません。消費者は、表示を拡大解釈しないように注意し、不明点はメーカーに問い合わせることが大切です。
 3は、FRP防水の硬化不良が原因とみられ、施工業者ではなく入居者が被害を受けたケースです。事故を未然に防ぐには、FRP防水のメーカーや施工業者が、製品の影響を受ける人の範囲と多様性を理解し、事前・使用中・事後・苦情受付の各段階で周囲との良好なコミュニケーションを築くことが重要です。

 

問題点が多いウェブ上の情報に注意


 一般相談では、ウェブ情報に関連した問い合わせが目立ちました。ウェブ上では、検討が進み、安全性上問題ないことが証明された化学物質の過去の有害性情報が、その部分だけ引用されたり、営利目的で「危険」情報が発信されたりする傾向があります。最新かつ正しい情報の把握が大切です。




photo ゲストスピーカー 大矢 勝 さん 
「消費者に求められる情報リテラシー」より

横浜国立大学 大学院環境情報研究院 教授
専門分野:洗浄と洗剤の科学、環境と安全の消費者情報


 

洗剤論争の経験から、消費者情報の問題点を考える


 日本では、1960年頃から合成洗剤に対する厳しい世論が形成され、安全性や環境面を論点とした合成洗剤追放運動が2000年頃まで展開されました。  この消費者運動は、洗剤の環境問題(1960年代の河川における発泡問題や、1970年代のリンによる富栄養化問題)をいち早く解決する推進力となり、結果的に日本の洗剤開発の技術は欧米をリードするほどの発展をとげました。
 一方で、安全性については誤った情報をもとにした消費者運動が展開され、1980年代には専門家の間で「洗剤の安全性論争は解決した」と考えられていたにもかかわらず、その後も非科学的な誤情報(肝臓障害を引き起こす、催奇形性がある、経皮毒という概念など)が広がり続け、悪質商法に利用されるという問題点が残りました。
 前出の環境問題では消費者運動が実を結んだように、消費者の活力は社会のために活かすことができます。ただし過去の問題点をふまえると、新たな消費者向けの情報教育というものが必須であり、専門家やメーカーは消費者の環境・安全に関する生涯学習を「社会活動」と捉えて援助していく必要があります。
 消費者運動の目標は「価格→安全→地球」へと変化してきており、今後はさらに複雑化する地球環境問題への対応が必要です。図Aのような環境関連科目のうち、日本ではとくに②に関心が高い人が多く、このタイプは「危険」「有害」などのネガティブな情報に影響されやすい傾向があります。生涯学習においては、不良情報を冷静に理解する力や、「100%安全なものなど存在しない」といった論理的思考法を身につけることも課題となるでしょう。

photo

 これからの消費者に求められるのは、科学的な事実と証拠、そして相手方の意見も尊重しながら「自分に合う製品を自分で考えて選ぼう」とする態度です。情報を見聞きしたときに「誰々が言ったから」という基準で判断することは避けるべきです。そのためには、情報を発信する側と受け取る側が従来のような「支配−被支配型」の人間関係から脱却し、「相互型(自由形)」のコミュニケーションを行なっていくことも求められています。

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