日本石鹸洗剤工業会(JSDA)
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2001年7月1日更新
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参照カテゴリ> #01.活動 #03.洗濯 #03.CLEAN AGE 186号 

*全自動洗濯機と洗濯行動の変化

---JSDA 洗たく科学専門委員会の調査結果から

日本石鹸洗剤工業会の洗たく科学専門委員会(委員長花王株式会社 鈴木 哲)では、最近の全自動洗濯機と洗濯行動の変化についての調査結果を発表しています。その内容は昨年度日本油化学会でのシンポジウムでも報告されましたが、ここではこの調査の背景と若干のポイントをお伝えします。

調査の概要
●調査期間:2000年5月
●調査方法:訪問留置き法
●調査内容:アンケート調査 日記式調査(一週間の間、洗濯1回ごとに毎回洗濯記録表にその内容を記録してもらった)
●調査対象者:全自動洗濯機を過去5年以内に購入した世帯
 アンケート調査200人 日記式調査100人

洗濯は生活を清潔に、快適に維持していくうえで欠かせない大切な家事のひとつであり、日本の家庭ではほぼ毎日洗濯が行なわれています。
その家庭洗濯を取り巻く環境はどんどん変化しており、なかでも洗濯機は、全自動洗濯機の普及、洗濯機の大容量化・低浴比化の進行、新技術の導入などのめざましい変化が起こっています。一方では、洗剤も「超コンパクト化」や「形態の多様化」などの進化を遂げてきています。このような変化は、洗濯行動にも何らかの影響をもたらしているものと思われますが……。

●最近の洗濯機は大きくなって高機能に…
●洗濯機の変化は洗濯行動にどう影響したか
●洗浄条件、浴比と洗剤使用量
●洗剤使用量の適正化の考え方と課題

●最近の洗濯機は大きくなって高機能に…

一度にたくさん洗いたい・毛布など大きいものも洗いたいという要望に応え、洗濯機の大容量化が進んでいます。機械設計の改善やモーターの小型化などによって、同じスペースで洗濯容量が大きくなっているのが特徴です。こうした洗濯機の出荷状況を反映し、今回の調査対象者の所有洗濯機でも、6kg以上の大容量洗濯機の所持率が60%を越えています。1991年の当工業会の調査と比較すると平均の大きさが4.2kgから6.0kgとなり、この間に大容量化が進展している様子がうかがえます。
しかし、大容量とはいっても、洗濯機が表示する容量がそのまま洗濯できるわけではありません。実際には、表示されている容量の8割程度が洗濯するのに適当な量であることを忘れてはなりません。
また、最近の洗濯機には、さまざまなアイディアが盛り込まれています。洗える衣料の範囲を拡大させる大物洗いコースやドライマークコースの搭載、節水のための内蔵バスポンプ、使いやすさ簡便化のための洗剤目安表示、洗剤や柔軟剤の自動投入、水量の自動設定など多彩な機能が多くの機種に搭載されるようになりました。


●洗濯機の変化は洗濯行動にどう影響したか

大容量洗濯機の利用によって、数日分の洗濯物を一度に洗う「まとめ洗い」も可能となりますが、所有洗濯機の大きさと洗濯頻度の関係を調べた結果では、洗濯日数の低下傾向はみられません。洗濯行動を克明に記録していただく日記式調査の結果からは、5kg以上の大容量洗濯機を所持していても、洗濯物を溜めることを好まず、ほぼ毎日洗濯を実行していることがわかります。つまり、せっかくの大容量洗濯機も、まとめ洗いの習慣を招くというところまではいっていないのです。これは、洗濯物を溜めることに対する抵抗感が根強いことや、まとめて洗うとかえって干す場所に困るといったことの影響が考えられます。分け洗いの実施状況も1991年と比較してみると、若干減ってはいるものの、大きな変化はみられず、一日につき平均1.8回の洗濯が行なわれ、大容量洗濯機を使用する場合でも、衣料の色や汚れ具合などによって分けて洗濯が行なわれているのです。部分洗いの実施状況にも大きな変化はありません。
また、洗濯機のバスポンプ内蔵率の増加を反映して、風呂の残り湯の活用率は、1991年:25%、2000年:48%と高くなっています。
一週間あたりの洗濯物の量を1991年と比較してみると、家族数がほぼ同じで、かつ一週間の洗濯回数は僅かに減少しているにも関わらず、洗濯物量は約1.3倍に増加していることがわかりました。洗濯機の大容量化は洗濯回数には大きな影響を与えていないものの、洗濯物の量自体を増加させ、まだそれほど汚れていなくても容量に余裕があるから一緒に洗ってしまう「ついで洗い」が行なわれていると考えられます。大容量洗濯機の普及拡大とともに、「着たら洗う」「使ったら洗う」といった洗濯習慣がさらに加速されている様子もうかがえるということができそうです。
家庭で洗濯される衣料も毛布などの大物やセーターなどのいわゆるデリケート衣料の家庭洗濯の比率が、1991年に比べて高くなっており、洗濯機の大容量化や高機能化との関連がここにもあらわれています(図1)。できるだけ家庭で洗濯したいというニーズに、洗濯機の機能が応えた結果ともいえるでしょう。


●洗浄条件、浴比と洗剤使用量

もう一つ、注意しなければならないのが、洗濯機の大容量化が招いている浴比低下の問題です。
1キロの洗い物を洗うときの水量を「浴比」といいますが、洗濯物を詰め込みすぎ、浴比が低くなりすぎると汚れ落ちが低下し、洗いムラが大きくなる、という傾向があります。浴比の基準として一般的にいわれているのは「浴比が1:10を切ると洗浄力がかなり落ちる」ということです。
近年、全自動洗濯機では低浴比化が進んでいて、今回の調査対象洗濯機の浴比も最大洗濯容量において平均で1:8.9(1キロの洗い物を洗うのに8.9リットルの水を使う)とかなり低い設計値となっていることが確認できました。
日記式調査の結果では、大容量の洗濯機を使用していても実際は最大洗濯容量の約50%の重量で洗濯することが多く、水位も中水位・低水位で洗濯をする人の率が高くなっています。さらに浴比は平均1:16.8程度で洗濯されていたという結果が出ました。これと、1991年の平均浴比(1:19.8)と比較すると、実使用場面でも低浴比化が着実に進行していることがわかります。
洗濯機の最大洗濯容量・購入年と実際の浴比との関係をみると、購入年の新しい機種のユーザーほど低浴比で洗濯を行なっているという傾向が強いようです。近年の最新洗濯機では、水位の自動設定を段階的にではなく、きめ細かにできるようになったためとも考えられます。自動設定される水位に不満なときは、自分で水位を変化させ水量を調整しているようです。
洗剤の容器には家庭用品品質表示法に基づいて、使用量の目安が記載されています。1997年の法改正以来、適正使用量の表示は自由な表記が可能となったので、洗剤メーカー各社はそれぞれわかりやすい表現の工夫を行なっていますが、洗剤の使用量の考え方は、従来「水に対して洗剤何グラム」というのが基本でした。ところが、洗濯機のほうは水を少なくする傾向が強く、ここにも洗浄効果の面からは洗い物の量を加味して洗剤の量を考える必要が生じています。
洗濯機の方にも、スプーンの絵や杯数で、洗剤の使用量の目安を表示するパネルを備えたものが多くなりました。今回の調査対象となった機種では、その83%にパネル表示機能が搭載されていました。そして、ユーザーは洗剤の使用量表示よりも、むしろ洗濯機のパネル表示のほうを参考にして、水量を基準にして洗剤使用量を決定しているケースが多いこともわかります(図2)。


●洗剤使用量の適正化の考え方と課題

しかし、賢いユーザーは、洗濯機の表示を参考にはするものの、実際の洗濯では洗剤の表示や洗い物の汚れ具合などによって判断しています。最終的には64%の人が自分の判断で、汚れ具合や洗濯物の量・水位などに合わせ使用量を変化させていることもわかりました。
日記式調査の結果から、実際に使用される洗剤量は水量あたりの標準使用量で1.24倍となっており、1991年の調査結果1.01倍より多く使用されていましたが、洗濯物あたりでは、1.04倍であまり変化はみられませんでした(図3)。

これは、実際に表示通りに設定すると汚れ落ちが悪いなどの体験から、ユーザーが洗い物の量で洗剤の量を調節する、汚れを落とすためには洗濯機のパネル表示どおりでは足りない洗剤を補う、ということが現実に行なわれているためとみられます。洗濯機の低浴比化は洗剤濃度にも影饗を及ぼしていたことがわかります。
また、表示通りに洗剤を入れていると回答している人の場合には、判断の基準が洗濯機パネルと洗剤裏の表示いずれの場合もほぼ標準使用濃度で使用されていましたが、自身の判断を加味して量の増減を図る場合には、多めに変化させる人が多いようです。洗濯機パネル表示を参考にする人の方が、やや高濃度に調製されるという傾向もみられます。
従来、洗剤の使用量は水量あたり一定となるように設定(標準使用量)されていました。洗剤の主成分である界面活性剤の洗浄効果を、最も効率的に発揮する濃度領域を基準に、洗濯物に界面活性剤が吸着し、洗液中の界面活性剤濃度が低下する分と、汚れが洗液中に溶出した分の負荷を考慮したものです。しかし、低浴比化が進行してくると、洗濯物への界面活性剤の吸着量や、汚れの負荷の増大は、従来の洗剤使用量の設計に対して無視できない影響を与えます。欧州のドラム型洗濯機は、極端に低浴比(1:5)ですが、洗剤の使用量の考え方は水量で設定せず、洗濯物の量で設定するようになっており、界面活性剤量はかなり高めに設定されています。また、洗剤には、汚れの負荷が多い時には洗剤を増量し、汚れの再付着を防止するように、と表示されています。
洗濯機の低浴比化・高機能化が進行し、かつ洗剤の標準使用濃度や容器の大きさ・洗剤使用量の表示方法・洗剤の形態等が多様化を迎え、洗剤の適正使用についてはさらに研究し注意を払う必要があります。


●洗濯機関連情報
1)「洗剤ゼロコース付洗濯機」の試験結果
2)全自動洗濯機の比較テスト結果(国民生活センター,2001年)
3)全自動洗濯機と洗濯行動の変化(日本石鹸洗剤工業会,2000年)



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