工業用硬化油・脂肪酸・グリセリンのJIS規格改正に努力
油脂製品技術専門委員会の活動
油脂製品技術専門委員会 委員長 角井 寿雄
2009年CLEAN AGE218号に掲載

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日本石鹸洗剤工業会の油脂製品技術専門委員会では、これまで約2年にわたり、JISの改正原案づくりの作業に取り組んできました。その努力が実って、このたび正式に改正が行なわれ、日本規格協会から、JIS K3331「工業用硬化油・脂肪酸」、JIS K3351「工業用グリセリン」の2点が発行されました。 |
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20年ぶりのJIS改正に踏み出す |
日本工業規格いわゆるJIS規格は、工業標準化法によって日本工業標準調査会の答申により国が制定するもので、日本薬局方、日本農林規格とならぶ国家標準のひとつです。これで、何を決めているかといえば、工業品の種類によって、その定義や型式、成分、性能、試験法、分析の方法などさまざまな標準を制定しているのです。
これは、言葉で言っても確かなことはわからないので、「これがそうだ」と日本国が保証した規格といえます。
われわれのような業界団体もその利害関係人として、その原案を提案できることになっていますが、実はここ20数年にわたって、硬化油・脂肪酸・グリセリンの規格の内容は、改正されておりませんでした。
というのも、これらについては別に“日本油化学会の基準油脂”という業界標準があり、実際にはそれによることが多かったのです。JIS規格はこの間に改正された国際的な単位統一も図られず古いままで、規格はあるけれども使用されていない、という状態でした。
だいたい、JISが上位基準にあるべきなのにそれが使われる状況にないということは、これでは国際的にも問題があるだろうといった委員の方々の前向きな意見を受けて、この専門委員会で改正原案の作成に着手することが決まったのが、2年ほど前のことでした。 |
一から始める改正原案づくりは大変で… |
さあ、それからが大変でして、各社委員のご苦労は、並みたいていではありませんでした。なにしろ、現実に売っているものと一致していない、現実に合わないJISを改正し、分析機器の進歩に合わせた各社の簡単な試験法と、整合性をもたせなければならないので、一からデータを取り直すところから始めるわけです。
まず、各社の委員の方々が社内調整をしてデータを取っていただく。次に、各社がデータを持ち寄って分析・整理する。この作業の内容が、細かくて膨大で、とても委員だけでは手が回らない。そこで、それぞれ委員会社からまた応援担当者についてもらって、計16名のメンバーで負荷のかかる作業をなんとかこなしてきた、というわけです。
なかには互いに会社間で表現方法が違う、やり方などが食い違うこともあり、ときには顔が引きつるような場面もありました。しかし、なんとか各社が採用できる、使えるJISにしようと、懸命な調整をする、そのために“人間界面活性剤”の存在も必要でした(笑)。 |
委員のみなさんの尽力に感謝 |
みなさん方も同じと思いますが、本来業務のほかに、社内的には評価されることの少ない仕事をかかえてしまうことがあると思います。みなさん、技術者として、「世の中に役に立つJISをつくる」という使命感がなければ、とてもできないことでした。委員長としては、そうしたメンバーのご尽力に感謝するのみです。
こうしてできた原案は、工業標準調査会に付議され、そこでまた専門家の意見でもまれたうえで、正式にJIS規格として本年3月23日に官報に公示されました。
その原案作成の過程では、製造者側だけでなく、使用者側と中立側の委員の意見も聞く必要がある。改正原案作成委員会では、委員長をお引き受けいただいた当時、神奈川大学の田嶋和夫先生には、随分お世話になりました。
それからまた、文書の形式を整えるのからして一苦労も二苦労もありまして、点の付け方に至るまでJISの委員の先生方の納得が得られるようにしなければならない。
実は、硬化油・脂肪酸・グリセリンの裾野が、結構広いうえに、これらのJISは実状に合ったものにするまで空白期間が長かったので、われわれの業界以外の方々から必要とされ、待たれていたのかも知れませんね。日本規格協会のJIS規格票の販売成績も、なかなか良いと聞きました。
実質的には約20年ぶりに改正されたJIS規格が、今後ISOと並んで活用され、関連業界のお役に立てていただければ、みんなの苦労も吹っ飛びましょう。
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